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其ノ者、口撃の達人にて  作者: 逆波
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其の一刀 崩壊をもたらす

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m(ーー)m


自分にとって世界とは判断の連続で、残酷そのものでしかなかった。悔しいのは、その判断の基準が公正で正確、そして正当性があることだ。しかし、どれほど正しい判断でも、それにそぐわない人間というのがいる。小を捨て大を得る。

それは人間であれば当然–––ともすれば動物であってもごく自然に行なっている判断なのだ。


「技能判定E、実技判定E、筆記判定S……ギリギリ合格だ」


入試試験を受けた際に冷たく言われた言葉がそれだった。


「全く、総合点を合格ラインにするからこんな奴が平然と入ってくるんだ」


呆れたように言い放った、審査官であろう男に賛同こそすれ反論する言葉が見つからなかった。まさにその通りだと自分が思ったからだ。


どれだけ綺麗事を並べようとも世は実力社会であり、弱者は強者と肩を並べて歩くことさえ許されない。当然の理だ。


技能なしのうは他所に行ってくれよ」


気を遣ったのだろうか、審査官の男は俺に聞こえないように静かにそう言い放った。残念ながらその気遣い虚しく俺の耳に届いてしまったのだが……。


世で大成して行くにはスキル、レベルが重視される。だから各人のスキルに見合った学校を選び、自分のスキルを磨いていくことになる。当然スキルを持たないものは専用の学校に入学することになる。


俺の場合、専門学校が遠すぎて通えないので普通科を選んだのだが、技能のうなしな俺を入れてくれるような場所はそう多くなかった。


元来、スキルは生まれた時からその身に宿していて、物心がつくとともにその存在に気付く。そしてスキルは同時にその人そのものを体現する名刺のようなもので、その人の個性が強く反映される。


熱く、感情的であれば火に関係するスキルとなり、冷たく冷静であれば氷に関係するスキルとなる。そしてスキルを伸ばすに従ってその傾向はより激しいものとなる。


すなわち、スキルを持たないというのは個性がないということを意味している。そんなこともあってか、スキルを持たないものはナナシ、只人、普人などという蔑称も存在する。


そんな俺がクラスに馴染める訳などなかった。





時刻は明朝、投稿時刻の制限が迫り、多くの生徒が雪崩のように校門に駆け込んでいる。もちろん俺もその中の1人だ。


しかし、そんな変わらぬ風景に少し違和感を感じて思わず足が止まってしまった。


そこには他愛もない日々に生じる些細な変化があった。俺の視線の先には経年を感じさせるお社がその御神体––といってもなんの変哲も無い木刀ではあるが––を台座の上から落とし、地面に無造作に置いてあった。


特に良いことをしようとしたつもりは無い。自分が良い人間だという自覚は一切ないのだから当然のことだ。ただ、この自分の変わり映えしない日常にほんの一輪の花を添える程度の気持ちだった。


「これでよし、と」


元に戻された御神体は朽ちたお社に対して場違いなほど歳を感じさせないものだった。こうして"善行"という一輪の花が日常に添えられた。






「出席をとります。まず、秋山くん––「はい」……」


朝のホームルームが始まり、生徒の点呼が行われる。なんとでもない普通の風景だ。後ろの方ではじゃれつきあった生徒がスキルを用いて教室に強風を巻き起こし、それによって被害を伴った生徒がスキルを用いて壁を生成し、外界からの干渉を断ち切る。


「私語や、身勝手なスキルの行使は控えるように」


教師のやる気のない声が教室内の喧騒にかき消されていく。形だけの注意には誰も従わない。反応を示さない生徒になんとも思わないのか、教師は淡々と点呼を済ませていく。


「最後に間谷龍斗くん」


このやり取りも何度目であろうか、繰り返される児戯に慈悲の心すら湧いてくる。


別に"ま"以降の名前が存在しないわけではない。俺だけが、クラスから切り離されている扱いなのだ。


「はい」


今日も今日とて日常が繰り返される。それはまるでプログラムされた乱数のように。







朝の1時間目が始まる直前、それは起こった。


最初に感じたのはちょっとした違和感だった。なんとも言えない、具体的に言葉にできないような違和感だった。


いの一番に気づいたのは風を操る能力者だったか、それとも察知系の能力者だったかはよく覚えていない。


誰もがちょっとした違和感を感じる中、その違和感の正体にいち早く気づけたものがぽつり言葉をこぼした。


「学校が、閉じ込められてる…!?」


言いながら事の異常さに気づいたのか、すぐに言葉は尻すぼみとなって、後に残ったのは呟きを運悪く聞いてしまった生徒たちの動揺だった。


事態が広がるのにそう時間はかからなかった。同時にそれは混乱の広がりでもあった。


「みんな! こういう時こそ落ち着いて状況を整理しよう」


俺のクラスの代表である孤理ひとり 裕樹ゆうきがみんなを落ち着かせるように声を張り上げる。すると、混乱は嘘だったかのようにその鳴りを潜めた。


これが彼のスキルというわけじゃない、これは彼の生まれながらに備わったカリスマをこの学園でより一層磨いたものにほかならない。


顔がいいからみんなその言葉に従っているわけではない……と思いたい。


「そ、そうだね」


「ああ、確かに一旦状況整理したほうがよさそうだな」


圧倒的カリスマは場の空気を文字通り掌握するかの如く、快調へと向かわせた。


「あーあー、ただいまマイクのテスト中」


しかし、ならず者にとってそんなことは関係ないのか、好転しつつあるクラスの雰囲気を真っ二つにするように声が差し込まれた。声は放送機から鳴っていた。男とも女とも取れる中性的な声で続けて言葉が発される。


