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「俺を抑えてみろよ」 by鬼塚明也
ツヨシに振り下ろされたバットは顔のすぐ前で止まっていた。
「なんで避けねぇんだよ」
鬼塚は最初から当てる気がなかったのではないか。
「なあ鬼塚。人を殴るのとボールを打つのどっちがいい?」
鬼塚は驚いた顔になった。
そしてその目はツヨシの目を見ている。
鬼塚もツヨシの人を変える力の虜になっちまったんだな。
でも鬼塚は強かった。
いや強がっているだけだろうか。
鬼塚は無理やり視線を外した。
「俺を抑えてみろよ」
鬼塚はそう言ってグランドへ向かって歩き出した。
俺とツヨシはキャッチボールをした。
今日も野球部は練習はない。
俺たちのキャッチボールが終わると
鬼塚はホームベースのところに立ち、バットを構えた。
俺はミットを構えて座り、ツヨシはマウンドに立った。
徳永はパソコンを取り出し鬼塚を見ている。
「三打席勝負だ!」
鬼塚が言うと
「全部抑えたらおれの勝ちだ」
ツヨシも返した。
ついに勝負が始まった。




