家庭内
昼食を済ませ、午後の講義を受ける。
いつもと同じ時間に帰宅するため、午後の講義は3時までしか受けない。
今日も俺は3時に終わる講義を選択し、帰宅した。
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カチャ、カチャ………カチン……キィ…
「ただいま」と扉を開け、
「おかえり」と目を合わせる。
そんな"普通”が俺の家には無い。
いつも家全体が薄暗く、洗濯物や食器が重なっている。
それを片付けるのが俺の仕事で、机の上にはバイト代と言わんばかりの茶封筒。
中身はもちろんその日の夕飯代だ。
俺に母親はいない。
大学に合格した年に病気で死んだ。
仕事人間の父が家事をするはずもなく、当然のように役は回ってくる。
料理のできない俺はいつも同じコンビニで同じ弁当を買う。
まあ、理由は昼食と同じ理由だ。
部屋の明かりを点け、帰り道で買ってきたサラダと弁当を取り出す。
それで適当に夕飯を済ませ、PCの電源を入れる。
ニュースのトップは連日報道される芸能人の結婚。
こんなもの、なにがおもしろいんだか。
会ったこともない他人の幸せを喜ぶなんて心底理解ができない。
ニュースを一通り読み、PCの電源を落とす。
明日の講義は準備の手伝いを頼まれている。
いつもは10時に就寝するところだが、今日は9時に眠りにつくことにした。
風呂に入り、歯を磨き、入念にストレッチをし、部屋の明かりを消した。