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半妖の青年は“五つの異能”で理不尽を覆す。神と悪魔の運命に挑む【SIN】  作者: 神野あさぎ
襲撃

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No.42「金属粉」

 疑問、何故。真白ましろ一人留守。姉上、海外留学、何故。


 幼い頃、仲の良かった姉は真白ましろを置いて外国に行くことになった。寂しさに、真白ましろは何度も姉に問いを繰り返した。


「ごめんね、真白ましろ。おねえちゃんもっと音楽のこと学びたくて」


 姉はとても優しかった。あの時だって、困らせる妹に怒ったりもせず真白ましろが落ち着くまでずっと構ってくれていた。


「コレ……一つ真白ましろに預けるね。大切に持ってて」


 そう言って、姉はいつも前髪を留めるのにつけていた二つの花のような髪飾りのうちの一つをとり、真白ましろの髪につけてくれた。飾り気のなかった髪が華やいで、自分も少しお姉さんになれたような気持ちになった。


「大丈夫、消えてなくなる訳じゃないから。少しの間遠くの国に行くだけ。それにたまには帰ってくるから」


 そう言って姉に優しく頭を撫でられると、ちょっとだけ寂しさが紛れたのを覚えている。早く帰って来ないかなあと指折り数えた日々のことも、ずっとずっと覚えている。

 でも。帰ってきたときには、遠くへ行ってしまっていた。

 約束したのに。姉は、物言わぬ遺体となって帰国した。


 ◇


「絶対殺害! 殺処分!」


 真白ましろは憎しみを込めてシロホンに次々と攻撃を繰り出した。普通ならとっくに死んでいてもおかしくないほどの攻撃を浴びせてもまだ気が済まない。

 激しく動く真白ましろの短い髪は揺れ、姉にもらった髪留めは攻撃を出すたびに光に照らされた。

 姉の死後、調査の末に判明したのは、姉は目の前にいるこの悪魔に殺されたという事実。許せるはずがない。殺害、殺害、殺害。真白ましろは叫びながら光線を当て続けた。

 辺りは悪魔のまき散らす血で窓も壁も床も汚れている。それなのに、奴が倒れたという手応えが無い。


「あのなー、頭撃ち抜かれたのに生きてる時点で……分かるだろ?」


 連続攻撃に息が切れて攻撃が緩まった頃。ふと見ると絶対に何度も攻撃が直撃したはずなのに、悪魔の身体は血がついているだけで、傷が一つもついていなかった。

 驚愕に目を見開く間に、悪魔の蹴りが真白ましろのこめかみに強烈にあたり、真白ましろは崩れ落ちて意識を失った。


 シロホンは大人しくなった真白ましろを見下ろし、その顔をじっと見つめた。

 一瞬、あいつかと思ってしまった。似ているが違う。そもそも生きているはずがないのだ。

 シロホンの脳裏には昔の記憶がぼんやりと浮かんでいた。髪の長い、懐かしい女が、口から血を流して倒れていったあの日のことが。


 ◇


 あやかしが触ることのできない結界の中、かのとが対峙したのはかつての同僚だった。


「……すい


 すいに斬られた左腕からは血が垂れていた。かのとは腕を押さえ、すいから距離をとった。


「俺ら軍の任務の一つにあやかし退治がある──……まさかそんな俺たちの中にあやかしが混ざっているとはね」


 すいは怒りのこもった目でかのとを見つめ、再び刀を構えた。


「俺達を騙して楽しんでいたのか?」

「……」


 かのとすいの言葉に、何も反論しなかった。


「……一年くらい前にお前だけが生還したあの時──……本当はお前が皆を殺したんじゃないのか? 自分の正体がバレて口封じに──……」


 かのとは下を向き、言葉にならない声で何かを言ったが、すいには何も届いていなかった。仲間の死について深刻な顔をしているかのととは裏腹に、本当はすいは別のことを考えていた。

 仲間の死因が彼にあるかどうかなど、すいにとっては些末な問題だった。それは単なる大義名分に過ぎない。どの道、あやかしは殺す。結論はそれだけで十分だった。


 すいは刀についたかのとの血を払い落した。

 そしてすぐに終わらせて真白ましろさんのところへ行く。褒めてもらう。褒めてくれるか分からんが、あやかし退治終わったら次は悪魔退治だ。真白ましろさんの役に立ってみせる。

 真白ましろのことを思うと、すいはつい気分が浮かれてしまう。


 かのとすい真白ましろのことで頭をいっぱいにしている隙をついて、能力で作った刃を投げつけた。


「くらうかよ!」


 攻撃に対して、すいは緩んだ頬をさっと戻し刀でそれを弾いた。そしてすぐに腰をかがめて間合いを詰め、刀を大きく振った。

 刃物同士が弾き合う硬質な音が響く。すいの刃はかのとの身体には届かず、かのとが手に持っていた短剣が砕けた。

 金属を生成して防御したか、とすいは冷静に分析する。

 かのとは壊れてしまった短剣を手から離すと、金属はさらさらと粉状に形を変えた。すいかのとのこの動きに見覚えがあった。

 生成した金属を粉状へ戻し、散布した金属粉を媒介にして、再生成するつもりだ。


「型弐 小繭蜂こまゆばち──……!」


 すいの経験からくる読みは当たっていた。散らばった金属粉はすいの身体の周りで先の尖った長い刃に形状を変え、一斉にすいに襲い掛かった。

 しかし、すいかのとの狙った位置から素早く身をかわし、かのとの真上に大きく跳んだ。


「粉末状態を避けるのは難しい……が、再生成時と金属が身体を貫くまでの僅かな時間、それだけあれば十分避けられる!」


 すいかのとの肩から胸、腰にかけて大きく斜めに刀を振り下ろした。すいの動きを予測できなかったかのとは攻撃をまともにくらい、上半身から血を噴き出した。


「お前の能力は良く知っている。同じ組織に居たんだからな!」


 かのとに深手を負わせたことで、すいは内心勝ちを確信した。

 すいの能力「呪い──媒介:札」の効果で結界を貼ってあるから、奴は部屋から出られない上に、結界の媒介の札には触れられないように施してある。札に手を出せない以上、結界を突破できない。逃げ場はない。

 すいは上段霞の構えで最後のトドメを刺すべく、鋭い目つきで集中を高めた。

 するとかのとは、今度は部屋全体が見えなくなるほどの量の金属粉をまき散らした。


「!?」


 すいは咄嗟に顔を庇い、構えが崩れた。

 金属の粉。しかも大量だ。また身体の周りに着いた粉を利用して身体を貫く気か。

 初めて見る状況に、すいは次の手が予想できずどう立ち回るか、動きに戸惑いが生じた。

 しかしこの量、部屋全体に針でも生成する気か。それなら生成時に避け続けるだけだ。


「オレも……お前の能力を知っている」


 粉煙の向こう側から、かのとすいに声をかけた。


「呪いの能力で身体強化しているお前でも、流石に痛いと思うが我慢くらいしろよ?」


 そう言って、かのとは能力を使って小さな火を生み出した。

 次の瞬間、火は部屋中を充満する大量の金属粉に着火し、花火のように光を散らしながら大きな火柱をあげて爆発した。

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