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「俺は野球をやめたんだ」 by黒田健太
急に声をかけられて俺はかなり焦った。
だが気をとりなおして一番の疑問を聞いてみた。
「お前誰だ?」
同じ中学校だった奴から話しかけられたならまだわかるが
全く知らない人から入学式の帰りに声をかけられるとは
夢にも思っていなかった。
「俺は新田剛だ。ポジションはピッチャーだ」
いや・・・ポジションはどうでもいいんだが・・・
「キミと同じクラスだぜ」
同じクラスだったのか?
俺は知らなっかたぞ。
「ということで、野球やろうぜ!」
そう言われたが俺の答えはもう出ていた。
「野球はやらない」
俺ははっきりそう告げた。
「どうして?それグローブだろ?」
そう言って新田は俺が肩に担いでいる
「諦めなければ夢は叶う」と刺繍されている布の袋を指差した。
たしかにこの袋の中にはグローブが入っている。
お守りみたいにいつも持ち歩いている。
それもキャッチャーミットだ。
「俺は野球をやめたんだ」
そう言って俺は歩き始めた。
新田はまだなにか言っていた。
しかし俺は無視して歩き続けた。




