八十五話『何かがかすめた』
「ほらあれ!ハラダさんとヒイラさんケンカしてません?」
遠くに居る二人。ここからだと取っ組み合っているように見える。不思議そうなケンジ。
「えっ?ケンカ…?ハラダさんは普段、滅多に怒らないけど…何かあったのか?」
「とにかく急いで戻ろう!」
「はいっ!」
徒競走の"位置について、よーい…"のポーズを取るテイト。そんなテイトの頬をスゴいスピードで何かがかすめた。
「んっ?何だっ?」
「うわっ!血出てるじゃん!」
「…痛っ!」
指で確認すると血が。頬が切れていた。パックリと。ケガに気付いていない間は痛くないのに、ケガに気付き意識すると痛みを感じるあの現象。あれって名前あるのかな?
いや!今はそんな事より!
「早く!急ぎましょう!」
「そうだね、急ごう!」
急いで走り、二人の表情が確認出来る距離まで来た。険しい表情!やっぱりケンカか?!
「お〜い二人ともぉ!」
「ちょっと…どうしちゃったんだいっ?!」
うん。近くで見てもやっぱり取っ組み合ってるわコレ!止めなくては!二人の間に割って入ろうとするテイト。水泳の"位置について、よーい…"のポーズを取る。しかし。
「来るなっ!」
「!」
これまで声を荒げなかったハラダさんが大きな声を?あっ!待って!ハラダさんの手にナイフ?さっき僕の頬が切れてたのも…ハラダさんがあそこまでナイフを投げたのか?!
ヒイラさんは捕まっていたのか!とにかくヒイラさんを助けないと!でもあれじゃあ人質ですやん!どうするぅ?!
テイトが水泳の準備姿勢のまま戸惑っていると、地面が揺れ出した。あれ?これってもしかして…?はい。テイトさんご名答。
再び"床が消えた"
…落ちるテイト。さっきのオーガ達との戦いで竜化を解除したばかり。直ぐには変身できない!地面が見えないこの高さ!ペシャンコ待ったなし!いや!そんな事言ってる場合じゃ!
…う〜む。しかし、ハラダさんはどうしちゃったんだろうか?ヒイラさんにナイフを向けるとは。これまではそんな様子は微塵も見せなかったのに。僕達が荷物を取りに行っている間に一体何が?いや!そんな事考えてる場合じゃ!
…って言うかヤバいよね?!ここは最終層。この第六層には何が居るのかも分からないのに、落ちたのは僕とケンジさんの二人。ケンジさんは武器の剣を持ってないまま落ちている。僕が何とかしなくては!いや!今はそんな事思ってる場合じゃ!
「…長くね?」
「全然落ちないじゃん」
「本当に落ちてるよねコレ?」
…うん。ちゃんと落ちてます!やっと見えましたよ地面!しかしこのままでは!
「うわあぁぁ!本当に死んじゃうぅぅ!」
「【速脚】!」
二人と一緒に落下していた、崩れた床を足場にして、ケンジがテイトに素早く近付く。テイトを抱えると、生えていた木を利用し落下の衝撃を抑え込んだ。着地&安堵。
「ふぅ…大丈夫?」
「た、助かりましたぁケンジさん」
「まさかまた落ちるとは…」
ここは明るいな。都合良く。周りを確認するとこれまでの階層よりも広く、天井がとても高い。一から四階層を繋げたくらいの高さ。
よくこの高さから落下して無事だったよね。一人だったら危なかったなぁ…。
「そうだった!ハラダさんどうしちゃったんですかね?」
「ケンジさん…?どうしました?」
…この床が消えるギミック。ゴブリン達がオーガの階層に落とされるのと同じ。とすると、五階層に居たオーガ達も"エサ"なのかも知れない。ここに居る何かの…!
一方その頃、第五階層。
距離を取ったヒイラとハラダ。ハラダの手には今もしっかりとナイフが握られている。
「ハラダ…」
警戒した表情のアルフ。睨みつけるような表情のハラダ。
「…悪りぃな、助かった」
二人の目線の先にはヒイラ。これまでの口調・表情・雰囲気とは異なる様子。
「…あーあ、残念残念」
「竜化を解除して直ぐの状態なら、ただのナイフでも殺せると思ったんだけど」
「アンタ…いつから気付いてたの?」
「会った時から」
「殺気がダダ漏れだ」
「お前は…何だ?」
「…」
質問しておいて自分への質問には答えないヒイラ。突然嬉しそうな表情になる。
「あ!来た来た!」
「ご主人さまー!」
「アーシ、しくじっちゃいました!」
「あとで"おしおき"して下さい♡」
「!」
"コツコツ"と足音を立てながら、暗闇から一人の人物が現れる。魔法使いが着るような黒いローブ。大きく開いた胸元。セクシー。褐色の肌。黄緑色の瞳とパーマのかかったショートカット。対面する二人をあざ笑うような表情。
「どうもアルフさま…あれ?」
「しばらく見ないうちに縮みました?」
「違うか!アタシが小ちゃくしたんだった!」
「アハハハハ!」
「…アルフさま?彼女は?」
「アイツは"ワンツ"…」
「アタシの身体を奪った"クソ弟子"だ」
「アハハハハ!」
「クソ弟子でーす!」
無表情になったワンツ。ハラダを指差す。
「さて…お前ずっとヒイラの事を警戒してたよな?」
「竜の子からアルフさまが離れる時は、攻撃出来ないように間に入っちゃって」
「なかなかやるねえ?ずっと見てたよ?」
ワンツは両手で自身の顔を覆う。指の隙間から見える不気味な表情。
「良いなあ、欲しいなあ…」
「ねえ"こっちにおいでよ"」
「!」
ハラダの足元に魔法陣が浮かび上がる。
お読み頂きましてありがとうございました。
あの現象なんて言うのかしら?本当疑問ですな
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