【岸田家のクリスマス】
な、なんと!総合評価10,000pt超え、お気に入り登録3,000件越えいたしました!!これもひとえに皆様のおかげでございますw
ありがとうございます(*^^*)
過ぎてしまいましたが、季節的なささやかなお礼でございますw
幼少の私は信じていた。
サンタクロースという贈り物を置いていく不法侵入者の存在を疑わなかった。
純真だったな、あの頃の私は。
一般的に正体は、両親だなんていうが、そうではなかった。
『サンタさんへ、ワニのヌイグルミがほしいです』
その時のマイブーム動物だったワニのヌイグルミを不法侵入者に当てて、書いて、母の手作りの靴下に紙を入れた。
マイブームといっても、食物連鎖ゴッコができる!という理由だけだったけど。
他の子達は信じていないというが、私は見たことがある。
両親の間に挟まれて寝ていたが、ダ●スベーダーが近くにいるようなシュコー、シュコー、という変な音が聞こえ、目が覚めた。
豆電球がついている程度の暗がりの中で母手作りの小さな靴下の中に、倍以上はあるワニのヌイグルミを懸命に突っ込んでいる赤い服の人物。
私の視線を感じたのか、振り返る。
微妙に動いている白く大きな袋、白いファー付の上下の赤い服、赤い三角の帽子、白い付け髭。
そして、ガスマスク。
「!?」
あれは見た目だけでずいぶん厳つい印象を受ける。
恐怖で怯える幼い私に、俺のことはしゃべるなよ!というように人差し指を口?のところに当てた。
頷いて私は勢いよく布団の中にもぐる。
びり!びりり!!という音が幾度か聞こえて、赤い影はゆっくりと寝室をでていった気配がした。
そこには、無理やり突っ込んだせいで、ワニが靴下という名の服を着ているような状態になっているヌイグルミがぽつんと痕跡のように残っていた。
や、やっぱりサンタクロース、いるんじゃん!
きっとフィンランドが寒いからガスマスクしてるんじゃん!
と内心、残る恐怖と、微妙な納得をして、今日のことは胸にしまっておこうと固く誓っていた。
しかし、十分もしない内に、兄の部屋から恐ろしい破壊音が聞こえた。
兄はクリスマスというものがあまり好きじゃない。
なにせ、どこの誰とも知らない奴が勝手に室内に入って物を取っていくならまだしも、自分の欲しい物を置いていくなんて、可笑しい!と言い張って、靴下だけは母が用意していたが中身に欲しいものを書いて入れることは一度もなかったらしい。
でも侵入者の存在を知らしめるプレゼントが色々入っているらしい。
ただ去年のクリスマスに、嫌がらせ半分で『マグロ』と書いたら、朝兄の部屋に靴下がヒレに刺さった冷凍マグロ(推定一メートル)が床に横たわっていたらしい。
それ以降、サンタクロースに対する不信感を物凄く募らせていた。
そして、今年、ついに不法侵入者を捕まえる!と言い出したので罠か何かをかけて、眠らずに待ち伏せすることにしたらしい。
この頃の兄は、まだ凶悪さを隠しきれずに悪魔のように笑っていた。
すぐに、兄の部屋からの音はやんだ。
両親は起きなかったようで、私はこっそりと、兄の部屋に向かった。
部屋の扉は少しだけ空いていて、何故か兄は簀巻きにされており、気絶しているのか床に転がっていた。
それを拳を高く突き上げたガスマスクをつけたサンタクロースが踏みつけている。
しばし踏みつけていたサンタクロースは、白い袋の中から巨大な蛇が――あれって、アナコンダじゃない?――が取り出された。
表面がヌルヌルで、床をうねうねと……って生きてるし!
私は迷わず兄の部屋の扉を閉めて、被害拡大を防ぐと、大慌てで両親の寝室へと戻り、二人の間で震えていた。
この事件がきっかけで、毎年クリスマスに兄がサンタクロースに報復を考えるようになり、私は密かに眠れない夜を過ごすのであった。
+ + +
「くっ!サンタめ」
「由唯姉?」
姉は、紙を握り締めて、傍らに冬用のコートを握り締めている。
子供の高級ブランドで見たことのないファー付のコートは、サンタからのプレゼントなのだろう。
デザインが大人っぽく、他のカラフルな子供用コートなどとは違う感じだ。
横から、ぐしゃぐしゃの紙を見ると、まるで誘拐犯が親に送るような新聞を切り抜いた怪文章ちっくに『お前にはまだ早い』と書かれていた。
「アルマーニの財布が!」
いや、手にしているのでも十分高価だよ姉!!
ちなみに父の靴下の中には、頑丈なGショックの腕時計が。(父は何故か身の回りのものをよく壊すのでたいてい毎年身の回りのもの)
母の靴下の中には『継続中』という怪文書ちっくなものが入っていた。
ちなみに毎年テーブルの上に、サンタへの手料理が並べられているが、必ず平らげられて、綺麗に皿が洗ってある。
どうだ!サンタクロースはいるのだ!と私は密かに思っていた。
数分後、珍しくも兄の悲鳴が家に響いた。
+ + +
ガスマスクをつけたサンタクロースが叔父だったと気がつくのは、だいぶ先の話であった。
ばれてからはこなくなった。