超ショートショート「秋の序曲」No74
嵐が過ぎてから随分経って、強い日差しが森の中の私の家にも降り注ぐ。今年も光を降らせる神様が随分頑張ってるみいだ。
「いい加減にして欲しいなぁ…」
私は冬の間に作った最後のアイスを噛み締めながら、その神様に文句を言う。
それから私は蒸し暑い家から出て、蒸し暑い森を抜けて、蒸し暑い草原までやってくる。
「そろそろかな…!」
私はマントの中から木の棒を取り出すと、フッとひとふりする。
すると少しずつ、草原はザワザワと音を立て始め、空は真っ青から色を無くしていく。
陽の光が少し優しげになり、代わりに風がちょっと冷たくなる。
私のつばの大きな帽子に強気な風が吹いてきて、少し飛ばされそうになるけど、なんとか抑える。
「こんなもんかな。」
私は木の棒を仕舞い、辺りを見渡す。
空は青白く、風の冷たい、そして食べ物のおいしい季節。
秋の始まりだ。