魅力
この度は企画にお声かけありがとうございます!
人気迷走期中のお話を描きました。セカンドブレイクを果たす前です。
この記事で紹介されいる役者さんのイラストを作品に挿入していただいて、作品を書いて貰うというものになりますm(_ _)m
役者さんはそのまま使って貰ってもいい、なにかしらのキャラクターの役をやって貰ってもOKとの事なのでそのまま使わせて貰いました!
よろしくお願いします。
ーーもう一度、見たい世界があるの。
一度見た世界というのは、もう一度見ようとするとなかなか見られない。
私は一度、アイドルとして世間に花咲いた……そして、世界一に上り詰めたと思ったらすぐに人気は落ちてしまい、今ではマネージャーもつけずに一人で芸能活動をしている。
街を歩けばたまに私、綺羅 めくるの悪口が聞こえてくる。それが一般人での綺羅めくるの評価なのだから仕方がない。
そう割り切って知らんぷりしながら通り過ぎる日々。
ニット帽を深く被り、アイドルの綺羅めくるだと気付かれないように猫背になり下を向く。
通り過ぎる人の白い息が寒さを物語、もう冬で世間ではクリスマスへ向けて賑わっていた。
……もう、そんな季節なのね。
なんて、店前のクリスマスツリーやサンタのコスプレをした店員を見ながら思った。
人気が落ちた私は徐々に仕事が減り、色んな意味で忙しい。
そんな日々を続けるとあっという間に季節は過ぎる。
もう、十二月……今年が終わろうとしていた。
私は溜息をする。
人気アイドルだった頃は充実していた。休む暇なく活動していた。
あの頃は本当に良かった……なんて、後悔しても仕方ないのは理解している。
けど、ふと思う。過去を思い出し、後悔して……あの頃の選択が間違っていたのかどうか。どうしても考えてしまう。
今は駆けずり回ってもなかなか仕事が貰えない。番組に呼ばれる事も無ければ、オーディションでも落ちまくる。
やっと舞い降りた仕事は、映画の序盤での通行人Aの役だ。
台詞が一言あるだけでも助かる。場合に寄っては台詞は無し、通行人ではなくただ立ち尽くしてるだけの役もやらされた時があった。
ここで勘違いしないでほしい。私は、通行人の役が嫌なのではない。
脇役だろうが、全力でやりたいと思っている(但し濡れ場はNG)
主にエキストラの仕事が私に回ってきたとしても主役を寄り輝かせるようにしていきたいと思う。
アイドルだから目立ちたいとか、そんな感情は無くて……私は私自身のアイドルとしての誇りを大切にしたい。だからこそ、生半端な覚悟で仕事をやりたくない。
主役じゃないからって下手な演技をする方が監督に失礼だし、他の方にも迷惑をかけてしまうもの。
どんな役だってこなしてみせるわ。だって私は綺羅めくるよ。一度は人気アイドルまで輝いていたもの。
私は意気込む。もう一度、輝いていた世界を見るのを夢見て。
そして今は、通行人Aの役作りの為に街中に来ていた。
通行人を観察する為に。
ただ、じっと見てると怪しまれるから時々携帯を弄ったりちょっとした動きを加える。
そうじゃなくても、私の今の格好は身バレしないようにニット帽やマスク、サングラスで顔をなるべく隠している。最も、人によっては怪しい人だと思われるけど。
私は壁に寄りかかり、携帯を眺めながらも通行人を見る。
歩き方はその人の性格が出てると私は思う。
大幅で歩く人は短気でせっかちな人。
小幅で歩く人は優柔不断な人。
ガニ股で歩くのはプライドが高い人。
背筋を伸ばして姿勢が綺麗な人は自己肯定感が高くて、逆に猫背の人は自己主張が苦手な人。
歩き方を見ながらもどう歩こう。手の動きはどうしよう。姿勢はどうしたらいいのだろう。声のトーンも性格に合わせた方がいいのかも知れない。
そんな事を考えていると、嫌な事を思い出してしまった。
通行人をどう演技しようか悩んでてボソッと呟いた時に聞いていたのであろうエキストラの子に言われた事を。
『たかが通行人。歩いて終わり、そんなにこだわることは無い。今でも人気アイドルのつもり? 古いんだけど。主役じゃないのに必死になっちゃって、綺羅めくるも落ちぶれたものね』と、鼻で笑われてしまった。
でも私はそうは思わない。目立つ存在じゃなくても通行人には通行人の魅力があると思うのよ。
なんて、前向きに答えを見つけてるものの、きっとそのエキストラの子は私の粗探しをして叩くのが目的だと思う。
前に他の子と私の悪口を言ってるのをたまたま聞いてしまった……いや、多分あれはワザと。私に聞こえるように言っていた。
