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第5話

「ライトノベルと言うのは、小説の分類の一つで、ライトは電球ではなく、軽いの意味。ノベルはそのまま、小説の意味よ。合わせて、軽い小説。ようするに読みやすい小説って言う意味ね」

「ほうほう、なるほど」

 天音の説明に、大都がうんうんと頷く。

「そして、ここがライトノベル部。将来、ライトノベル作家を目指す同志が集まった部だ」

 そう言って、ボーイッシュな髪型の大柄な女生徒が大都の手をガシッと掴む。 

「自己紹介が遅れたな。私の名前は神崎晶かんざきあきら。2年だ。この部の部長を務めている。君の入部を心から歓迎するぞ」

 晶は、大都の手を上下に振りながら情熱的な握手をする。そのあまりの勢いに、大都は吹き飛ばされそうになった。

「エリュシオン大賞はライトノベルの登竜門。ここを通過することができれば、あなたみたいな知識の無い人間でも小説家になることは夢じゃないわ。ちなみに、私たちもエリュシオン大賞に応募するつもりでいるの。同じ小説家を目指すなら、同じ志を持った者同士が集まった方が、お互いにアドバイスしたり、励まし合ったりできるじゃない。そう言う意味でも、あなたはこの部に入部するべきなのよ」

 天音がさも当然のように言う。

 天音の鼻につく態度に癇に触る言い方が気になる大都だったが、とりあえずは自分の目的のために黙っておくことにした。

 大都の目的。それは、なんとしても100万円を手に入れることである。100万円を手に入れるためには、エリュシオン大賞に小説を応募しなくてはいけない。応募するためには、小説を書かなくてはいけない。

「木村もそう思います。木村の分析によると、大都君は物書き初心者と見ました。なら、ここで小説の書き方を学ぶのが木村的にも良いと思いますよ」

「そうっスよ、大都さん。ここは先輩方に肩を借りる気持ちで色々と学ぶといいっス。あ、ちなみに私も大都さんと一緒の一年ッス。よろしくお願いするッスよ」

 そう言って木村と衣純はニコリと頷く。

 一瞬だけ考えた後、大都はニコッと微笑み返した。

「こちらこそ宜しくお願いします。先輩方」

 そう言って大都は手を差し出した。

 ライトノベル部のメンバーは、パッと顔を明るくすると次々とその手に自らの手を重ねていく。自分たちの想いが伝わったと思い彼女たちは嬉しかったのだ。

 だが、大都は皆の想いとは全く別の考えを持っていた。

 悪いっスけど、俺にとって小説とは100万円を手に入れる為の手段であって、目的じゃないんスよ。こんな部、小説のノウハウを手に入れて大賞を取ることができたらさっさとやめるつもりなんで、そこんとこヨロシク。

 そして、同時に天音も皆の考えと全く別の考えを持っていた。

 ライトノベルの意味も知らないなんて、どんだけなのよこの男。志も対して無さそうだし、ライトノベル部の存続が確定したら、新しいメンバーを見つけて、こんな戦力にもならなそうな男、なんやかんや理由をつけてさっさと首にしてやるわ。

 実は、ライトノベル部は来年卒業を迎える3年生が抜けたことにより、定員の5名を割ってしまい存続が危ぶまれていた。ちょうどそんな時、新入部員を探していた天音は大都を見つけ彼を勧誘したのである。正直、部員数だけ確保できれば良かったので、勧誘する相手は誰でも良かったのだ。

「ふふふふ」

「ほほほほ」

 大都と天音の不敵な笑いが部室内に木霊する。

 それぞれの思惑を乗せ、新生ライトノベル部がここに発足した。

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