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夢から覚める。  作者: 冬目投石
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帰還

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とある一軒家の玄関。


丁寧に揃えられた靴。


通ぶって買ったであろう、高級なワックス


結局置く場所がなくなり、廊下の隅に寂しく鎮座している。


くつばきや靴用のブラシがかかった下駄箱。


ドアには「鍵かけた?」という張り紙。剥がれかけるたびに家の住人から修正される幸せ者な、ドアだ。


そんなドアが音を立てて開く。


入ってくるのは少年。


玄関からすれば見慣れた光景だ。そしてこの少年も玄関にとっては同居人のような存在。


玄関は少年と少年の家族と生まれてからというもの、ずっと一緒に過ごしてきた。


故に玄関は、制服や背広姿で出掛けていく彼らの軽快時に重苦しさを感じさせる口調の「いってきます」


「ただいま」を聞くうちにこの家での彼らの立ち位置を把握し始める。その立ち位置を理解したが故に感じる心の重み。


罪悪感と言おうか。同情と言おうか。


玄関がそれらを感じるのは極稀なことだったのだが、だいぶ前からそれを感じていると、毎日思い出せるほど感じる時期があった。その直後だ

ろうか、「いってきます」を言い放つ二つの制服姿のうち一つの制服姿を見ることがパッタリとなくなった。


玄関はそんな状況から、家庭のただならぬ雰囲気を感じとるのだった。






「ただいま」いつも通りの光景。ドアを開けえた時に差し込む光が、玄関の床に造る影も昨日と一緒。


唯一違う点があるとすれば、靴が脱ぎ置かれている安山岩のスペースに無造作に脱ぎ捨てられたADIDASの白い靴。


見覚えがあるが、もう見慣れない。


この靴の持ち主を知っている。兄だ。


石原春だ。




自分より一才年上の兄は頭脳明晰で手先が器用で多方面に知識が豊富で極め付けには、容姿端麗という誰もが嫉妬するような人

物だった。通っていた名門高校でも兄の名を知らない生徒や教員はいなかったから、弟であり、後輩でもある僕は誇らしかった。


そんな充実した毎日の中でことは起きた。


兄が校長室の金庫から、六十万円相当の金を盗んだのだ。  まさに突然のことだった。 何も兆しはなかったのに。


ことを聞きつけた教員連中は掌返して兄を叩き始めた。


校長は警察を介入させ兄に責任をとるように迫った。


しかし当の兄は金をすでに使ったと言って、校長の堪忍袋の緒を切った。


校長は兄を退学処分にしたが、兄が優秀だっただけに落胆した両親の精神状態を鑑みて賠償金は免除したが、結局兄は前科者となってしまい、

父親から勘当され家を追い出されてしまった。


こうしてこの事件は、有る事無い事が玉石混合したまま、一応解決ということになった。


そしてこれは一年前の話。


僕に言わせてみれば彼は優しいお兄ちゃんだ。科学に秀でた兄は「全自動宿題完成器」や「バレーボールで活躍できる血清」を僕のために作ってくれたり、二人で楽しい時間を過ごした。


お金を盗んだのだって何か理由があるはずだ。


そんな兄の靴が、勘当されている実家にあるということはこの家どこかに兄がいるはずだ。


挨拶ぐらいしようと思って先ず、兄のものが置いてあるガレージへ行くことにした。

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