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王子様が助けに参りましたよん♪

 あるところに一人の女の子がいました。その娘の名前はサツキと言います。サツキは、幼いころから剣道を習っていて、その日は試合で宮崎まで来ていました。そしてその会場で、サツキはある事件に巻き込まれます。それが、ある少年との最初の出会いのきっかけでした。


 サツキは、一人ぽつんと林の中を歩いていました。自分の試合は終わってやる事もなくなったので、他の人の試合が終わるまでブラブラしていようと思ったのです。サツキは、その林が気に入っていました。別にこれといったものは無いのですが、その葉っぱの擦れあう音が、妙に気に入ったのです。サツキは、暫くそこを歩いていました。ふと、林のざわめきが消えました。少し気味が悪くなったので、そろそろ帰ろうかと思って会場の方へ歩き出すと、知らないおじさんが目の前に現れました。

「君、一人?」

「は?」

 余りにも怪しさ爆発の発言のため、サツキは思わず素っ頓狂な声をあげてしまいました。このおじさん、どう見たって変質者です。ということでサツキは無視して走り出しました。変な人にあったら無視して逃げなさいと親に言われていたのです。ですがそのおじさんは、サツキの手首を掴んで逃がすまいとします。

「そんな無視しないでさぁ、一緒に遊ぼうよ」

 サツキは、苛立ちよりも嫌悪感を感じました。それほど気持ち悪く、怖かったのです。

「嫌ッ、離してください」

 サツキは逃げようと手を振り払おうとしますが、サツキはまだ6歳の女の子なので、振り払う事が出来ません。それどころかおじさんは、痛みを感じるほど、よりいっそう力を込めて手首を掴んできます。

「キャ……ムグ……」

 サツキは叫ぼうとしましたが、おじさんに口を抑えられてしまいます。サツキは恐怖と嫌悪で震えだしました。

「ん〜いいねぇ、かわいいねぇ」

 おじさんはそれを実に楽しそうに見ています。サツキは絶望しました。自分はこのまま誘拐されてしまうんだと。ところが、

「オッサン、いい歳こいて誘拐なんてやってんじゃねぇよ。犯罪だよ、犯罪」

 いきなり後ろから声がしました。おじさんにつられてサツキも後ろを振り返ると、そこには、自分と同じくらいの男の子が立っていました。おじさんを見上げてみるとプルプル震えています。そこにさらに追い討ちをかけるように男の子は言います。

「オッサンロリコンってやつ? も〜いい歳して、何やってだか」

 その男の子の口調には明らかに侮蔑の色が混じっていました。

「僕、いい加減その口閉じないとおじさん怒るぞ」

 おじさんはいい加減頭にきたのか少し怒った様子で言いました。しかしその少年は、そんなおじさんなど気にした様子も無く、サツキに、

「いよォ、捕らわれの姫様。王子様が助けに参りましたよん♪」

 と、とても楽しそうに微笑みながら声を掛けました。サツキは、なぜだかその時胸の高鳴りを感じました。サツキは本が大好きで、特に白雪姫などに代表される「王子様がお姫様を助けに来る」というシチュエーションにずっと憧れていました。なのでこの状況で、しかもあんな台詞を吐きながら目の前に現れたその少年に、サツキは言いようの無い感情を抱いたのです。分かり易く言うと惚れちゃったのです。サツキは、しばらくその少年の顔を見つめていました。少年もサツキに微笑んでいましたが、無視されたのが頭にきたのか、おじさんが顔を真っ赤にして少年の方を睨んでいるのを見つけると、いたずらを思いついた子供のような笑顔を顔いっぱいに浮かべて、おじさんに話し掛けました。

「オッサン、やっぱ駄目だよ犯罪は、捕まっちゃうよ。それとも別に捕まっても良いと思ってる訳?」

 おじさんはもう我慢も限界に来ているようです。顔は既に赤いキングス○イムになっています。ですが、その少年はそれを面白がっているようで、ついにトドメの一言を放ってしまいました。

「あ、もしかして会社でリストラされてお金も無くて、その上妻と子供に逃げられて路頭に迷ってる?」

 図星だったようです。おじさんはとうとう切れてしまいました。

「この餓鬼ィ、黙ってれば調子に乗りやがってふざけるな。私が一体何したって言うんだ(誘拐です)。私は会社のために汗水たらして働いていたんだ。いつもいつも残業でも耐えてきたんだ。それを何だ、いきなりクビだと、おまけに女房と子供はどこかに行ってしまうし、住んでいたアパートは追い出されるし、何で私ばかりがこんな目にあわなければならないんだ」

 錯乱して、頼んでもいない自分の過去まで話しています。ですがその少年は、大した感情も抱いた様子も無く、あっけらかんと言い放ちました。

「んなもん俺の知ったことかよ、あんたの努力が足りなかったんじゃない? あ、それよりもう警察呼んであるからもうすぐ来ると思うよ」

「警…察……嘘だ、なんで私が…そん…な……ウ、ウワァァァァ!」

 おじさんはどうやら逝っちゃったようです。それまでサツキを掴んでいた手を離し、奇声をあげながら少年へ殴りかかっていきました。すると、少年は二ヤッと笑い、突っ込んでくるおじさんの顔面に、思いっきりカウンターの右ストレートを放ちました。おじさんは、よほどそのパンチが効いたらしく、足元がおぼつきません。

「うるぁ♪」

「ウワァァァァ!」

 そこへ、少年が横から軽く蹴りを入れると、おじさんはよろよろと林に突っ込んで、そのまま気絶してしまいました。

「ダイジョブ?」

 少年は振り向くと、唖然としているサツキに微笑みながら話し掛けました。サツキはその時、その微笑みに吸い込まれるような感覚を覚えました。


 その微笑みは、今でもしっかりと皐月の目に焼き付いているそうです。


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