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アンタ誰でぃすか〜

「パーン!」

 静寂に包まれた会場の中で、小気味の良い音が響いた。静寂が一気にざわめきへと変わる。

「面あり、勝負あり」

 審判の宣言を聞き、相手に一礼して、俺はコートの外へ引っ込み、面を取った。

「ふぅ」

 面を取った瞬間、心地よい風が頬を撫でる。しばらくその余韻に浸っていたが、その内、会場の熱気に耐えられなくなり、俺は会場の外へ移動した。



 外へ出ると、再び心地よい風が、今度は俺の体全体を通り抜けていった。いやー、この感触が気持ち良いんだよなぁ。

「あと、二回か……」

 俺は小さく呟く。俺は今、剣道の全国大会に出場するため、東京に来ていた。二回と言うのは、優勝までの試合数である。今日、個人戦のベスト4までが決まる。俺はさっきの試合で、ベスト4に残ったのだ。残りの試合は明日なので、今日はとりあえず何もする事は無い。本当ならホテルに帰るべきなのだが、付き添いの俺の道場の先生たちはまだ試合を見ているので、こうしてブラブラしているという訳だ。

「さて、どうするかな……ってうわッ」

 しばらくブラブラしていると、急に、誰かに腕を引っ張られた。

「なッ……」

 予想外のさらに外の出来事に俺が絶句していると、人気の少ない裏路地に引っ張り込まれた。この条項は……じゃなかった状況は、もしかしてピンチ?

「うわッ」

 などと考えていると、俺はいきなり、腕をつかんでいた男に突き飛ばされた。その勢いで、俺は尻餅をついてしまう。抗議してやろうと立ち上がって、その男のほうを見ると、4〜5人の男たちが立っていた。一人と思っていたが、どうやら多人数だったようである。いやぁ、中々計画的なこって。一人一人顔を見てみると、どいつもこいつも陰険そうな顔立ちで、とても友好的とは思えない視線を投げかけてくる。

「よぉ、阿久沢君。さっきはどうもありがとう」

 未だ、状況が理解できていない俺に、真ん中に立っていた男が話し掛けてきた。なんか馴れ馴れしいけど、アンタ誰でぃすか〜? ていうかその前に、コイツなんつった?

「さっき?」

 まったく意味がわからない。こんな奴等とは会ったことも無いはずだ。ん? いや待てよ、そういえばどっかで見たような気も……。そんな俺の心情を察したのか、さっきの男が親切にも事情を説明してくれた。

「さっきの試合だよ。ったくてめえに勝てば俺がベスト4だったのによぉ、どうしてくれんだよ」

 おお、そうかさっきの俺の対戦相手か。どうりで見た事あると思った。いやぁ、そうかそうか……じゃなくて、なんっだその訳の解らん言いがかりは? いや、確かにアンタを倒したのは俺だけど、今時そんなガキみたいな理由で喧嘩売ってくるか普通。武道やってんならもうちっと潔くあれよ。あー、なんか怒り通り越して呆れてきちまった……とっとと張り倒して帰るか。と、俺が思った瞬間、更に訳の解らん事が起こった。

「やめてください」

 その男たちのさらに後ろの方から、誰かの声が聞こえてきた。何だ? もしかして誰か助けに来てくれた? ラッキー、それなら早くヘルプ、み、ぃ……。一瞬、淡い希望を抱いた俺だったが、それは、その声の主を見た瞬間に、脆くも崩れ去った。世の中そんなに甘くないってね、いや、むしろしょっぱいだろ。何故かって? だって、そこに立っていたのは……物凄い綺麗な女の子だったからさー、アーハッハッハ……どぼじでそうなるの?


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