「投げれないんだ・・・」 by新田剛
徳永の情報元は不安だが情報は必要なので
俺はさらに聞いてみることにした。
「谷涼太についておしえてくれ」
「谷涼太。須堂東中のレギュラー。選球眼はいいらしいが
目立った選手じゃなかったからデータは少ない」
選球眼というのはストライクとボールを見分ける能力のことだ。
つまり、選球眼がいい人はフォアボールでの出塁が多くなる。
「さあ。変化球を見せてくれ」
そういえば俺もツヨシの変化球を見たことない。
俺はキャッチャーミットを構えて、座った。
「カーブいくぞ」
ツヨシは俺に声をかけて構えた。
徳永はバックからノートパソコンを取り出してツヨシを見ている。
なんであいつは学校にパソコンなんか持ってきてんだよ・・・
そしてツヨシはゆっくりとモーションをとり、ボールを投げた。
するとただのスローボールが俺のミットの投げ込まれた。
「次はスライダーいくぞ」
再びツヨシはゆっくりとモーションをとり、ボールを投げた。
すると遅めのストレートが数センチ横に変化し俺のミットの投げ込まれた。
徳永はなにかパソコンに打ち込んでいる。
「投げれないんだ・・・」
ツヨシはつぶやいた。
「何度投げてもほとんど変化してくれないんだ・・・」
俺はツヨシがこんなに落ち込んでいるのを初めて見た。