後から知った事だけど、私の事は人気当初から大嫌いだったんだとか。
人気当初から些細な嫌がらせはされてきた方だけど、自分の気持ちが追い込められてる時に言われると……精神的に来るものがある。
だからといって、今の活動を止めないし、私は私の思った事を行動に移してるだけだもの。
小馬鹿にしてくる人達には絶対に負けたくなんかないんだから。
苦い過去の数々を振り返ってしまい、ギュッと唇を噛み締める。
「……めくるちゃん??」
突然話し掛けられ、その人物を見た。
「蒼月さん」
帽子を深く被っているショートヘアの女性は、蒼月しずく。
私が通行人として出る映画の主役をやる人物。
「誰かと待ち合わせ?」
「いえ、そういう訳では……蒼月さんこそ、どうしたんですか?」
「近くでロケがあってね。今は休憩中なんだ」
「そうなんですね」
「あっ、これからちょっと私に付き合ってくれないかな? 用事が無かったらなんだけど」
私はサングラスを掛け直し、よそよそしく受け答えしていると蒼月さんは考え込んでから、私に提案してきた。
何気なく返事をすると、蒼月さんは嬉しそうに目を細め笑った。
◇
蒼月しずくさんとは良くドラマでの共演していたけど、それは私が主役だったりメインキャラだったりと、人気だった頃の話。
今回、私はエキストラとして参加する訳なのだが……蒼月さん的にはどうだろう。どう思ったのだろう。
……私は、役作りや演技のアドバイスを沢山してくれた蒼月さんに感謝しているのと同時に罪悪感がある。
だってそうじゃない。可愛がってくれていたのに……。
私の人気が落ち、ドラマ出演のオファーも減り、他のレギュラー番組からも下ろされて。
勿論、メインはアイドルだけど……今もそれは変わらない。けど、やっぱり思うところはある。
「んぅ~~、美味しい」
テーブルを挟んだ向かい側の椅子に座っている蒼月さんは注文したパンケーキを美味しそうに頬張っている。
「ここのパンケーキ、ずっと食べたいと思ってたんだよね。付き合ってくれてありがとうね」
「はい」
蒼月さんに連れられて入ったお店はパンケーキが人気らしい。
全席が個室になっているので、周りの目を気にしないで済むと思うと少しだけ安心した。
蒼月さんの狙いはパンケーキだったらしく、メニュー表を見ながら目を輝かせていた。
店員に注文を終え、パンケーキが来るまでの間、他愛ない話をした。
最近の流行りとか、そんなことだ。
◇
蒼月さんはパンケーキを美味しそうに食べてる。
「あっ、ごめんね。ここのパンケーキ、美味しいのよ!」
さぁ食べてみて、と言うように勧めてくる。
私はマスクを外しマスクケースにしまうとテーブルに置き、手前のフォークを持つ。
パンケーキはスフレみたいにふわふわしていて、粉糖がかけられている。
その上にバニラアイスが添えられ、ブルーベリーソースがかけられてある。
私は、一口サイズにフォークで切ってみる。見た目通りふわふわしていて、食べてみると温かいパンケーキと冷たいバニラアイスが咀嚼する度に口の中で混じり合う。
甘さ控えめなパンケーキに甘いアイスとさらに甘酸っぱいブルーベリーソースが合わさると、幸せな気分になるほど美味しい。
実際に思っているよりも美味しくて、驚きつつも絶品すぎて思わず笑みがこぼれる。
「美味しいでしょ。悩んだ時はやっぱり甘いものよね。癒される」
私の食べてる所を見ていた蒼月さんはフフっと笑うと、パンケーキとセットで注文した温かいダージリンティーを飲む。
蒼月さんは息を吐くと、ダージリンティーをテーブルに置く。ガシャンっとティーカップとソーサーが軽くぶつかり音を立てる。
「役作りは順調?」
「えぇ、まぁ」
「悪い噂もあるから、心配してたの。なかなかゆっくりと話せなかったから……、この機会を絶対に逃したくないと思って」
「蒼月さんは、どうして人気が落ちた私を気にかけてくれるんですか。私と一緒にいたら蒼月さんまで悪く言われます」
「言わせておけばいいのよ。私は、めくるちゃんと話したい。悩みがあったら聞いてあげたい。それだけよ。それに……めくるちゃんは何も悪いことしてないじゃない。私、知ってるんだよ。アイドルとして人気になってももっと高みを目指して歌やダンスの練習を必死にしてたり、ファンを喜ばせようと考えていたり、バラエティーの時なんて、共演者に気を使ったり、相手を思いやった言葉の言い回しをしてたり……ドラマとかでは、私やベテランの役者に演技を色々と教わってこっそりと練習していたり」
