八十九話『まとめて同時に』
木のかげに身を隠し戦況を伺うケンジ。くそっ!サイクロプスってだけでも珍しい魔物なのに、あのサイクロプスは【旋風】の魔法を全身に纏っているじゃないか!
魔物が魔法を使うなんて事あるのか?!いやそんな事より、吹き飛ばされたテイトさんは無事か?!テイトさんは必死に戦っているってのに!ボクにも何か手伝える事はないのかよ…!
抑えめ抑えめで…。パチパチと音を立てながらテイトのツノにエネルギーが集まる。島での出来事を振り返り、威力は抑えめで。迫るサイクロプスの大きな一つ目に狙いを定める。遠過ぎると避けられるかも知れないので、ギリギリまでガマン。
地面から伝わる振動が大きくなる。…まだだ、まだガマン。サイクロプスが纏った風を受け、テイトの身体が浮き上がってしまいそうになる。両足の指先にぐっと力を込め風圧に抗う。テイトを押し潰そうと向け振り上げられる青い拳!今だ。
「いけ…」
指を弾いた…
…五階層のハラダ。あまりの驚きに盾を構えるのも忘れ、はるか上方を見上げる。苦笑い。
「はは、これは…悪い夢か?」
アルフ達と対峙するその魔物。辺りに不快な腐敗臭を漂わせ、ゆっくりと頭を持ち上げた。まるで生気の感じられない瞳。
身体中に無数に突き刺さった剣。魔物が動くのと連動するように、傷口からドロドロしたドス黒い紫色の液体がしたたり落ちる。多分毒。
ワンツが嬉しそうに笑いながら拍手。少年のようにキラキラした瞳で、その魔物を見つめる。
「良いねえ…良いねえ!」
「異国で討伐された巨竜で、何かの実験に使えそうだったからパクっておいたが」
「お前なら操れると思ったよ!」
そう言われたネクロマンサーは何も言わない。特に気にした様子のないワンツは続ける。
「名前は…"ドラゴンゾンビ"ってところか」
「よし、ネクロマンサー」
「殺れ」
アルフとトルトスが相談。
「カメ、やれそうか?」
「いいや、なかなか厳しそうじゃ」
「水の輪を広げ過ぎると効果が薄まるからの」
「あの巨竜は大き過ぎて、ワシの【洗浄】では囲い切れそうに有りません」
「そうか…ヤベェかもな」
ワンツとヒイラがその場から退避。ネクロマンサーがドラゴンゾンビの背中に瞬間移動した後、杖を振り下ろした。指示を受けたドラゴンゾンビが天を仰ぎ、大きく息を吸い込む。
「!」
「来るぞ!アタシのそばに寄れっ!」
肺の辺りが膨らむ。翼を大きく広げながら、そのままゆっくりと下を向いたかと思うと、ドス黒紫色で煙状のブレスを床に向けて放った。床を伝ってアルフ達の方にもモクモクと広がる。
「【完璧】!」
防壁によって守られた三人。辺りに転がっていたオーガの肉片は毒煙のブレスに飲み込まれ、見えなくなった。それを見たアルフ。
「…とりあえず"ああやってなる"のは防げたが」
「あのデケェ身体で踏み潰されたら、この【完璧】もいつまで耐えられるか」
辺りに充満する毒煙。ドラゴンゾンビがのそのそとアルフ達に近付いて来ている。どうしたものかと考えていたその時。
ゴゴゴゴゴゴッ…バアァァン!地面から紫色の閃光が飛び出す。丁度その場所に居たドラゴンゾンビの右後ろ脚と翼を貫いた。バランスを崩して倒れ込むドラゴンゾンビ。地響き。部屋が揺れる。
「!」
「ワンツさまこれは…」
先程ドラゴンゾンビが動き出した時よりも更に嬉しそうに、目を輝かせているワンツ。動揺するヒイラの言葉は届いていない。
「良いねえ…!良いよおテイト君!」
「はああ…"欲しいなあ"」
ハラダも状況が理解出来ずに動揺していた。
「アルフさま、今のは一体?」
「今のは…多分アイツだな」
「?」
閃光によって開いた穴から、毒煙が下の階に流れ落ちて行く。再び立ち上がろうとしているドラゴンゾンビ。ぐぐぐと首を持ち上げる。
バアァァァァァン!そこにもう一発紫色の閃光。さっきよりも高い威力。またもや直撃。ドラゴンゾンビの頭が吹き飛んだ…
…サイクロプスの大きな一つ目を狙って放ったテイトの閃光は、狙い通り一直線に飛んだ。が、サイクロプスはそれが分かっていたかのように、身体を逸らし閃光を回避した。
サイクロプスはその大きな一つ目のおかげで、動体視力がずば抜けて高い。次に相手が何をしてくるのか未来予知のように分かる。
身体の力が抜けたテイト。…外れた。避けられた。もう一回チャージするのにも時間が掛かるし。ヤバい。不気味に笑うサイクロプス。
テイトにトドメを刺そうと振り上げた青い拳が止まる。サイクロプスが後ろを振り向く。風にも負けず、折れた剣で果敢に斬りかかろうとするケンジが居た。
「…」
そんなケンジに対してサイクロプスは、顔の近くを飛ぶ蚊や蝿を、耳障りだと追い払う時のように手を払った。
それでもケンジの身体を吹き飛ばすのには十分な威力。背中を木に強打する。
「がっ!がはっ!」
上を見上げ口を開けたまま動かなくなるケンジ。その様子を見届けたサイクロプスは、再びテイトの方に向き直る。その時。
突然サイクロプスがうめき声を上げる。先ほどテイトが開けた穴から毒煙が流れ落ちて来た。身体中に纏った風によって巻き上げられた毒煙が、サイクロプスの全身を包み込んだのだ。
サイクロプスが【旋風】を止めた。しばらくじっとした後。目を見開き前方を確認。
「!」
「何だか知らないがラッキーだ」
再びツノにエネルギーを充填したテイト。バチバチッ!と大きな音を立てて発光する全身。
「せっかくだからさっきよりも大きいのやるよ」
「…いけ」
バアァァァァァン!来るのが分かっていても、大きすぎて避けられない。サイクロプスの頭が吹き飛んだ。
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