Tutorial Ⅰ
2027年12月21日
辺りには血の匂い、何かが焼ける匂い…そして散らばった建物の残骸や、瓦礫のせいで走り辛い足場。
何時間走ったか、もう分からない。
時間の感覚すら殆ど無くなってしまっている。
とっくに体は限界を迎え、早く止まりたいと悲鳴を上げている。
それでも、止まる訳にはいかない、生きるために、死なない為に。
「――っ…! っは…はぁ……はっ…」
瓦礫に足を引っかけ、転びそうになる。
なんとか転ぶのを堪えたが、足を止めてしまう。
状況を確認するために、辺りを見渡す。
周りには、到底この世の生物とは思えない生物、ゾンビのような生物
簡潔に言ってしまえば、化け物共が徘徊している。
中にはこちらに向かってきている奴もいれば、他の人を襲っている奴もいる。
聞こえてくるのは「助けてくれ…!」や「死にたくない…」や
悲鳴のような叫び声が聞こえて来る。
助けてやりたいとは思う、けど、そんな余裕はなかった。
心の中で謝りながら、俺はまた走り出す。
……………………
………………
…………
……
数時間前
『Growing Survivors』大体3年ほど前から始まったオンラインゲーマーの中ではかなり流行っているゲームだ。
プレイヤーの間では頭文字を取り『GS』や、読み方から『グロサバ』と略す人もいる。
このゲームをやったことが無い人でも、SNSなどで名前を見たことがあると言う人が多いだろう。
今日、このゲームの最新情報がオフラインイベント限定で発表される。一プレイヤーとしては、やはり行かねばならないと思い、俺は会場へと向かっていた。
会場へ移動している途中、俺は電車の中でGSのフレンドとチャットができるアプリ『Survivors Link』で、始めたばかりの頃からのフレンド、ロックと話していた。
Rock:GSのオフ限定のイベントとか何があるんだろうなー
You:さぁ、噂ではVR化だとかどうとからしいけど
Rock:ふーん、まぁいいや、で、今どの辺よ?俺もう到着したぞー
You:もうちょい、なんか食べ物要るなら買ってくけど
Rock:遠慮なく。それより早く来てくれ!流石に1人は寂しい!
You:了解、なるべく早く行く
駅員のアナウンスと共に、スマホをスリープモードに変え、ポケットにしまう。電車から降り、人波に流されるように移動する。流石GS…人が一杯だな。なんて思ってみるが、多分、全員が全員会場に行くわけじゃ無いだろう。
……そのまま、数分間人波から抜け出せず、待ち合わせの場所に行くのに時間がかかったのは、きっと誰にも言えないだろう。
「…はぁ……疲れた、ロックは……」
なんとか待ち合わせの場所近くに辿り着き、ロックを探す。待ち合わせの場所には、身長が高く、さわやか系な男性が立っている。俺はその人を見つけると、近づきながら、片手を上げ声をかける。
「よう、ロック。相変わらず目立つな」
「おうユウ、そっちは相変わらず目立たない恰好してんなー」
ロックとは、現実でもゲーム内の名前で呼び合う。理由は何個かあるけど、一番は慣れないからというのが大きいだろう。
ロックが俺の肩を叩きながら、笑いながら話しかけて来る。
「つーかユウ!なんで遅かったんだよー!寂しかったぞー」
「痛いって、悪い、色々あったんだよ」
「む、ならしゃーないか、まぁ会場行くかー!」
「おう、行くかー」
少し合流が遅れたが、俺達は会場へと向かい歩き出す。