「学年3位もこの程度か。詰めが甘いな」 by増川浩二
「藤木は元陸上部なのかー」
ある日の練習後、たわいのない話をしていると
増川監督に呼ばれた。
「今から大会の打順を考えるぞ」
早いですよ・・・まだ一ヶ月ありますが・・・
「まだ一ヶ月。されど一ヶ月」
そうでござんすか・・・
「打順を考えるていたって選択肢ないでしょ」
1番 センター 近藤
2番 セカンド 渡部
3番 ファースト 鬼塚
4番 キャッチャー 黒田
5番 ピッチャー 新田
6番 サード 谷
7番 ショート 藤木
8番 レフト 矢部
9番 ライト 徳永
「こんなもんですかね・・・」
「学年3位もこの程度か。詰めが甘いな」
「なっ・・・」
学年3位は俺が頭いいんじゃないぞ
周りが悪すぎるんだ・・・
1点しか取れなくても、周りが0点なら1位だろ?
それと同じだ。
「谷をショートにするべきだ」
「確かに」
「空振り量産機の鬼塚には3番は務まらん」
「言えてますね」
増川監督の言うことは的を得ていた。
野球の事なんて、真面目に考えないと思ったのに・・・
「じゃあ鬼塚を5番にして、ツヨシを3番ですね」
「いや、お前が3番だ」
「は?」
「ほんとに爪が甘いな」
俺が3番?そんなのって・・・
「初回で1番が出塁。2番がバント。3番が進塁打。
これで、ツーアウトランナー3塁。
そこで4番として強打者が出てきた。
お前ならどうする?」
ツーアウト・・・ランナーは詰まってない・・・
「迷わず敬遠ですね」
「正解だ。これでツーアウトランナー1・3塁。
5番が三振でチェンジだ」
「!!!」
思いつかなかった・・・
増川監督って実は名監督だったりして・・・
「では次のシチュエーションだ。
初回で1番が出塁。2番がバント。これで、ワンアウトランナー2塁。
そこで3番として強打者が出てきた。これならどうする?」
まだワンアウトだし、ランナーも2塁・・・
「ボール先行しつつ、打ち取りにいきますね」
「正解だ。よくできたな~」
頭を撫でられた・・・
バカにしてやがるっ!!
「つまり3番のほうがお前と勝負してくれる
確率が上がるってわけだ」
俺は初めて増川監督を尊敬しようと思った・・・




