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ニンゲン50年

作者: 秋月心文
掲載日:2026/05/21

人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻のごとくなり。

一度生を受け、滅せぬ者のあるべきか。


幸若舞こうわかまいという芸能の演目「敦盛あつもり」の一節です。

織田信長が、好んで舞ったことで有名な言葉です。


「人間」の部分は、正しくは「ジンカン」と読むのだそうですが、

いろんなドラマで「ニンゲン50年」と表現されてきたので、

私も「ニンゲン50年」と読むのだと、ずっと思っていました。

まぁ、そういう事は、おいとして……。

 ◇ ◇ アメリカ某所 ◇ ◇


「お!、うまいな。これ……」


 アメリカの大富豪たちが、何かを食べていました……。

 それは、人肉でした。しかも、高齢者の食肉です。


 人間は、年齢を重ねていくにつれ、体が糖化していくそうです。

 それ故に、年齢を重ねると「果実のように、甘くて美味しい味」になったのだとか?


 ホントに?、いえいえ、私は知りませんよ。

 そんなの食べた事ないですから……。


 でも、大富豪たちが食べた「それ」は、とても美味しかったそうです。


 もっと食べたい……。


 美味しいものを、もっと食べたいと思うのは、自然な流れなのでしょう……。

 しかも、1度、その味を、知ってしまうと、忘れる事など、できましょうか。


 アメリカの大富豪は、アメリカ政府に強く働きかけました。

 アメリカ政府は、同盟国の日本に、強く要求しました。

 そう、丸投げです。丸投げなのです。

 日本は、これを断る事は出来ず、与党内で、静かに議論が続けられてきました。

 そう、その議論は、続けられています。

 今日も……。水面下で……。秘密裏に……。議論を続けてきました。


 そして、法案可決時には、アメリカへの亡命が、約束されていました。


 ◇ ◇ 法律制定 ◇ ◇


 日本は、少子高齢化が進んでいました。


 年金制度の維持を理由に、消費税を取ってきました。

 でも、少子高齢化は進み、消費税は、75%を超えてしまいました。

 更に、今、国会では、消費税を100%にするか……が、議論されています。


 そこに加え、前から、アメリカ政府から要望されていた案件もありました。

 政府は、腹をくくりました。


 そして「ニンゲン50年法」を成立させたのです。

 しかも、明日から、施行されるという異例のものです。


 この法律は、51歳以上の人間を、全て食肉にする事を、義務づけるものでした。

 当然、対象者の反発が、予想されます。

 だから、政府内では、スピーディに食肉化出来るよう、段取りが綿密に組まれました。


 政治家たちは説明します。


 少子高齢化は進み、もはや、年金を維持する事は出来ません。

 我々政治家も、ほとんど、51歳を超えています。

 国民の皆様だけに、押し付けているのではありません。


 こうして、与党の重鎮たちは、ハンカチで涙をぬぐいます。

 そして、この施行と同時に、消費税の全廃と、所得税の大幅減税を、行う事も、公表しました。


 若年層から、歓喜の声が聞こえてきます。

 昨今、若年層の人たちは、増税につぐ増税に苦しめられてきました。

 消費税だけでは、年金は賄えず、所得税からも大幅に担保されてきたからです。


 この説明で、一時的に、国民の溜飲を下げると、

 政府与党の重鎮たちは、内閣を解散した上で、

 その夜のうちに(法律施行前に)アメリカに亡命しました。


 ◇ ◇ 法律施行開始当日 ◇ ◇


 翌日、国会は、大混乱です。


 国会内の51歳を超える議員は、野党議員だけになりました。

 だが、法律は施行されています。


 51歳を超える議員たちは、速攻で、食肉加工されていきました。

 そして、残酷にも、その事実が報じられました。


 痛みなどは一切ないのだと……。

 議員、自らが、証明してくれたと……。

 そのように、報じられました。


 議員たちが、模範を示したのだから、国民の皆さんもよろしく……という事らしいです。


 国会内に残った議員は、1人だけになりました。

 これだけで、何をしろと?


 仕方ないので、総選挙が実施されました。


 ◇ ◇ 総選挙 ◇ ◇


 選ばれた議員の多くは、アメリカ政府のバックアップを受けていました。

 いうまでもない傀儡政権の誕生です。

 総選挙後も「ニンゲン50年法」は維持されました。


 そして、政府は、これは、「日本国民の民意」が反映された結果だと、言いました。


 ◇ ◇ 暴動 ◇ ◇


 51歳を超える国民は、即日、食肉化されました。

 速攻で、食肉化されるように、綿密な段取りが組まれていたからです。


 でも、国民の一部が、暴動を起こしました。

 暴動を起こしたのは、50歳に近い人たちです。


 新しい政治家たちは、アメリカ政府のバックアップを受けていました。

 政治家たちは、アメリカ軍の支援を要請し、暴動は、アッサリ鎮圧されました。


 こうして、日本は、年金制度を廃止し、少子高齢化も解決?しました。

 しかし……。


 ◇ ◇ 数年後 ◇ ◇


 アメリカの大富豪たちは、日本から供給された、高齢者の食肉を食べつくしてしまいました。


 しかし、糖化された食肉は、高齢者でないと得られません。

 アメリカの大富豪たちは、また、アメリカ政府に働きかけました。


 そして……。

 アメリカ政府は「移民年齢50年法」を成立させました。


 しかも、日本の事例を参考に、様々な対応が行われました。

 1.スピーディに食肉化出来るよう、段取りが綿密に組むこと。

 2.反発出来ないように、即日施行する事。


 この法律は、移民の51歳以上の人間を、全て食肉にする事を、義務づけるものです。


 施行の話を聞いて、もっとも驚いたのが、日本から亡命した議員たちでしょう。


 彼らは、施行当日、アメリカ政府からパーティに招待され、美味しい料理を食べ、上機嫌でした。

 そして、この法律は、そのパーティ中に、施行されました。

 こうして、亡命議員たちは、パーティ中に食肉になっていきました。


 ◇ ◇ 数年後 ◇ ◇


 移民の高齢者の食肉も、食べつくしてしまいました。

 アメリカの大富豪たちは、今度は、何を食べるのでしょう……。


◇ ◇ 中国某所 ◇ ◇


「お!、うまいな。これ……」


 中国の大富豪たちが、何かを食べていました……。

 それは、人肉でした。しかも、高齢者の食肉です。


 中国の大富豪は、中国政府に強く働きかけました。

 そして、政府の支援を得て、世界各地の企業を買収していきました。

 アメリカの大富豪たちの企業も、次々に買収されていきました。

 国の力で買収しているのです。普通の民間企業に対抗出来る事など出来ません。


 そして……、

 51歳を超える、アメリカの大富豪たちは、食肉になっていきました。

 彼らは、自分たちが、食べられるとは、思っていなかったのでしょう……。

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