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志望業種は――魔法少女で!  作者: 竹内緋色
第二傷 魔弾の射手
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第5歌 thank you, birthday

 第5歌 thank you, birthday



「あの。ちょっといいかしら」

「へ?」

 突然声をかけられた後、私は急に腕を引っ張られる。

 これって知ってます。宇宙人に腕を引っ張られるやつですよね。

「って、ゆずちゃん!?」

 コロネちゃんのおともだちのゆずちゃんが私の腕を引っ張った犯人でした。

「しー!」

 ゆずちゃんは辺りをきょろきょろと見渡します。

「あの天才はなんだかんだでチートなんだから、気をつけないと」

「なにがですか?」

「だから、静かに!」

 ゆずちゃんは私よりも大きな声で言いました。それでは意味がないとは思いましたが。

「コロネちゃんがどうしたの?」

「わたし、まだなにも言ってないんだけど」

 言葉の端から、コロネちゃんについて何かあるのは分かりました。

「なんだかわたしのともだちがコロネだけだと思ってない?」

「違うんですか」

「……否定できない自分が悔しいわ」

「ところで、何かあるんですか?」

 私はおつかいというか、買い出しの途中だったので、用がなければお暇したかったのです。

「その、ね。なんというか……」

 ぐいっ、と服の袖をつままれます。そっと逃げようとしているのがバレたのでした。

「なんで逃げるのよ」

「いやあ、本能的でしょうか」

「もしかして、わたしもコロネと同じくらいのトラブルメイカーだと思われてる!?あんまりコロネと一緒にしないで」

「惚気話は聞きたくありませんので」

 やっぱり、逃げるのを阻まれました。

「誰が惚気よ!」

「だって、頬を赤らめながら言うものですから。別に男と女の差なんて些細なものですし」

 するとゆずちゃんは殺気だった目で辺りを念入りに見渡します。

「どうしたんですか?」

「いえ。絶対に現れてはいけない生物が来そうな気がして。でも、本編なんだから出てこないわよね」

 どうも一人で納得して安心しているようでした。

「ところで、三時からアクション仮面の再放送がありますので」

「マジックに腕時計描いただけでしょ!?それと、今は三時でもない!」

「流石名刀とも言われたゆずちゃんのツッコミです」

「あんた、意外と性悪なのね。こんなキャラだとは思わなかった」

「惚れ返しましたか?」

「いや、元から惚れてないし。それと、わざと論点をずらそうとしてない?」

 ちっ。バレたか。

「なによ、その黒い顔」

「いえいえ。それより何か用ですか?」

 私はさっさと用事を済ませた方がいいと思ってゆずちゃんに尋ねました。

「その、ね。最近のコロネはどうなのかなって」

「最近のコロネちゃん……」

 確かに、ちょっと前とは違い、あまりトラブルを起こさなくなったような気もしますが、トラブルメイカー第二位の黒髪担当の前例があるので、なんとも言えません。

「別に変ったところはないような……」

「そう」

「なにかおかしなところとかありましたか?何かを起こしそうな気がする、とか」

「まあ、そう言うんじゃないけど、ちょっと元気が無いように思えたから。まあ、でも、一緒に暮らしてるフキちゃんたちがなんとも思わないのなら大丈夫よね。ところでなんだけどさ……」

