幸せ≒美味い醤油
「案外、あのCMソング間違って無いのかもなぁ。」
「どのだよ。」
「幸せ=美味い醤油があること、ってヤツ。」
調味料を適当に塗って焼いたトーストを食べながら、二人の会話は進んで行く。
することの無い、暇な夜。哲学モドキには丁度良い。
「幸せって、満たされてる事じゃん。」
「まぁ、そうだなぁ。」
「でも満たされると視野が広がって、もっと色々な物がほしくなる。」
「まぁ、満たされて無いとそもそも視野を広げる余裕なんて無いしな。」
某十円の駄菓子が稀に買える程度の子供が、
一袋数百円のチョコレートに興味を持てるか、という話だ。
どうせ手が届かないと割り切っていれば、最初から意識を向けもしない。
けれど、百円千円と使える金額が増えていけば、だんだんといろいろな物が視界に入ってくる。
欲しい物はたくさん有って、何でも買えると思っていたお金は全然足りない。
ほら、無間地獄の始まりだ。
「・・・まぁ、お金が有ってもそもそも求めてる物が存在しないってケースもあるんだけどね。」
「前提いきなりぶっ壊したな!?」
「お金で感性は買えないからねー。ソレに、なんかこのままだと話が醤油から離れそうだし。」
「・・・ああ。そういや、幸せが醤油だってことだっけ。この話」
「完全に醤油ってわけじゃないんだけどね。とりあえず、美味しいもの食べれりゃ幸せじゃん?」
言いながら、男は持っているパンを掲げて見せる。
調味料を適当に塗ったパンは、少なくとも不味くは無い程度の出来で。
「まぁ、このパンはそんな美味くも無いけどな。」
「醤油はいろんな料理に使えて、飽きが来る事はなかなか無い。
料理のレパートリーさえあるなら、美味い醤油があれば幸せってのはあながち間違っても無いわけだ。」
「レパートリー無いとただの醤油だけどな。このパンも醤油関係ないし。」
「まぁ、そこは人によって幸せの形は色々だって事で。」
「・・・まぁ、食べれてりゃ幸せだってやつも居るしなぁ。」
「食べるのが苦痛になるよかマシだろ。」
所詮哲学「モドキ」の会話は、結局花も実も咲かず。
今夜も結局ぐだぐだと、時間ばかりが過ぎてゆく。
個人的には、醤油より出汁醤油の方が好きです。
飲んで美味しいし。