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半妖の青年は“五つの異能”で理不尽を覆す。神と悪魔の運命に挑む【SIN】  作者: 神野あさぎ
呪物

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No.82「自由化」

 の国郊外、屋敷の外。


 撃神うちがみと対峙するのは爪戯つまぎ

 撃神の背後には、鬱蒼とした木々が生い茂っている。


 敵っぽいから攻撃したけど、正直状況が分からない。

 あと右眼を即使うべきだった?


 爪戯は右眼を閉じたまま思考を巡らせる。

 傍らには小さなシャチが浮遊し、モドキからの伝言を告げていた。


 撃神が目を細める。

 次の瞬間、地面から鋭利な金属の棒が何本も突出してきた。


 この金属に捕まったらダメと……。


 爪戯はシャチの警告を反芻し、最小限の動きで回避する。


「大人しくしてくださいません? こういうことは、したくないのですけれど」


 撃神は地面に転がるかのとを金属の紐で厳重に固定した。

 そして左手で辛を指さし、静かに告げる。


「これを殺してしまいますわよ?」

「……!」


 人質をとる卑劣な宣言に、爪戯の眼が見開かれる。


 その様子を、建物の陰からなぎが窺っていた。


 何とかしたいけど……。


 凪は現状を打破する策を練る。

 そんな凪の背後に、気配を殺して近づく影があった。


「私としましても、こういう珍しい生き物は差し出したいのですが……」


 撃神は半妖である辛を、誰かへの献上品として扱いたいようだ。


「崇高? な目的ってやつ?」


 爪戯は撃神の部下、ハルが口にしていた言葉を思い出しながら問う。

 そして、


 どうするかな、これ……。


 と、打開策を模索する。


「ええ……まあ……悲しいですけれど、人々の犠牲が我々の糧になりますので」


 撃神は自身の肩に手を置き、自分自身を抱きしめるような仕草で言い放つ。


「いいえ、『()()』を手に入れた今となっては……私がこの手で悲願を達成致します」


 撃神は既に目的の物を手に入れ、屋敷の地下室に保管している。

 それが在れば悲願が叶うのだと。


「ですので」


 撃神が言葉を継ぐ。

 爪戯は強烈な能力の気配を察知した。


「此処で立ち止まっているわけには、いけませんの!!」


 撃神の全身から激しい電撃が放たれた。


 電撃も出来るのか……でもこれなら右眼で──……!


 爪戯は身構える。

 右眼の『反射』を使えば、ダメージをそのまま返せる。


 そう判断した刹那、足元の地面から金属の紐が射出された。

 足首に絡みついたその金属は一気に上方へと伸び、爪戯を吊り上げ、逆さまにする。


 爪戯の右眼は対象を視認している必要がある。

 視界が強制的に空へと向けられた。


 電撃が迫る。

 その時、頭上からヒユが右手を突き出しながら落下してきた。


 轟音。

 ヒユの一撃が地面を割り、土壁を隆起させる。


 飛び散る土砂が絶縁体となり、電撃を阻んだ。

 撃神の目が見開かれる。

 拘束の緩んだ隙に、爪戯は背中から地面へと転がった。


 土煙が舞い、視界を遮る。


 その煙の中、接近する影を撃神は捉えた。


 凪の一撃だ。

 鋭く突き出された短剣だったが、撃神はいとも容易く回避する。


「外した!!」


 凪は焦りを浮かべつつ、体勢を立て直そうとする。


「次から次へと……鬱陶しいですわね」


 凪の背を見下ろしながら、撃神が冷たく呟く。

 右手を振り下ろすと同時に、地面から無数の金属の棘が出現した。

 凪の身体が貫かれる──そう思われた瞬間、彼女の姿が掻き消える。


 モドキだ。


 『召喚喚起』の応用による空間転移。

 間一髪で凪を爪戯の元へと移動させたのだ。


 だが、撃神の照準は救助に入ったモドキへと切り替わっていた。


「!!!」


 モドキは回避行動をとる間もなく、金属の紐に身体を拘束される。

 一瞬の隙を突かれ、能力封じの呪いが込められた金属に捕らえられた。


「貴方が一番厄介そうですわね」


 撃神は右手を振り上げ、金属を操ってモドキを手元へ引き寄せる。


「また捕まったああああああああ」


 モドキが絶叫する。

 撃神は無慈悲に彼女を背後の木々へ向けて放り投げた。

 そして追撃とばかりに、地面から一本の巨大な杭を形成し、モドキの腹部を貫いた。


 凪の眼が見開かれ、冷や汗が流れる。


 次の瞬間。

 覚醒した辛が刀を形成し、撃神の背中を斬りつけた。


「!?」


 撃神が驚愕と共に振り返る。


「……」


 辛は無言のまま、冷徹な眼差しを向けている。


「何故……!」


 撃神はバックステップで距離を取りながら叫ぶ。

 背中から流れる鮮血が地面を赤く染めていく。


 金属で拘束し、そこには強力な呪いを込めていたはずだ。

 辛は意識すら保てない状態だったはず。


「私が解呪したってだけ!」


 辛の背後から、陽炎のようにアナナスが姿を現した。

 先ほどまで辛しかいなかった場所に、ゆっくりと色彩が戻る。

 これが悪魔『めおに』の能力──姿消しだ。


「……!」


 撃神が言葉を失う。


 呪い──媒介『文字』。それがアナナスの持つシンによる能力だ。

 呪いは上書きすれば無効化できる。

 姿を消し、辛へ近づき、拘束具に刻まれた呪いの上から適当な文字を書いて上書きしたのだ。


 建物の陰で凪に接触したのはアナナスだった。

 姿を消したまま凪と共に接近。

 凪が囮として攻撃を仕掛け、撃神の意識を引いている間に、アナナスは本命である辛の元へ到達していたのだ。


 ヒユは近くの爪戯へ、勝ち誇ったように告げる。


「おれ達に感謝しろ!」


 ヒユの言葉に、爪戯は目を丸くするしかない。


「まあ……これで相手は詰みだな」


 ヒユが断言する。

 爪戯と凪も、ヒユと共に追い詰められた撃神を見据えた。


「あまりやりたくはないのですが……必ず殲滅いたします」


 撃神が低い声で唸ると、地面が大きく隆起した。

 地中から、大量の太いケーブルのようなものが現れる。


「!!?」


 凪達の眼が見開かれた。

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