駿河へ3
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辰五郎の一家は、江戸にある。その江戸の中でも大きな一家。街でも評判が良く、街の人たちに頼りにされる、また、幕府とも繋がりのある大侠客だ。
気になると気になりだして、特に理由も無いがお時は一家を訪ねた。
大勢の子分がそれぞれ何やら忙しそうにしている。その中にいた1人がお時に気づき、声をかけた。
「お時さんお久しぶりです。今日は何か?」
「別にこれといった用事はないのですが、少し気になる事がありまして、親分にお尋ねしたくて来たのですが、親分はご在宅ですか?」
「はい。中に居ますよ。ちょっとお待ちになっていてくださいね。」
と言うと、奥へと向かった。お時は手前で下を向いて待っていた。しばらくすると、中から一家のダイガシがでてきてお時を中へと案内してくれた。
奥に客間があり、そこに辰五郎が座っている。
「久しぶりだねえ、お時さん、今日はどうしたんだい?」
と、辰五郎が言った。
「こんな事を聞くのもどうかと思うのですが、鎌太郎の親分のことなんです。」
「鎌太郎かい?」
「はい。鎌太郎の親分はいまどうしてるかと思って。」
「なんの便りもないから元気にしているんじゃないかい?」
「いや、そのう、好きな人とちゃんと夫婦になったかなぁとちょっと気になりまして。」
「好きな人?」
「はい。」
「好きな人!?どういうこと?それ。」
「もう時が経つので話しますけど、実は、」
「お時さん!それを言うなら俺も親分に言わなくちゃいけない事がある。」
「どういう事?2人して、何があるっていうんだ?」
ダイガシが、「親分すみません。実は、親分がカゴを呼んで鎌太郎親分の一家に向かったあと、鎌太郎親分が来たんです。その時言おうとした話を俺がかき消しました。」
「何を言おうとしたか、だいたいわかるわ。で、お時さんはどこかでその話を耳にして縁談話を断ったって訳か。なるほど。」
辰五郎親分は勘がいい。
「ダイガシの気持ちもわかる。こりゃあ、大変だ。」
辰五郎親分は人の気持ちもよくわかる。
「お時さんには悪い事をしてしまったなぁ。ダイガシの気持ちもわかるし鎌太郎も辛かったろうて。俺がなんとかしてやらないといけねえな。」
「親分、もうあとの祭りかもわかりません。」
「でも何かしてやりたいじゃないか。って人の心配してる場合じゃないでしょ、お時さん!あんた、このままだと1人だよ。」
「いや、私はいいんです。」
「いやいやいやいや、いけないよ、あんた!ちょっと頑張りなさいよ。老けるよ!頑張らないと老けるんだから!」
「親分、失礼ですよ。年には勝てません!」
「ダイガシさんの方がなんかすごく傷つく」
「ダイガシよ、お前、責任とってなんとかして鎌太郎と、その相手のお嬢さんをくっ付けてこい!」
「えーーー。」
「くっつけられなかったその時は腹切れ!」
「えーーーーー!」
「ウソ!その覚悟で行ってこい!ついでにお時さんも行ってらっしゃい!旅にでも出て気分転換してきなさい。」
ダイガシとお時さんは辰五郎親分の、命令で、鎌太郎の縁談をまとめる為、旅にでることになったのだった。
4へ続く