 ゆずちゃんは一層声を潜めて言います。

 どうもこれが本題のような気がしました。

「コロネの誕生日、何か考えた」

「えっ。誕生日?」

「まさか、明日がコロネの誕生日ってことを知らないの?」

「はい」

 それどころではない色々なことが起こっていたのでという言い訳はしますが。

「つまり、ゆずちゃんはコロネちゃんのお誕生日会をしたいわけですか」

「なんなの?千里眼?読心術?月詠?」

「いや……なんだかんだでツンデレには慣れているもので」

 ふと、あの赤髪の女の子のことを思い出してしまいました。

「えっと、大丈夫?」

「はい。どうしてですか?」

「いや、ちょっとコロネそっくりな顔をしてたから」

 やっぱり、コロネちゃんでも辛いことはあるのでしょう。あのことを引きずらないひとはいません。

「で、何かサプライズとかですか?もしくは、プレゼントとか」

「そ、そうよ!そうなんですよ!念のためにプレゼンとが被ったりとかしたら嫌だな、とか、みんなと一緒にお祝い出来たらな、とか思ってたのよ!」

 ちょっと可愛く思えるほどのツンデレぶりでした。

「なら、急がないといけませんね」


「で。なんでミワが呼び出されなくちゃいけないの?」

「まあまあ」

 コンパクトの電話機能でミワちゃんを呼び出しました。

「突然の電話機能追加ね」

「ちなみに、缶切りとか、栓抜きとかもできますよ」

「どこをどうしたら!?というか、魔法少女に必要な機能!?」

「確かに一部のおっさん女子しか使わないけど……」

 ミワちゃんの語尾がしぼみ気味だったので、きっと思い出したのでしょう。私たちにとってのおっさんキャラを。

「とにかく、計画とかあるの?フキは魔法少女の仕事でお金持ちだからなんでもできると思うけど」

「そんなに貰ってないです」

「貰えるだけマシだと思いなさいよ!」

「その気持ち分かるな」

 ミワちゃんとゆずちゃんは同情しあっていました。声優さんのお給料は結構低いというのは本当なようです。小学生ですのでイベントなどにも出れないとなるとより大変なのでしょう。

「ヒモのミワちゃんには何か案があるの?」

「最近毒舌に磨きがかかったわね、フキ。でも、ミワもそんなに思いつかないわよ?例えば、帰ってきたらクラッカー鳴らして、みたいなベタなやつとか?」

「そうね。あまり奇をてらい過ぎると時間がかかるし、コロネが調子に乗るし。それにそれをするなら会場はミワちゃんの家の方がいいのかな。わたしからコロネを誘うとちょっと違和感があるし」

