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……長い

「……長い」 

 俺は一人ぽつんと呟く。真宮寺兄妹が放心してから既に5分、一体いつまで放心(現実逃避?)していれば気が済むのであろうか? もう戻ろうかな、などと考えていると、

「……ハッ、ここはどこ? わたしはだあれ?」

 お兄ちゃんさんが何やら意味のわからん言葉を吐きながら現実逃避から戻ってきた。

「ここは、東京武道館だ、んであんたはそこの真宮寺皐月とか言う女の兄貴」

 ほっとこうかとも思ったが、とりあえずその問いに答えてあげた。すると、

「ちッ、ちょっとぐらい現実逃避させてくれても良いじゃねッかよ」

 お兄ちゃんさんが復活(やはり、錯乱しているフリだったか……)した。俺は、もう十分現実逃避の時間をあげたつもりだが、敢えてそこは突っ込まず、さらに厳しい現実を突きつけてやる。

「んで、同門に喧嘩売った場合の罰だけど……、「滅」と「極」、どっちが良い?」

 ちなみに「滅」は、自分の師匠から制裁を受ける罰で、「極」は、一週間の間の絶食である(「滅」は、自分の身体が滅びるかと思うくらいに痛めつけられる事からその名前が付き、「極」は、極限まで食欲と戦わされる事から来ているらしい)。現実逃避したくなるのも無理は無い。

「マジかよ……」

 お兄ちゃんさんは既に顔が真っ青である。可愛そうに、俺に喧嘩を(勘違いで)売ってこなければこんな事にならなかったものを……。とは思うが、

「マジです」

 やっぱり罪は罪、しっかり償ってもらわねば。

「んで、あんたの師匠は?」

 こういう場合、後の事は相手の師匠に任せる事になっているので、とりあえずそいつの師匠について聞いてみたものの、ここには剣道の大会で来ている訳であって、古武術の師匠なんているはず無い。慌ててさっきの質問を取り消そうと思ったら、

「ああ、師匠ならもうホテルに戻ってるはずだ」

 来てるんかいッ! と、ツッコミを入れるが、その時にお兄ちゃんさんの顔が少し安堵した表情になっていたのを俺は見逃さなかった。

「よし、んじゃあ、あんたらのホテルまで行こう」

 その言葉で、今度はお兄ちゃんさんの顔が一気に暗くなる。その顔を見て、思わず笑い出しそうな自分に対して、やっぱ俺って性根腐ってんなぁ、などと思っていると、

「ま、待って下さい」

 ようやく再起動に成功した真宮寺が叫んだ。目を向けると、涙を目一杯に溜めている真宮寺がいた。やべぇ、可愛い、などと思っていると、真宮寺が、

「お願いです、許してあげてください。悪気があった訳じゃないんです」

 と、必死に頼んでくる。まぁ悪気が無かったって言うのはわかる(ていうかコイツが勘違いしそうな状況説明したからだし)。でも一応規則は規則なのだ。そう真宮寺に言ってやると、

「そう……ですか……」

 と、無茶苦茶落ち込まれた。ここまで落ち込まれると流石の俺もちょっと同情する。大体女の涙なんて(男のもだが)あまり見たいもんじゃない。

「しゃあない、じゃあこれでどうだ。俺があんたらと一緒にそのホテルまで行ってお兄ちゃんさんの師匠に事情を話す。多少の制裁はあるだろうがなるべく恩赦してくれるよう頼んでやる。これで良いだろ?」

 俺も甘いな、などと思いつつそう提案してやると、

「ハイッ、ありがとうございます」

 と、真宮寺は心底嬉しそうにしている。

「お兄ちゃんさんもそれで良い?」

 向き直って、お兄ちゃんさんにも聞く。

「ああ、それで良い。……悪いな」

 まだ元気が無いが、少し安心したようである。それから少し話したあと、俺たちは問題の師匠の待つホテルへ向かった。


「ここだ」

「んなッ……」

 俺は驚きのあまり言葉を失った。連れて来られたのはどう見たって、所謂一つのコウキュウホテルってやつだった。

「どしたい?」

 皇紀(真宮寺の兄貴の名前、ちなみに俺とタメらしい)が不思議そうに聞いてくる。

「え、あ、いや、まじでココな訳?」

 俺にはまだ信じられない(小市民の俺がこんな高級そうなホテルを思い浮かべるはずが無い)。

「当り前だろ」

 皇紀はさも当然とでも言うかのように答える。その隣で真宮寺もウンウンと頷いている。俺はポカンとしていた。それはもう馬鹿としか言いようが無い位のアホ顔で。他人が見たら絶対指を指されて笑われるだろう(実際見られているが……)。

「ほら、入るぞ」

 そんな俺の背中を皇紀が押し、その前を真宮寺が歩いて俺たちはホテルの中に入った。中に入ると皇紀は、師匠を呼んでくると言って、どっかに行ってしまった。で、する事も無いので、真宮寺と暫くボケーッとしてると、師匠を呼びに行った皇紀が戻ってきた。

「桂、こちらが俺の師匠だ」

 どれどれ、どんな人だ? と興味津々でその人の顔を見て目が合った瞬間、俺とその人は他人の迷惑も考えず、目一杯絶叫した(シンクロしながら)。


『あーッ! あ(お)、アンタ(お前)はぁぁぁぁぁぁ!』


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