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志望業種は――魔法少女で!  作者: 竹内緋色
第一唱 終わりの始まり 
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第十七羽 ショクザイとゲンザイ

第十七羽 ショクザイとゲンザイ


 これほど家の中が静かなのは久しぶりだった。自分の家だというのにテレビの音が響くばかりで、まるで他人の家みたい。

「って、他人の家か」

 自分の家って言うとフキが怒るだろうし。

「でも、フキもフキよね。よくも他人を家においておけるわね」

 そこがフキの良いところだと思う。でも、優しすぎて見ているこっちがハラハラしてしまう。

「にしても、冬休みの昼間のテレビって暇よね」

 みんな何か用事があるらしく、それぞれが部屋に籠ったり、出かけたり。

 わたしはそうなるとやることもないのでテレビを見ているだけになる。テレビでは最近流行の魔法少女が出演していた。

「ふ~ん、最近はこんな子が人気なのね」

 人前でニコニコしていることしかできそうにない、アホの子みたいだった。

「……」

 次に移ったのはわたし、魔法少女ソラ。今でも不動の人気、と言いたいところだけど、他の魔法少女に埋もれてしまっているし、なにより――

「あざとい……」

 ぶりっ子を演じてきてはいたものの、流石に自分で自分の姿を見ると気持ちが悪い。

「まあ、今のわたしには関係ないか」

「そんなことないパフ」

「うわっ!びっくりした!」

 突如として白い妖精が姿を現す。

「何気にソラの仕事が溜まってるパフ」

「女の子は恋に忙しいの」

「……」

「なによ」

 パフィーの視線はわたしの手の先にあるポテチに注がれていた。

「食べたいの?」

 次は腹に、腰にと体をなぞるように視線を向ける。

 そして、バカにしたように鼻で笑う。

「あんた、一々癇に障るわよね」

「一体何のことパフ?」

 うそぶきやがって。こいつ、絶対肥ったとか思ったに違いない。

「まあ、別に魔法少女の仕事はしばらく休んでいてもいいパフ」

 ブチ。

 頭の中で何かが吹っ切れる音がした。

「あんたまでわたしをおばさん扱いするわけ?」

 確かに、他のロリどもと比べると色々と大きかったりするよ?(絶対に太いとは認めん!)でも、わたしもまだまだ現役のJCなのだ。女子中学生なのだ。ピッチピチなのだ。

「まあ、努力は実を結ぶというパフし」

「ウザキャラで売り出そうって魂胆でもないでしょうね」

 こいつはこんなヤツだった。完全に人間という存在をバカにしてやがる。

「やってやるよ!そこまで言うならよ!」

 今思えば三日三晩で実を結ぶものでもないし、確実にあの妖精に乗せられていたのだ。


「やせる、やせる、やせる、やせる」

 外は寒いので家の中で筋トレをする。子どもは風の子、大人は火の子――

「って、わたしもこどもよ!」

 玄関を開けて外に出ようとするものの、三秒で断念する。

「きっと、もっと家の中でできることがあるはず。うん。きっとそう」

 筋トレを再開するけど、即座に終了。

「筋トレって一日何回もできないしね」

 もとよりわたしは運動が苦手なのだ。

「あーあ。寝てるだけで痩せたりしないかな」

 そんな中、いつもはおばさんだとか、豚になるだとか言ってくる年下の友達は今日に限っていない。

 あの頃の、魔法少女グループが解散した後の寂しさに似ている。

 仲間と別れた後のわたしは一人で魔法少女を演じた。魔法少女の真実を知らない一般市民のアイドルとして。わたしにできるのはそれくらいしかなかったから、全力で頑張った。

 でも、それはわたしの本当にしたかったことなのだろうか。アイドル魔法少女ソラに戻るということは、あの頃の自分に戻るということ。わたしはそれでいいんだろうか。

「それでいいのか、よりも自分のやりたいことをやったら?」

 ブラコン娘が降りてきたみたいだった。

「褒めても何も出ないわよ」

「褒めてないから」

 彼女にとってはブラコンという言葉は褒め言葉らしい。

「いいこと言うじゃない。ブラコンのくせに」

「ふん。アンタのことなんてどうでもいいのよ」

 ミワは冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注ぐ。それを一気に喉に押し込んだ。

「牛乳に相談ね」

「悪いかしら。それより――」

 ニヤリとミワの目が怪しく光る。これは非常によろしくないぞ。

「あなた、冬休みの宿題は終わっているのかしら?」

「ギククッ」

 すっかり忘れていた。冬休みが終わるまで後、三日。今日を入れて三日で、もう今日は午後だぞ。

 その時、わたしはとってもいいことを思いついた。

「それでいいのか、よりやりたいことをやればいいんだ!」

「自分に都合よく解釈するわね。ま、困るのはミワじゃないんだから問題ないけど?」

「その余裕は、もしかして、宿題を終えたな?」

「多分まだ終わってないのは年増だけよ」

 この際年増と言ったことは置いておく。というよりもそんなことに文句を言っている余裕はどこにもナッシング!

「ミワ様。どうかわたくしめの宿題にお力添えを!」

「中学生が小学生に宿題を手伝わせるってどんなのよ」

「簡単で単純な作業です」

「作者はバカ正直にその言葉を信じて碌なバイトに巡り合わなかったわ」

 仕方ない、という風に肩をすくめてミワはわたしの宿題を手伝う。

「ほら、そこ。問題が根本的に違う。使う公式が間違ってるの。ほら。いじけて落書きしない。あなたの頭は絵を描くようにしかできてないの?」

「一々心を抉らないでくれるかな」

 どうして小学生が中学校の問題を解けるのかはもうどうでもよかった。宿題さえ終われば、そして、先生に怒られなければ――

 しばらくしてみんなが帰ってきたけど、やっぱり宿題は終わらない。

「うぅぅ。宿題が、宿題が終わらないよぉ」

「ソラさん、勉強得意なイメージがありましたけど」

 この余裕。フキも宿題を終えているな。最近の小学生は優秀か!わたしが子どもの時は誰も宿題なんてしなかった!え?三年しか歳が違わないって?気にしない、気にしない。

「別に苦手じゃないの。ただ、うん。時間がかかると集中力が」

「お姉さま、絵のことになると時間を忘れるのに」

「好きだったらなんでも忘れちゃうの。一途な乙女なの!」

「え?乙女?」

「こら!全員でお前おばさんだろみたいな顔しない!」

 ちょっといつも通りで嬉しかったり。

「仕方がない。コロネちゃんが手伝ってやろう」

「え?」

 そういえばコロネは宿題を終えているのだろうか。

「コロネ。あんた、わたしよりバカでしょう」

「そんなことないぞ!コロネちゃんは天才なのだ」

 コロネはあっさりと高校入試レベルの問題を解いてしまった。ついでに言うと、まだ習ってもないというか、少しも読めない数式を使ったりしている。もしかして、大学レベル?わたしはコロネにも負けている!?

「ええい!ままよ!」

 わたしは辛酸をなめながら、なんとか宿題を終えた。


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