第3話
「なるほど。要約すると、理由は言えないけど君は100万円を手に入れる必要がある。そのため、藁にもすがる気持ちで、いかがわしいサイトにアクセスしようとした、そう言うことね」
「そうっス。えっと~」
ポリポリと頭を掻きながら、大都はさっき教えてもらった名前を思い出そうとする。
「大神天音」
「そうっス、天音」
「天音さん、ね」
自分たち以外誰も居ない視聴覚室。大都は、何故か大神天音と名乗る女生徒と話をしていた。
っていうか、こいつ、誰?
訝しげな表情で大都が天音を見つめる。
ショートヘアーにメガネをかけた小柄な女生徒。さっきから敬語にうるさいから、俺の先輩なのだろうか。凛々しく整った顔立ちをしているが、目つきが悪いので全体的に冷たい印象を受ける。残念な美人って感じ。っていうか、この女、なんで俺をかまうんだ。初対面なのに。
「まぁ、理由は言いたくないなら聞かないでおくけど、100万円を手に入れる手段として、あんなサイトにアクセスしようとするのはいかがなものかと思うわね」
初対面の女に、説教じみたことを言われ、大都はイラっとする。だがそこは、グッとこらえ大人の対応をとった。
「まぁ、それは悪かったっスよ先輩……で、いいんですよね」
「こんなナリだけど、一応2年生よ。山崎大都くん」
いちいち鼻につく喋り方だが、もともとそう言う性格なのだろう。それに背はちっこいが一応先輩だからな、ここはぐっとこらえよう、俺。
「で、その天音さんは、なんで俺をかまうんですか。俺がどこで100万円を調達しようとあんたには関係ないでしょ」
大都の言葉に、天音はチッチッチと指を振る。
いちいち人を馬鹿にしたような態度に、大都はさらにイラッとした。
「そりゃあ、いたいけな青少年が道を踏み外そうとしているなら、人生の先輩として止めなくちゃいけないでしょ」
「余計なお世話っスよ」
そう言って、大都は立ち上がりその場を後にしようとした。
なんだあの女、偉そうにしやがって。他に100万円を手に入れる方法があるなら、そっちをやってるっつーの。
「他に100万円を手に入れる方法があるとしたら?」
背中からの天音の言葉に、大都の足が止まる。
カチャカチャとキーボードを叩き、天音はモニターを大都の方へと向けた。
「エリュシオンノベルコンテスト。選ばれた大賞小説作品には賞金として100万円が支払われるわ」
「100万円!」
その言葉に、大都は慌てて向き直ると、モニターを鷲掴みにした。