作者の考えは知らないほうが幸せ
作者の考えを答えなさい、と言う問題を学生時代何度も解かされた。
色々な作品に触れるようになった今になって思う。
「ぶっちゃけ、作者の考えなんて推理物の結末並みに知らないほうが幸せだよな。」
「その台詞、世の推理作家と国語の問題作る人の大半敵に回してないか?」
のんびりベッドに寝転んで、会話は寝るまでの暇つぶし。
男は欠伸を一つして、適当にスマホに指を滑らせる。
「実際さ。作者の考え想像してみると、駄作が・・・駄作以下って何だろうな。
まぁ、そんな『よく企画通したな』って公式作品が余計酷く見えるようになるからなぁ・・・」
キャラの個性も過去作の設定もガン無視で政治批判する連作ドラマしかり、
それまで欠片も無かった「掟」を作中で設定して主人公処刑エンドにした記念作品しかり。
利用した相手にもネタにされた「撮りたい映画は企画通らないから有名作品の名前だけ借りた」映画のような、
『とりあえずこのネタをやりたかっただけ』が透けて見えて来る。
「なろうでも、唐突に無理解な両親への批判で一話使って『ああ、親と喧嘩したんだな』と思わせた小説とかあったし。
・・・あれは、絶対恨み節だけで書いてたぞ。それまで両親に関する描写一切なかったんだから。」
「少なくとも、お前が言えた義理じゃないけどな。
感情だけで書いてるのは一緒なんだし。」
少年の指摘に、男は目を逸らす。
実際、『書きたかっただけ』という意味では人の事なんて言えやしない。
頭に浮かんだもやもやを、言葉に纏めて投げてるだけだ。
「まぁこっちは、元々こういうものだしな。
騙し討ちじゃないだけマシってことで。」
「・・・まぁ、誰も読まないしな。どうせ。」
・・・そう、結局はそこに落ち着く。
誰も気にしないからこそ、好き勝手にやれるのだ。
いつの間にか評価点入ってたし、実際には読んだ人居るのだろうけど考えない。
考え出したら泥沼にはまるだろうし。