ニンゲン50年
人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻のごとくなり。
一度生を受け、滅せぬ者のあるべきか。
幸若舞という芸能の演目「敦盛」の一節です。
織田信長が、好んで舞ったことで有名な言葉です。
「人間」の部分は、正しくは「ジンカン」と読むのだそうですが、
いろんなドラマで「ニンゲン50年」と表現されてきたので、
私も「ニンゲン50年」と読むのだと、ずっと思っていました。
まぁ、そういう事は、おいとして……。
◇ ◇ アメリカ某所 ◇ ◇
「お!、うまいな。これ……」
アメリカの大富豪たちが、何かを食べていました……。
それは、人肉でした。しかも、高齢者の食肉です。
人間は、年齢を重ねていくにつれ、体が糖化していくそうです。
それ故に、年齢を重ねると「果実のように、甘くて美味しい味」になったのだとか?
ホントに?、いえいえ、私は知りませんよ。
そんなの食べた事ないですから……。
でも、大富豪たちが食べた「それ」は、とても美味しかったそうです。
もっと食べたい……。
美味しいものを、もっと食べたいと思うのは、自然な流れなのでしょう……。
しかも、1度、その味を、知ってしまうと、忘れる事など、できましょうか。
アメリカの大富豪は、アメリカ政府に強く働きかけました。
アメリカ政府は、同盟国の日本に、強く要求しました。
そう、丸投げです。丸投げなのです。
日本は、これを断る事は出来ず、与党内で、静かに議論が続けられてきました。
そう、その議論は、続けられています。
今日も……。水面下で……。秘密裏に……。議論を続けてきました。
そして、法案可決時には、アメリカへの亡命が、約束されていました。
◇ ◇ 法律制定 ◇ ◇
日本は、少子高齢化が進んでいました。
年金制度の維持を理由に、消費税を取ってきました。
でも、少子高齢化は進み、消費税は、75%を超えてしまいました。
更に、今、国会では、消費税を100%にするか……が、議論されています。
そこに加え、前から、アメリカ政府から要望されていた案件もありました。
政府は、腹をくくりました。
そして「ニンゲン50年法」を成立させたのです。
しかも、明日から、施行されるという異例のものです。
この法律は、51歳以上の人間を、全て食肉にする事を、義務づけるものでした。
当然、対象者の反発が、予想されます。
だから、政府内では、スピーディに食肉化出来るよう、段取りが綿密に組まれました。
政治家たちは説明します。
少子高齢化は進み、もはや、年金を維持する事は出来ません。
我々政治家も、ほとんど、51歳を超えています。
国民の皆様だけに、押し付けているのではありません。
こうして、与党の重鎮たちは、ハンカチで涙をぬぐいます。
そして、この施行と同時に、消費税の全廃と、所得税の大幅減税を、行う事も、公表しました。
若年層から、歓喜の声が聞こえてきます。
昨今、若年層の人たちは、増税につぐ増税に苦しめられてきました。
消費税だけでは、年金は賄えず、所得税からも大幅に担保されてきたからです。
この説明で、一時的に、国民の溜飲を下げると、
政府与党の重鎮たちは、内閣を解散した上で、
その夜のうちに(法律施行前に)アメリカに亡命しました。
◇ ◇ 法律施行開始当日 ◇ ◇
翌日、国会は、大混乱です。
国会内の51歳を超える議員は、野党議員だけになりました。
だが、法律は施行されています。
51歳を超える議員たちは、速攻で、食肉加工されていきました。
そして、残酷にも、その事実が報じられました。
痛みなどは一切ないのだと……。
議員、自らが、証明してくれたと……。
そのように、報じられました。
議員たちが、模範を示したのだから、国民の皆さんもよろしく……という事らしいです。
国会内に残った議員は、1人だけになりました。
これだけで、何をしろと?
仕方ないので、総選挙が実施されました。
◇ ◇ 総選挙 ◇ ◇
選ばれた議員の多くは、アメリカ政府のバックアップを受けていました。
いうまでもない傀儡政権の誕生です。
総選挙後も「ニンゲン50年法」は維持されました。
そして、政府は、これは、「日本国民の民意」が反映された結果だと、言いました。
◇ ◇ 暴動 ◇ ◇
51歳を超える国民は、即日、食肉化されました。
速攻で、食肉化されるように、綿密な段取りが組まれていたからです。
でも、国民の一部が、暴動を起こしました。
暴動を起こしたのは、50歳に近い人たちです。
新しい政治家たちは、アメリカ政府のバックアップを受けていました。
政治家たちは、アメリカ軍の支援を要請し、暴動は、アッサリ鎮圧されました。
こうして、日本は、年金制度を廃止し、少子高齢化も解決?しました。
しかし……。
◇ ◇ 数年後 ◇ ◇
アメリカの大富豪たちは、日本から供給された、高齢者の食肉を食べつくしてしまいました。
しかし、糖化された食肉は、高齢者でないと得られません。
アメリカの大富豪たちは、また、アメリカ政府に働きかけました。
そして……。
アメリカ政府は「移民年齢50年法」を成立させました。
しかも、日本の事例を参考に、様々な対応が行われました。
1.スピーディに食肉化出来るよう、段取りが綿密に組むこと。
2.反発出来ないように、即日施行する事。
この法律は、移民の51歳以上の人間を、全て食肉にする事を、義務づけるものです。
施行の話を聞いて、もっとも驚いたのが、日本から亡命した議員たちでしょう。
彼らは、施行当日、アメリカ政府からパーティに招待され、美味しい料理を食べ、上機嫌でした。
そして、この法律は、そのパーティ中に、施行されました。
こうして、亡命議員たちは、パーティ中に食肉になっていきました。
◇ ◇ 数年後 ◇ ◇
移民の高齢者の食肉も、食べつくしてしまいました。
アメリカの大富豪たちは、今度は、何を食べるのでしょう……。
◇ ◇ 中国某所 ◇ ◇
「お!、うまいな。これ……」
中国の大富豪たちが、何かを食べていました……。
それは、人肉でした。しかも、高齢者の食肉です。
中国の大富豪は、中国政府に強く働きかけました。
そして、政府の支援を得て、世界各地の企業を買収していきました。
アメリカの大富豪たちの企業も、次々に買収されていきました。
国の力で買収しているのです。普通の民間企業に対抗出来る事など出来ません。
そして……、
51歳を超える、アメリカの大富豪たちは、食肉になっていきました。
彼らは、自分たちが、食べられるとは、思っていなかったのでしょう……。




