「俺は勝つことを諦めてたのかな・・・」 by黒田健太
俺は走った。俺は足の速さには自信があった。
でも半年ぶりに全力疾走したらさすがにきつかった。
俺は教室に戻ると「諦めなければ夢は叶う」と刺繍されている布の袋を手に取った。
「諦めなければ夢は叶う」か・・・
俺は勝つことを諦めてたのかな・・・
俺はその中からキャッチャーミットを取り出した。
オイルで磨かれて、とてもキレイだ。
そしてよく使い込まれている。
「お前をもう一度使うことになるとはな・・・」
俺はキャッチャーミットに話しかけたみた。
「・・・」
もちろん返事はない。でもそんなこと関係なかった。
「いくぜ。相棒」
俺はもう一度キャッチャーミットに声をかけると再び走り出した。
体育館裏では新田が待っていた。
「遅いぞケンタ!」
いつもの新田だった。
新田と目があってもなにも感じなかった。
「あれは何だったんだ」
俺はつぶやいた。
「何やってんだ?早くやろうよ!」
「あ・・・あぁ。ごめん」
俺たちキャッチボールを始めた。
キーンコーンカーンコーン
昼休み終了のチャイムが鳴った。
「またやろうね!ケンタ!」
「約束だぞ。忘れるなよツヨシ!」
こうしてこの俺、黒田健太は須堂高校野球部に入部することとなった。
「剛速球ピッチャーの新田剛と小橋中の天才捕手と恐れられた黒田健太か・・・
これは面白くなりそうだな」
そんな俺たちのことを見ていた何者かに
俺はまったく気づかなかった。
第一章はこれで完結です!!
第二章もよろしくお願いします!!!




