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……厄日か?

 そこにはものすごい綺麗な女の子が立っていた。歳は俺と同じ位か一個下(俺は14)。端正な顔立ちで、身長も結構高い(160cmくらい?)。言ってみれば、妖精のような感じである。

 そんなことはどうでもいいとしてだ。問題は、何故そんな女の子が明らかに場違いなこの場所にいるのか、ということである。

「あの〜」

 ふいに、その女の子はものすごいか細い声で呼びかけてきた。そこで、俺を始め、世界天然記念物(俺の中で既に決定)の人々もフリーズから開放される(この人達は今までずっと止まってた)。

「なんだ、てめえは」 

 フリーズから開放された天然記念物その一が、その女の子に怒鳴りつける。

「ひ、一人を大勢で囲むなんて卑怯だと思います」

 男の声に、少し怯んだようであったが、なんとか声を搾り出している(男の質問の答えにはなっていないが)。

「んな事てめえにゃ関係ねぇだろうが」

 男のうちの一人が、そう怒鳴りつけながら俺に背を向けその女の子の方に歩いていく。他の天然記念物その2〜5の注意もその女の子の方に向いている。チャンス、そう思った俺は、俺に背を向けた男に対して思いっきり飛び蹴りを喰らわせた。

「ぐえ」

 まったくの不意打ちにその男は、べシャッ、という効果音が良く似合いそうな形で前のめりに倒れた。女の子の方に注意が向いていたその他の男たちも、一瞬反応が遅れる。

「行くぞ」

 俺は、飛び蹴りを男に喰らわせた後、振り向きもせずにその女の子の手を取って走り出した。

「えっ、えっ」

 その女の子は動揺しながらもちゃんと走ってついてくる。

「待ちやがれ」

 と、天然記念物の皆さんが叫ぶ声が聞こえたが、もう遅い。俺とその女の子は驚異的なスピードで会場の方へ向かっていた。人間やれば何でもできるもんである。案外会場から遠くなかったので、すぐに会場の中へ入る事ができた。流石に会場の中までは追ってこず、とりあえず一息つくことができた。その女の子も俺も相当息があがっている。

「ハァ、ハァ……あ、あの……」

 ふいに、その女の子が声をかけてきた。

「阿久沢桂さんですよね」

「ハイ?」

 これまた予想外の外の攻撃に、俺は再びフリーズする。何故にこんな女の子が俺の名前を知っている?と言うよりコイツは誰だ?て言うか今日は何だ?厄日か?ショ○カーの陰謀なのか?それともザン○カール帝国の強襲か……、などと俺が訳のわからん思考ループにはまっていると、

「あの〜、阿久沢さん?」

 と、その女の子が心配そうにこっちを見ていた。

「えッ、あ、ああ」

 そこでやっと思考ループから抜け出した俺は、とりあえずこの状況を整理してみる事にした。

「よし、んじゃあ、俺がこれから多数質問をするからあんたはそれに答えてくれ。まず、あんたは誰だ? なんで俺の名前を知っている? 何でさっきあそこにいた? あんたはショ○カーの戦闘員か?」

 いきなりすぎる俺の質問に(ひとつ意味のわからんものが入っていたが)、その女の子はしばらく眼を白黒させていた。流石に答えられないかと思っていると、急に持ち直し、

「えっと、私は真宮寺皐月です。阿久沢さんの名前はさっき準々決勝に出てたから知ってます。さっきあそこにいたのは、なんか怖そうな人たちに阿久沢さんが囲まれてたからです。……ショ○カー?」

 と、全部答えてきた(流石にショ○カーはわからなかったようだが)。俺はまさか全部答えてくるなんて思っていなかったので、一瞬呆気に取られたが、なんとか平静を装って再び問い掛けた。

「え、と真宮寺さん?とりあえず俺の名前を知っていたのは納得した。だけど、あそこにいた理由が全然意味がわかんないんだけど……」

 そう、俺が囲まれていたから、なんて言うのは理由にならない。大体俺たちは見ず知らずの他人なのだから。すると、その女は、

「え? 意味がわからないってどういうことですか? 困っている人を助けるのは当然の事だと思うんですけど……」

 と、俺のこけそうな返し方をしてきた。なんて女だよ……、こいつは宇宙天然記念物に認定できる(もちろん俺の中で)。今時そんな考え方をしてるのはどっかの少年誌の王道物の主人公ぐらいだぞ、と叫んでやりたかったが、なんとか押し留めた。

「あのなぁ、あんた自分の事考えなかったわけ? あそこで逃げ出せたから良かったようなものの、逃げれなかったらどうなったかわかったもんじゃないんだぜ」

 俺は、心底あきれ返ったようにして(半ば意識的に)言った。だが、その女はまったく意に介した様子は無く、平然と、

「まぁ良いじゃないですか、助かったんですし」

 と言った後、小さく笑った。本当に妖精のような笑みだった。もともと綺麗とは思っていたが、笑うとさらに綺麗になる。そこらのアイドルなんて裸足で逃げ出すレベルだ。俺はうかつにも、そのなんとも言いがたい笑顔に思わず見ほれてしまった。

「阿久沢さん?」

 ハッと気付くと、不思議そうな顔をした真宮寺皐月がこっちを見ていた。しまった見られたか、と内心ドキドキしながらも俺は平静を装って次なる質問へと移ろうとした。が、

「お〜い、皐月〜」

 突然前方から声が聴こえてきた。見ると背の高い(180くらいか?)男がこっちに向かって手を振っていた。横に目をやると真宮寺も手を振っている。どうやら知り合いらしい。

「おい皐月、今までどこほっつき歩いてたんだ? 皆もう帰り支度できてるぞ」

 傍までやってきたその男は、俺には目もくれず真宮寺に話し掛ける。

「ゴメン、お兄ちゃん。ちょっといろいろあってね」

 真宮寺の方もそれに答える。いったい誰なんだこの男は? ……ってお兄ちゃんかよ。言われてみれば、なるほどコイツもコイツでかなり整った顔立ちしてやがる。その長身と堀の深い顔はどことなく中世の騎士を思わせる。と、俺がそんな事を考えていると、そのお兄ちゃんとやらがこっちを向いて怖い顔をしている。真宮寺が横でなにやら言っているが聞こえてないらしい。すると、今まで体をプルプル震わせてこっちを睨んでいたのが、フッと力が抜けたようにうなだれている。

「?」

 俺が不思議に思って近づいてみると、その男はいきなり、

「このド変態エロティックスケベ痴漢野郎がぁぁぁ!」

 と、ガバッと起き上がり、油断している俺に対して思いっきり殴りかかってきた。 ちくしょう、この野郎とんだ食わせ者だよ。ったく何なんだってんだ今日は?



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