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Act.1 ピユニアン隊候補生

科学と魔術の入り混じる世界“ワルド”

其の世界には神々と、人間と、魔獣と、魔人と、精霊が存在する。

世界“ワルド”の創生者、万能なる神々“ジード”

賢き人間“ヒューマ”

美しき血肉を持たざる聖なる獣、精霊“ガーディア”

愛でられしは癒しの象徴、動物“アニマ”

聖と魔の間をゆく魔獣“マカル”

そして、人と魔獣の子と噂された魔人“マージア”


争いの耐えぬこの世界は、終わる事ない戦いを続けてきた。

不死の魔人を全て封印せんとするヒューマ

人類を全て根絶せんとするマージア

其の戦いの歴史は、ゆうに1000年を超えていた。


『2時の方向、マカル接近!』

拡声魔法を通して鷹の目が声を張る。

その声に従ってアフロディテ・ヴイヌスは示された方向を目視した。

銀に輝く長い髪の毛を風になびかせ、ガーネットの瞳を鋭く光らせる。

背中に背負う長剣の柄に手をかけ身構えた。


その昔、人類”ヒューマ”はまだ、富と権力を奪い合い争っていた。

しかし突然なる魔人”マージア”の現われに世界“ワルド”は混沌へと堕ちて行った。

不死の力を持つマージアに対抗するべく、5人の賢人が立ち上がった。

“神の書”の守り人と呼ばれるれ、ワルドの創生に用いられた5つの力を秘める5つの書の番人だ。

5大賢人たちはワルドの中心に人類創生同盟隊を設立した。

これが後の世界総統本部となるのだが、マージアに対抗するべく世界中から魔導士達を集め戦いを挑んだ。


それから1000年、現在までマージアとヒューマの戦いは終わりを迎えることなく続いてきた。

今日もまた、人類は戦い続けているのである。



ここはワルドの北に位置するサラヴァドレーヌ大陸、ガルガンティア領の地。

シアコワトゥル魔人討伐学校の学校都市である。

此処には実に6千万人の子どもたちと2千万人の教師や学校関係者が住んでいる超巨大学校都市なのだ。

ワルドにはこうした学校が5校存在する。

この世界に住む全ての子どもたちはそのいづれかの学校へと入学する事が義務付けられており、いかなる例外もない。


『来ます!』

鷹の目の声に従ってアフロディテは剣を抜いて敵に斬りかかる。


アフロディテもまたワルドの掟に則りシアコワトゥル魔人討伐学校の学生としてそこに居る。

シアコワトゥル魔人討伐学校はその名の通りヒューマの敵とするマージアを討伐を目的とする人材を育成する学校である。

そして、世界で最も大きな学校でもある。


アフロディテは現在、魔人討伐隊通称ピユニアン隊の入隊試験訓練を行っている候補生だ。

どこの学校もそうだが、学生は1から10年生まで居り、入学は満10歳、卒業は満19である。

シアコワトゥル校の魔人討伐隊の入隊試験が受けられるのは3年生の12歳からで、合格するまでは候補生として訓練を行う。

3年生で合格するものはほぼ居らず、大体は4年生以上になってからなのだが、それでもいち早く正式なピユニアン隊員なるべくして子ども達は日々訓練に精を出す。


「あれ…何かしら…」

アフロディテの上空にいた鷹の目を務める少女が呟くように言った。

目の前の敵を倒してアフロディテがそれを見上げる。

浮遊魔法を発動して上空に位置し大地の動きを監視する役目を担う鷹の目。

それを担う同じクラスの少女が何かを見つけたようだ。

更に上空で候補生の監視役の務める上級生の元へ少女が昇っていった。

少女は敵が現れた2時の方向とは真反対の8時の方向を指差して何かを上級生に伝えている。

翼馬アリオンに乗って待機していた上級生の者はそれに従って、双眼魔法を発動し、示された方向を見た。

『マカル・ドラグだ!!』

伝達魔法で直接脳に響いてきた声がそういった。

ハッとなるアフロディテ。


『数30!あれはお前達には到底無理だ!!退避しろ!!』

数秒して別の声が脳に響く。

南西の方にいた上級生が応援要請用の光魔法を打ち上げる。

目まぐるしく変わる状況にクラスメイト達はそれぞれに反応を示した。

冷静に襲ってくる討伐対象を倒しながら後退していく者もいれば、怖れ慄いて情けない悲鳴を上げながら逃げ惑っている者もいる。

『くそっ!俺たちじゃひよっこ達を守ってあれを食い止めきれないぞ!』

飛び交う罵声。

南南西で爆発のような地響きとドラグの鳴き声が響いた。

その形は西洋龍に似てコブラの顔の尾を持つ。

正式なピユニアン隊でも20体で一個小隊ほどの部隊でしか討伐を許されていないほどの強さを持っている。

数で言えば確かに一個小隊の人数100人以上はこの場に居るが、相手は30体でしかもこちらに居るのはピユニアン候補生が100人と監視役の一個小隊長レベルの上級生が5人だけ。