「ゆずちゃん!あれは私の家です!夢のマイホームだったんです!」

 そう言えば、お母さんとお父さんはどこに行ってしまったのでしょう。

「まあ、多少はいいかとは思うけど、色々と問題ね。特に、コロネがいない時を見計らってなんとかしないといけないし」

「そうですね。コロネちゃんがお仕事の時はゆずちゃんもお仕事ですもんね。私たちだけで夜にごそごそするとバレちゃいそうだし」

「なんとかしてコロネをちょっとだけ家から遠ざけられるかもしれない」

「そうなの?」

 私はゆずちゃんを見ます。

「まあ、あの子の努力次第だけど」

「料理とかはどうする?時間制限があると大したものは作れないけど」

「買ってきたケーキで間に合わせるしかないんじゃないかな?ケーキを焼くには時間かかるでしょ?」

「そうね。ミワなら作れるけど、フキ程度の腕じゃあ」

「なんですか。作れませんけど」

「ミワはおにいちゃんのおよめさんになるために日夜花嫁修業に務めてるんだから。格が違うの。品も違うの」

「でも、兄妹じゃないですか」

「こら。痴話げんかしない」

 別に痴話げんかじゃないというか、もっとどろどろしたものなんじゃないかとは思ったりもしますが。

「恐らく飾りつけで時間は終わると思う。とりあえず、これから色々と道具を買い出しに行って、にしない?あと、当日のケーキはゆずに頼んでいいかしら」

「ええ。割り勘でね」

「フキ様。おねがい」

「女の子同士でぶりっこは逆効果ですよ」

 でも、仕方がありません。

「それと、誕生日プレゼントはどうしましょう」

「コロネが何を喜ぶか、ね」

「アンタなら知ってそうなものだけど?」

「う~ん……」

 確かに、私たちもすぐには思い浮かびません。

「お風呂セットとか?洗剤詰め合わせ?」

「いや、引っ越しのプレゼントじゃないから」

 ちょっと貧乏くさいと思ったことは内緒にしておきます。

「じゃあ、仕方ありませんね。コロネちゃんの跡をつけてみましょう!」


「コロネちゃんは今、家にいるようですね。ミワちゃん。よろしくお願いします」

「なんでミワが」

「ミワちゃん、そういうの得意でしょう?」

「なに?人をストーカーみたいに」

「いやいやいや」

 私とゆずちゃんは声を揃えて言いました。

「まあいいわ。誕生日プレゼントとしておきましょうか」

 ミワちゃんは魔法少女に変身しました。

「でも、フキちゃんが変身すればいいんじゃ」

「私にそういう趣味ないですし。それに――」

 ほんの少し、私は魔法を使うのが怖くなっていました。魔法を使う度、大切なものがなくなってきている気がして。

「魔法にも得手不得手があるもので」

「そうなんだ」

 ミワちゃんはバトンで円を描いて、鏡を作り出します。そこにはコロネちゃんの姿が映っていました。

 コロネちゃんは自分の部屋で台本を読んでいるようでした。

「声もつけられるけど?」

「いい」

 ミワちゃんの言葉にゆずちゃんははっきりとそう言いました。

「わたしがバカだったってことがよく分かったから」

「これじゃあコロネが何を好きなのかは分からないわね。台本でも送る?」

「劇をする……とかはすぐには無理ですよね」

 私たちは頭をひねって考えます。

「もう、何でもいいんじゃない?」

「そんな言い方はないですよ!」

 私はミワちゃんに食ってかかります。

「いや、言い方が悪かっただけで、多分、コロネならゆずちゃんが何を送っても喜ぶんじゃないかしら」

「そんな気もしますけど」

「そうよね。そういうのは気持ちが大切って言うから。ありがとう。今日は。わたしとコロネのために」

 ゆずちゃんはぎこちない笑顔で去っていきました。


 そして、当日。コロネちゃんは誰かに呼び出されたようで、その隙を見計らって私たちは準備を始めます。

「ケーキを買ってきたけど……」

「いや、あの、その、これは……」

「別におかしなことじゃないというか、色々あったというか……」

 ゆずちゃんは目の当たりにしたのでした。

 何故だか下着だけ身に纏った半裸の小学生が、一人は床に仰向けで倒れ、もう一人はその一人に覆いかぶさっている様を。そして、二人の体中には白い液体が降りかかっています。