「な、なんでそれ!!!?」
私自身、必死になっていることがカッコ悪くて表には出さないようにしていたから、気付いている人がいて驚いた。
驚きすぎてパンケーキを食べる手を止めてしまった。
「わかるわよ。だって、めくるちゃん頑張ってるんだから。それにしても、残念よね。こんなに努力家で頑張り屋なめくるちゃんの良さを分からずに粗探しばかりしてる人達は……勿体ないことしてるわよね」
私は恥ずかしくなって下を向いた。褒め言葉を慣れていないのもあってその褒め言葉を否定してしまいそうになる。
「……だからね、今回はアシスタントとして共演するけど、またいつの日か主演として同じ舞台に立ちたいと思ってる。応援、してるのよ?」
私は蒼月さんが続けて話した言葉で恥ずかしさと戦いながらも上を向き、蒼月さんを見る。
真剣な顔立ちで話していて、最後の言葉を終えるとニコッと笑う。
私は口篭ってしまった。上手く、言葉が出てこなかった。
そんな事を思ってくれたなんて知らなかったから。はじめての本音を聞けて驚いてしまったから。
動揺している私を見た蒼月さんは息を吐き、話を変えてきた。
優しさと気遣いに心を痛めた。
◇
商店街での撮影は、色んな人に迷惑かかってしまう為、事前に許可を得ての撮影になる。
シャッター商店街でも良かったらしいのだが、作品に合った場所が見つからなかったらしい。
私の役は通行人Aの役。商店街をただひたすらに歩いて昔ながらの古めかしいカフェに目を奪われてボソッと呟くまでが私の出番。
本当に僅かな時間しかない。それでも、私が役に選ばれたのだから全力でやらないと。
いつもは髪の毛をひとつにまとめ、サイドに結ぶのだが、今回は下ろしている。
トップスは白で肩出し。紺色のマーメイドラインのスカート。黒タイツに黒ブーツを履き、トレンチコートを羽織る。メイクはオレンジ中心で濃すぎないように意識した。
ナチュラルメイクだ。主役では無いし、特にメイクの指定は無かったので薄めにしてある。エキストラなので顔は映るか分からないけど、身だしなみには気をつけていたい。
「本番入ります!」
声が入る。
さっきまで騒がしがった現場には静寂が包まれる。
蒼月しずくさんにカメラを向けられる。
役として、切り替えた蒼月しずくさんは目の色を変え、シナリオ通りに動き、時にはアドリブを交えて言葉を紡いでいる。
蒼月さんは若い頃は清楚系を演じていたが、三十過ぎてからは気が強い女性を演じるようになった。その演技には、深い愛情や母性を思わせる。
それが、蒼月しずくさんの魅力だ。
私は、そんな蒼月さんを尊敬するし、人としても芸能人としても好き。
勘違いはしてほしくないから一応言うけど、私はアイドルとしてトップを目指している。ただ、アイドルは歌って踊れるだけがアイドルではないと思う。
人気になればなるほど、色んなものを求められる。演技もその一つ。
私はゆっくりと歩き出す。エキストラである私の立ち位置は決してカメラに映らないかもしれない。
それでも、私は私の役を精一杯やるだけだ。
ーーまたいつの日か主演として同じ舞台に立ちたいと思ってる。
蒼月さんの言葉を思い出す。あの時の返事をまだ私は伝えてない。
私も……私もまたいつか、蒼月さんと共演したい。
その言葉はいつ言えるだろう。きっと今のままじゃ綺麗事になってしまう。
豪語するのならば……蒼月さんに言えるぐらいに、
恥ずかしくないように……。
シナリオ通りに私は立ち止まりたった一言「このお店、懐かしい」と呟いた。その声は久しぶりに立ち寄ってまだ閉店してなかった喜びと懐かしさ、更に思い出も思い浮かべるような声で発した。
聞こえてるか、伝わっているのか分からないけど、蒼月さんへの返事も込めてみた。
これが今の精一杯。だって、私のプライドが許さないんだもの。
結果がついてきてない現状で面と向かってなんて、とてもじゃないが恥ずかしくて言えない。
スっとすれ違った蒼月さんは少しだけ笑っているように見えた。
OKの合図が入るのだった。
エキストラから俳優になる人もいるので、そこから監督さんに気付いてもらえて主演を果たす……なんて、そんな展開もあってもおかしくないのかなと思ってたり(*´`)
その後、アイドルとしても再び人気になるきっかけになったり。なんて、色々と妄想してしまいました。
上手くキャラクターの魅力を出せてるか分かりませんが、楽しく書かせて頂きました。
本当にありがとうございます。




