ペンケース
-----・・・-----
「おはようございます。」
「やあ、吉田君。手伝いを引き受けてくれて本当に助かったよ」
「いえ。で、何を手伝えば?」
朝一で大学へと足を運んだ俺は講師の元へと行き、作業を淡々とこなした。
俺には全く関係のない講義の内容だったが、点数稼ぎには丁度いい。
エリートと呼ばれる俺は、講師や教授に気に入られているようで、こういった頼み事をよくされていた。
また、身長もでかく、体格のいい俺は重いものを運ぶにはうてつけなのだろう。
「これで最後だ。助かったよ、ありがとう」
「いえ、では。」
会釈をし、その教室を出た俺は自分の受ける講義の教室へと向かった。
「あ、吉田!おはよ!」
「……おはよう。何か用か」
畠は一瞬驚いたような顔をした。
「何かなきゃ挨拶もしちゃいけないのかよ」
と、口をとがらせる畠。
なぜこうもしつこいのだろうか。
教室へ入り、いつも座っている席へと腰を下ろす。
斜めがけのカバンを体から離し、ノートとペンケースを取り出す。
いや、取り出そうとしたのだ。
しかし、いくら漁ってもペンケースは見つからない。
結局、今日の午前の講義は話だけを聴くこととなった。
全く。
今日はツイていない。