八十八話『抑えめ抑えめ』
島での出来事を回想…
グリが去って数日。今日の修行が終わりテイトとフォスは二人並んで旅館に戻る。ミルフが用意してくれた特製プロテインを開けながら、一人考えるテイト。
ほほう?今日は抹茶味ですか。どれどれ、ゴクゴク…美味っ!抹茶の苦味まで再現されてらぁ!こりゃリピート確定じゃん!
…まぁそれはそれとしまして。竜化出来る回数も少しづつ増えてきた!鎧さん、ミルフとの戦闘訓練にも慣れてきた!そろそろ"アレ"が欲しいですな!よ〜し相談だ!首だけひねって真横を向く。
「フォス先生!」
「はい?どうしましたテイト君?」
「必殺技!欲しいです!」
「あぁそう言えばこの前もそんな事言っていましたね」
「確かにこの数日間で、拳や足に魔力を乗せる事は出来るようになりましたし、魔素の許容量も更に増えました」
「必殺技ですか、そうですね…」
その場に立ち止まるフォス。腕を組み考える姿勢。首をひねったままフォスの周りをグルグル回るテイト。ひらめいたようだ。
「それではこんなものはどうでしょう?」
「ちょっと待っていて下さい」
ん?そう言ったフォス先生は、遠くのベンチの背もたれの上部に、拳ほどの小石を載せると、Uターンして戻って来た。一体何をするのかしら?
「まずはじめに竜に成って下さい」
そう言って目を閉じたフォスの周りに魔素が集まる。簡単そうに竜に成ったフォスは、小石に向け緑色のウロコに覆われた右腕を突き出した。
「いきますよ」
手の平を上に向ける。親指と中指をくっつけて、デコピンの形にする。集中。フォスのツノに、バチバチと音を立てながら緑色の電気が溜まる。そのバチバチが腕を伝って指先に集まる!瞬間!
パァン!一筋の緑色の閃光が、小石に向かって一直線に進む!ベンチの上に有った小石は、勢い良く粉々に弾けて宙に舞った。絶句のちニヤけ顔。そうそう!これこれ!こう言うのだよぉ!目をキラキラと輝かすテイト。
フォスさんによるとこの技は、体内で作り出したエネルギーを指先から放出するもので、威力を抑えるのが難しく、一気に放出してしまうと反動で自分自身が傷ついたり、"魔力切れ"の恐れがあるらしい。要注意ですな。
でも"指先からエネルギーを放出"ってのは、指パッチンで魔力を飛ばして照明のON/OFFを切り替えるのと一緒だよね?それならこれまでの人生、何度もやって来たし簡単なんじゃないの〜?
「さあテイト君、やってみて下さい」
「は〜い!」
「すぅ〜…【ドラゴナル】」
…よし、上手く成れた。フォス先生は確か腕を小石に向けて、ツノにエネルギーを集中させてたな。ツノに集中…?あ。習ってないな。まぁいいかとりあえずやってみよう。力加減はどんなもんだろう?とにかく抑えめ抑えめで…。
全身にバチバチと音を立てながら紫色の電気が発生し帯電。よし、あとはこれを腕に集めて…。この時フォスがテイトを制止させるために発した”テイト君、ちょっと待って下さい”の声はテイトの耳まで届かなかった。残念ながら。
いけっ!
バアァァァァァン!!!極太の紫色の閃光。ものすごい音と振動。反動で吹き飛ぶ身体。立ち上がる。めまい。フラッとして竜化が解除されてしまう。腕ブランブラン。これ脱臼してない?
前方を確認。あれ?塔ってあんなに短かったっけ?…いやいや!そんな訳ないじゃん!傾いてたり、外壁が崩れていたものも有ったけれど同じ長さだったよね?!半分ぐらいの長さになってる。その奥に目を向ける…!
「うわぁ、これは…」
「フォス先生…とりあえず土下座見てもらっても良いですか?」
これ僕がやったんだよね?フォスさんの口も開きっぱなし。反動で身体が上を向いた事で閃光が上空に逸れたようで、住宅は無事だった。それでも三本の塔の上半分が無くなったのと、島の壁面に穴が空いてしまっている。
異変に気付いたアルフとミルフ。敵襲かと思ったようで、急いで駆け出してくる。正座しているテイトを見て何か察した様子のアルフ。
「オメェ…次は何やったんだ?」
恐る恐る答える。やっぱり脱臼してた腕を治してもらった後、予想通り千切られる。
「イテテテッ!ひぃ〜!すみませんでしたぁ!」
「謝って済むなら衛兵隊はいらねぇんだよ!」
「ひいぃぃぃ〜〜〜!イテテテテッ!」
…千切られました。改めてフォス先生に謝る。
「まあ大丈夫ですよ、どちらも【夢現】で直せるので」
「魔人が来ると面倒なので、壁は直ぐに直しましょう塔は…そのままでも良いでしょう」
「今後は威力の調整に十分気を付けて下さい」
「はぁい…」
う〜ん、何か怖くなっちゃったな。僕にはまだ威力の調整は難しいみたいだ。また今度練習しよう。そうだ、その時には上を向いて空に向けて放つようにしてみよう。
「ははは!」
「めっちゃ落ち込んでるじゃないっすか!」
「しょぼ〜ん」
「あ、大丈夫っすね」
「落ち込んでる人って"しょぼーん"って言わないっすよ」
「へへへ、でも気をつけるよぉ」
ミルフに肩を借りて旅館に戻った。
…サイクロプスが迫る。あの時よりも更に抑えめ抑えめで。額にエネルギーを集める想像で。ツノが発光を始めた。
お読み頂きましてありがとうございました。
最初って力加減分からないですよね、何事も。
「なんか面白かったよー!」
「続きが気になった!」
と思って頂いた親愛なる読者様へ…
画面下部の☆☆☆☆☆から
作品への応援お願いいたします。
面白ければ星5つ、つまらなければ星1つ
評価頂けますとうれしいです!
ブックマークもしてもらえると喜びます。
どうぞよろしくお願いします。