「お取り込み中のところ申し訳ないね。スバラシー光景を見せてもらったよ」


「え、どういうこと?」


「なんだこの放送?」


誰もが一瞬期待した事態の報告に関する放送という線はすぐさま消え去った。


「突然ですが君たちには殺し合いをしてもらいます。最後の1人になるまで結界は解かれません」


その言葉を素直に飲み込めたものはいたのだろうか。誰もが呆然とする中、自分のなかで日常が崩れ去る音が鳴り響いた。







再び、教室は混乱で包まれる……と思われたが、驚くことにそんなことはなかった。これはクラスの中心人物である裕樹の活躍があったからだ。勉強、実技、顔もいいとなればまさに完璧無比といえる存在だ。そこに培ってきたカリスマが合わさることによってクラスの統率は乱されることはなかった。


–––––流石は校長の息子と言ったところだろうか。




落ち着いたみんなの行動は早かった。再び放送で流れた「全校生徒は校庭に集合」という指示にもスムーズに従うことができた。


校舎から出て目に映ったのは、学校を覆う白亜の壁だった。一切の汚れのないその純白な壁には一種の芸術すら感じさせらるほどだった。こんな状況でなければ少しは楽しめて見れたのかもしれない。


「えー本日はお日柄もよく。–––––「教頭先生、そんなこと言ってる場合じゃないですよ!?」 –––––おっとこれは失礼」


どうやら校長先生が出張で不在らしい。


緊張感のない教頭と教師のやりとりと共に開始した全校朝礼(?)のようなものの内容は救助を待つと言うだけだった。確かに、それが現実的であるが、緊張感は持ってほしいと思う。


何と言ってもこの学園がある場所は田舎の山の中なのだから。


救助が来るにしてもその頃には全員干物になっている可能性だってある。そんな状況の中で、いつものように長々と話を続けないでほしい。天涯孤独なぼっち君にはこの状況は辛いのだ。話す相手がいない状態で、長時間つまらない話を聞くのは著しい精神的苦痛を伴う。


あの後教師が放送室に駆け込んだところ、中には誰もおらず、使用された痕跡もなかったそうだ。


また、怪しいものがいないか学園内と学園外の両方を探したが見つからなかったらしい。




解放、もとい話が終わると教師と有志の生徒が壁の破壊を試みる流れになった。担当するのは教師でも実力派の体育科と魔法科の2人と我らが代表と全学年の各クラスの代表のようだった。


俺はもちろんそれを遠くから眺めていた。






スキルの傾向でより物理的でまた内部的であるものを体育科の分野とし、より精神的でまた外部的であるものを魔法科の分野としている。


体育科の岩谷いわたに 香石こうせきのスキルはシンプルでいて極めたらとても強力な"硬化"と言うスキルだった。


体の一部又は全体を硬くすることができる典型的なアクティブ型スキルといえよう。硬さの上限はあるもののある程度の自由がきくらしく授業の際は生徒を傷つけないように気を遣っているらしい。


魔法科の火山ひやま 陽子ようこのスキルもシンプル イズ ザ ベストを言葉にしたような

"炎"のスキルだった。


自分の熟練度に見合った炎を作り出すことができる。

彼女の場合はスキルに対して珍しくパッシブ型となっている。常に炎を身に纏っており、普通の衣服の着用が難しく、耐熱の下着をしているだけで他は何も着てないらしい……と言うのを本人が言っていただけで見た人はいない。


そして我らが代表の裕樹のスキルはアクティブ型の"光"スキルだった。まだ荒削りとは言え、"光"のスキルは様々な用途に使用でき、彼の万能を体現するかのようだ。


「よしいっちょやっちゃいますか」


「私の魔法に巻き込まれて焼け石にならないように気をつけない」


気合いを入れる、岩谷に火山が茶々を入れる。壁を前にして余裕なのか、それとも自信の現れとでも言うのか、やはり双方ともに緊張感がない。


確かにこのどうみても急造のドームのような壁なら壊すことに絶対の自信を持つのも不思議ではない。この学園の教師は中々に優秀だ。スキル名持ちに高レベルと人材富んでいる。


そして我らが光の裕樹の存在。この状況にして余裕が生まれるのは当然と言えた。


教師と有志が掛け声と共に壁の破壊作業に取り掛かった。






ひかり、光か。




すると、突然得も忘れぬ寒気に襲われた。


なんだか、見落としてはいけないことを見落としているような。当たり前のことなのに直視するのを避けていたような。そんな感覚だった。


感覚に従うようにドームの天井を見た。


しかし何もなかった。そこにはただ学園を覆うようにして白亜の壁が存在していた。なんともないただの–––––


–––––いや、何もなさすぎた・・・・・・・




そこには照明も空気を入れ替えるための穴も存在しなかった。




「一体光はどこから?」


どうして学園全体はこんなに明るいのだろうか、壁自体が発光している? いや、そんな様子はない。そもそもなぜ今までこんなことにきづかなかった?


俺がそうやって混乱に陥る中、壁破壊は行われていた。


「うそだろ……」


「なんで……」


しかし、それは無音と共に終わりを告げた。


全ての攻撃は何事もなかったかのように壁に吸収され音すら発しなかったのである。それは光であってもそうだった。そう光の反射さえ許さないほどに。



果たしてどこまで続けられるのか?!


次回にご期待。

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