「……」

 ゆずちゃんは白い目をしながらケーキを冷蔵庫の中に入れました。

 そして、一言。

「早くお風呂に行ってきなさい!」

 そう怒鳴りました。


 お風呂から上がってきた私たちはゆずちゃんにお説教を受けていました。

「なにがどうなっているのか説明してくれない?」

「いや、それが私たちにもどうなっているのか……」

 飾りつけを作っていた時、私とミワちゃんは方向性の違いから揉めていました。

 言い合いはそれほど珍しいことではなかったのですが、ふと足が滑って私はチューブノリを踏みつけてしまったのです。それが運悪くミワちゃんに降りかかりました。

「フキ……」

「いや、これは、その……」

 事前に揉めていたということもあってミワちゃんのフラストレーションはたまっていたのでしょう。報復とばかりに私に白い液体ノリをふりかけました。

 そこからはもう、乱戦で、互いにノリをぶっかけあい、ベタベタしてきたので服を脱ぎ、それでもまだ白い液体をぶっかけ合っていたのでした。

「いや、色々とお子様には見せられない状況だったんだけど」

「ごめんなさい」

 私とミワちゃんは大人しく謝ります。

「さあ、しょげてないで、早く完成させましょう?二人がお風呂に行っている間に部屋は綺麗にしておいたから。早くしないとコロネが戻ってくるからね」

 私たち三人は仲良く協力し合って、なんとか飾りつけを完成させました。

 そして、コロネちゃんが帰ってくるのをクラッカー片手に待ちます。

「帰ったぞ。はあ、一体何だったんだろう」

 そう言ってリビングに入って来たコロネちゃんにクラッカーを鳴らします。

「お誕生日おめでとう!」

 心からのお祝いを述べました。

「お、おお!?おおおおお!!」

 コロネちゃんは嬉しさに空いた口が塞がらないといった様子でした。

「あ、ありがとう。みんな!」

 コロネちゃんは本当に嬉しそうな顔をしました。

 席についてケーキを食べようとした時、コロネちゃんは私たちの作ったボードに向かっていきました。そこには『コロネちゃんお誕生日おめでとう』という字が書かれています。

 コロネちゃんはポケットからポケットのサイズに似合わない紙を取り出して、『コロネちゃん』と書かれている上の方にそれを張りつけました。

 そして、コロネちゃんもクラッカーを鳴らします。

「ゆず。お誕生日おめでとう!」

「え?」

 私とミワちゃんは互いの顔を見つめ合います。

「まさか、忘れていたんじゃないだろうな」

「あ」

 ゆずちゃんはどうも本当に忘れていたようでした。

「全く、ゆずはバカだなぁ」

 コロネちゃんは嬉しそうに言います。

「ほら」

 コロネちゃんはケーキにもう一個チョコレートを載せました。そこには『ゆずお誕生日おめでとう』と書かれています。

「まさか、コロネちゃん、全部知ってたの?」

「初歩的な推理なのダーウィン」

 やはり、コロネちゃんには敵いません。

「さあ、ワタシからゆずにプレゼントだ」

 コロネちゃんはゆずちゃんにプレゼントを渡しました。

「ごめん、ゆずちゃん。私たち、コロネちゃんの分しか」

「いいえ。構わないけど」

「なら、どっちかをゆずが貰えばいい。それでも構わないか?」

「うん!」

 私はゆずちゃんに、ミワちゃんはコロネちゃんにそれぞれプレゼントを渡します。

「おお!?二人ともパジャマ、か。って、被ってどうするんだ?」

 私とミワちゃんは同じものを選んでいたようでした。

「ゆずちゃんにサイズ合うかな?」

「ちょっと胸がきついかも」

「おい、ゆず。それはワタシに対する嫌がらせか?抜け目のない奴め!」

 私たちは笑い合いました。

「二人は何を送りあったの?」

 二人はそれぞれのプレゼントを開けます。

「ふーん」

「ほお!」

 なんと二人お揃いのブレスレットでした。

「偶然にしては出来過ぎじゃない?」

「お前らほどじゃないぞ!」

 コロネちゃんはミワちゃんにそう言います。

「何はともあれ、おめでとう。ゆず」

「こちらこそ、おめでとう。コロネ」

 二人は羨ましいほどに笑顔でいっぱいでした。


「ミワちゃん、どこかに行くの?」

 誕生会の途中でミワちゃんはどこかに行こうとしていました。

「オードブルでも買ってくるわ。ケーキだけだと大変でしょう?晩御飯のこともあるし」

「ありがとう」

 なんだか申し訳なく思います。

「いいのよ。アンタは楽しんでなさい」

 そう言って家を出て行くミワちゃんの背中を見ると、何故だか胸を締め付けられる思いがしました。


 ミワはオードブルの盛り合わせが入った袋をぶら下げながら歩いていた。

「白昼堂々魔女が出てくるってのはどんなもんなんでしょうね」

 ミワは溜息を吐く。

「魂の呼び声は引かれあう。幾年月離れようとも」

「アンタ、意味なく言ってるでしょう」

 ミワは見知った顔の魔女に声をかける。

「アオ」

「残念ながら――」

「そんなこと、どうでもいい」

 ミワは早速魔法少女に変身した。

「そっちのも戦うんでしょう?」

 もう一人の魔女はケラケラと笑う。性格にはウサギのパペットだが。

「魔女二人相手に戦えるのかァ?」

「バカにしないでくれる」

 ミワはバトンを構える。

「勘のいいバカどもが追ってくる前にミワはアンタたちの片づけたいの」

「まるでこうなることを知っていたかのような言い方だな」

 ミワは鼻で笑う。

「アンタらのボスの正体は割れてんのよ。絶対にアイツしかいない。あの鷺宮の面汚ししかね。そんで、アイツが一番嫌うのがミワなわけ。同族嫌悪ってやつか、はたまた、鷺宮を恐れているのか。いえ、恐れているのはサギノミヤの方か」

「ともかく、お前は死ね。それがピースメイカーの望みだからな」

 スミス&ウェッソンの攻撃が合図となり、魔女と魔法少女との戦いは始まった。




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