表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半妖の青年は“五つの異能”で理不尽を覆す。神と悪魔の運命に挑む【SIN】  作者: 神野あさぎ
羽方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/71

No.64「氷漬け」

 澄み渡る蒼穹そうきゅうを背に、妖へ騎乗し飛翔する神、レイン。

 対して、眼下の森では爆ぜた氷と土煙が視界を白濁させていた。


 氷の迎撃を全て粉砕し、矢の雨が爪戯つまぎとウミリンゴを襲う。

 万事休すかと思われた、その刹那。


 妖の足を、下から伸びた氷が捕らえた。

 浸食は速い。足先から瞬く間に凍結していく。


「何とかして撃ち落すってのは、嘘」


 爪戯は氷の壁を展開し、盾にすることで矢の直撃を防いでいた。


 距離があるため、空中の敵を直接凍らせることは不可能だ。

 だが、彼はレインによって砕かれた氷の破片を遠隔操作し、妖の足へと繋げたのだ。

 さらにその氷を伝導媒体として、能力を行使する。

 狙いは本体ではなく、その足。

 こうして、爪戯はレインの機動力を凍結させた。


 レインは巻き上がった土煙で視界を遮られ、氷が足元を侵食している事実に気づくのが遅れた。

 いや、あるいは──。


 レインは、足元を固める氷の強度に注目していた。

 強度変化も出来るのか、と。

 放たれた氷の礫は砕けやすい密度に。

 防御に用いる氷の盾は強固に。


 レインは、口元に薄い笑みを浮かべた。


「だから何って感じだけど」


 彼は氷漬けにされていく妖を、何ら躊躇いもなく乗り捨てた。

 空中に身を投げる。


 落下する──爪戯とウミリンゴは目を見開く。


 しかし、レインは落ちない。

 重力に逆らうように、中空に留まっている。


 まるで、空気中の水分を踏み固め、見えざる足場としているかのように。


 機動力は落ちるが、ボクの役目を果たすには十分。

 まあ、そんなに移動する必要がないんだけど。

 レインは冷徹に戦況を俯瞰していた。


 物理法則を無視して浮遊するレインを見て、ウミリンゴの頬を冷や汗が伝う。


「氷の強度は、なかなかあるんだっけ?」


 レインは確認するように言った。

 純度の高い氷の密度は、鋼鉄にも匹敵する硬度を持つ。


「さらに火力を上げようか」


 レインは手にしていた弓を霧散させた。

 代わって、その手から新たに別の質量が形成されていく。


「頑張って防いでみてよ」


 現れたのは、巨大な黒いいしゆみ

 攻城兵器のごとき威圧感を放つそれが、二人へと向けられる。


 爪戯の眼が驚愕に丸くなった。


 高速で思考する。

 どうする、あいつの後ろにある氷を利用して……でも同じ手が通じるのか?

 しかし、今の相手の状態なら機動力はないはずだ。


 思考の隙間を縫うように、巨大な弩から矢が放たれる。

 その初速は、先程の比ではない。


 爪戯は即座に氷の壁を形成し、盾とする。

 だが。


 氷壁は、たった一撃で粉砕された。


「……!!」


 破片と共に矢が掠め、爪戯の肩が弾ける。

 血が滲んだ。


「まだまだ行くよ」


 レインの無慈悲な宣告に、爪戯は死を幻視する。

 防ぎきれない。


 その時。

 地を蹴る重い足音が響いた。


 爪戯とウミリンゴの前に、影が割り込む。

 かのとだ。

 彼は右手をかざし、瞬時に金属生成で多重の盾を形成する。


 轟音。

 速度と火力が桁違いに跳ね上がった矢を、金属の壁が受け止めた。


()()()()()()


 上空で静止しているレインは、冷静に呟く。

 周囲の木々は衝撃波で破壊され、土煙が舞い上がっていた。


「辛!? でも、なんで此処に!?」


 爪戯は辛の介入に驚きの声を上げる。


「お前は……」


 辛は表情を変えず、振り向くこともなく上空を睨みつけた。


「どうも」


 レインの軽い返し。


「久しぶりだね」


 辛の弟・ひのとを攫った実行犯の一人。それが、目の前のレインだ。

 久しぶりと言う言葉は、丁を攫って以来の再会であることを意味している。


 レインは弩を辛へ向け、間髪入れずに矢を連射した。

 応戦する辛は、さらに金属生成を発動させる。

 展開された金属の盾が、火花を散らして矢を防ぎ切る。


「このままじゃ防戦一方、どうする? あいつの機動力源の妖は封じたけど」


 背後で爪戯が言った。


 妖は氷漬けにされ、地上で身動きが取れなくなっている。

 あとは空に浮くレインをどうにかするだけだ。


 けれど、上空に陣取る相手にどう攻撃を届かせるか。

 雨のように降り注ぐ矢も防がなければいけない。


「出力が落ちていなければ……シュンランや他の鬼たちの仇もとれるのに」


 ウミリンゴは俯き、唇を噛み締める。

 その悔恨の様子を、辛は冷静な横顔で見つめていた。


 ◇


 一方で、なぎ

 彼女は辛たちの速度についていけず、完全に独り取り残されていた。


「辛君、何処~? 置いていかないで~」


 凪は涙目で森に向かって叫んだ。

 しかし、返ってくるのは自身の反響だけだ。


 木々がざわめく。

 風が、ひどく騒がしい。


「騒がしいから近くで戦いでも起きてる? 辛君もそこへ?」


 凪は辺りを見渡し、轟音のする方角へと視線を向ける。


「音のする方へ行くしかないか……」


 覚悟を決めて歩き始める。

 その時。


 背後の茂みで、何かが動く気配がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