討伐するのは以ての外、犠牲無しで脱出するのは極めて難しいだろう。

そこら中から悲鳴が上がる。


アフロディテ至極冷静だった。

周りを見回して覚えたての伝達魔法を発動した。


『動ける人たちは居ないか?私の声を聞いてほしい』

そうすると30名程が返事をした。

意外に多く残っている、とアフロディテは思う。

『私にドラグを討伐する一つの案がある。一か八か、下手をしたら死ぬかもしれない。それでも私の案に乗ってくれるだろうか。』

『…内容によるわ』

1人の少女の声がそう言った。

『2人1組のペアになるんだ。ドラグの急所は腹だと聞いた事がある。だから、1人は囮、1人はトドメを刺す役割を担ってあれを討伐するんだ。』

『具体的な方法はどのように?』

鷹の目を担っていた、最初にドラグを見つけた少女の、声が問う。

『囮のものの影にトドメを刺すものが鏡魔法を使って隠れギリギリまでドラグに突進するんだ。囮はギリギリ直前で上空に退避、目くらましの光魔法を発動させる。その隙をついてトドメを刺すものが腹の下に潜り込んで一気に急所を突く。それで上面も、尾のコブラも突破出来るはずだ。だが怯んだら絶対に負ける。』

アフロディテは説明して言った。

『成る程、やってみる価値はありそうね。』

何人か否定の声が聞こえたが、内容を促した少女の声に、死ぬよりはと皆賛同した。

『話を聞いてくれてありがとう。皆近くのクラスメートとペアになるんだ!目くらましの光魔法の威力を高めるため皆同時に行くぞ!』

了解の意が聞こえる。


『アスラン・オーディンの名の許に』

1000年前、マージア・ルドラを封印し、シアコワトゥル魔人討伐学校を設立した英雄の名を口に、アフロディテは心臓に右手を翳した。

クラスメート達も同じように言う。


「貴女か。」

近づいてきたピンクブロンドのウェーブのかかった長い髪の毛にアクアマリンの大きな瞳を持つ少女が現れた。

「よろしくお願い致しますわ、ヴイヌスさん。」

「私を知っているのか」

「あら、貴女を知っておられる方は貴女が思われているよりもずっと居りましてよ?」

「私を?何故、それに貴女の方が有名人だろう、イレネ・アルテミス姫」

「いやですわ、クラスメートにまでそんな呼び方されたくありませんわ。わたくしは白魔法の方が得意ですの。わたくしが囮になりますわ。…皆準備が整ったみたいですわね」

「あぁ」

白魔法とは、主に回復や守備に強く、攻撃性の低い魔法の総称である。光魔法や、伝達魔法、拡声魔法、鏡魔法もそれにあたる。反対に攻撃に特化した魔法の事である総称を、黒魔法という。


『皆準備は良いか!行くぞ!!』

その声に皆が一斉に走り出す。


ドラグのスレスレまで一気に駆け出すアフロディテとイレネ。

イレネはドラグの正面、ギリギリの所で空中に飛び上がった。

彼方此方でカッと眩しいほどの光が閃いた。

「死に帰せ、マカル!!」

怒声とともにアフロディテ力一杯ドラグの腹を切り裂いた。

様々な所からドラグの悲鳴と大地に倒れる音が響く。


“ギャァァァ!!"

「うわあぁっ、こいつ!!」

仕留め損なった生き残りが居たようだ。

クラスメートが怯んでしまい、後ずさる。


「仕留め損なったのか!?」

倒れる前にドラグの下から退避ひしたアフロディテは、暴れる生き残りに気がついて大地を蹴った。

「援護しますわ!」

イレネが浮遊魔法で空中からアフロディテを追う。

そうして強い光と麻痺の魔法をドラグに打ち込むイレネ。

「助かる!」

アフロディテはそう言ってから、気合を入れて掛け声と共にドラグの首を落とした。


やがて訪れる静寂。

砂埃が引くと、転々とドラグの屍体が転がっていた。

中には真っ二つに切り裂かれているドラグもいた。


子ども達は敵が既に息絶えている事を確認し、歓喜の声を上げた。

共に戦った仲間と喜び合う。

その場に居た上級生達は驚きを隠せないでいる。

しかしアフロディテは喜びを分かち合う事はせず、すぐに次の指示を出した。

「回復魔法の得意な者は直ぐに負傷者の手当てを。鷹目はまだ敵が潜んでいないか確認するんだ!」

その声にクラスメート達はハッとなり行動に移しだした。


持って生まれた、才能なのだろうか。

そうならざるを得なかっただけなのか。

後の世に知らぬ者はおらぬ程、その名を轟かせる事になる彼女はこの時、既にその頭角を現していた。



機能の使い方がいまいち分かっていない・・・。

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