八十四話『スパッと』
「ケンジ…はっ?!」
「ケンジッ!オーガはどうしたっ?!」
意識を取り戻し、起き上がろうとするハラダをなだめるケンジ。
「ハラダさん慌てないで寝てて下さい」
「多分…オーガについてはもう大丈夫なんじゃないかな?」
「何…?」
アルフさまが何かしてくれたのか?その言葉を聞き、辺りを見回すハラダ。
「見て下さいよアレ、いまだに信じられませんけど…夢じゃないんですよね」
「ははは…テイトさんも悪い人だな」
「あんなのを隠してたなんて…」
「…ん?」
「あれは…?何だ?」
ケンジが指差した方向に首を傾ける。スゴいスピードで動き回る"黒い塊"がオーガを次々と蹴散らしている。
刃物を持っているのか?オーガの腕や足が千切れて、あたり一面が赤色に染まっている。あの黒い塊がテイトくんだと言うのだろうか?…彼は普通の人間ではないのだろうか?
鉱石場に入る前。自己紹介でテイトくんは自身の名前を"ノガールド"と言っていた。珍しい名前だ。その名前が本当のものならば、アルフさまと共に世界を救った"ルイボル・ノガールド"の血縁者だと睨んでいたが…。
世界を救い、世界中の人々に注目される立場のはずのルイボル・ノガールドだが、種族は何なのか?使用する技は?魔法は?彼についての記録は全くと言って良いほど残っていないと聞く…。
竜化したテイトは、オーガ達を次々に仕留めながら考えていた。この場所。五階層は魔素が濃いな。僕にとっては好都合だけれど、ハラダさんやケンジさん達にとってはあまり良くない状況かも知れないな。
空中を舞いながらハラダ達が集まっている場所に目をやるテイト。おや。ハラダさんが意識を取り戻したみたいだ。良かった。
ケンジさんの剣ももう切れないみたいだったし、さっきはアルフさんも辛そうだった。今回は最後の六階層には行けそうにないな。最後の階層。何が居るのか分からないし。早くオーガを殺して帰ろう。
最後のオーガ。自身が最後の一体になった今も、初めの勢いそのままに怯む事なくこん棒を振るう。全力で振り切られたこん棒だったが、テイトは軽々と避けてみせる。
テイトはこん棒を握った方のオーガの腕に魔力を乗せた手刀を振り下ろす。大木ほども有るオーガの腕だが、紙を千切るようにスパッと切れる。骨までスパッと。鮮血舞。
それでもなお、オーガは怯まない。死んだ仲間のこん棒を千切られたのと別の手で掴むと、テイト目掛けて振り下ろす。砂煙が舞う。しかしそこにテイトの姿は無く、無慈悲にもオーガの足が千切れる。
片足が千切れ、バランスを崩し転倒するオーガ。地面に接触し、天を仰いだ頭部。テイトの魔力を込めた手刀がオーガの首を目掛けて振り下ろされる…。
オーガ達が全て動かなくなり、静かになった第五階層。平然とした様子と口調のテイト。
「ふぅ終わったぁ、みんなは…」
「あっ!そうだった…竜化の事、ケンジさん達になんて説明しようかな…」
ハラダ達が集まっている場所に向かう。アルフが【完璧】を展開し、ハラダ達を保護していた。
「お〜い!アルフさ〜ん!」
「あれ?アルフさん?」
【完璧】の防護壁越しに、じっとテイトを見つめるアルフ。しばらくして口を開く。
「オメェ…なんか変わったな」
「えっ…?」
興奮気味のケンジが、もう待てないとばかりに口を開く。
「テイトさん!何ですか今の?!」
「あれは〜そのぉ〜」
「黙っててすみませんでした…」
アルフの許可を得て、事情を三人に説明する。親父が殺された事。妹がさらわれた事。その日から竜化出来るようになった事も。
「そうだったんですね…」
「テイトさんも色々苦労してるんだね」
竜化の事も話してもっと拒絶されると思った。竜は世界で恐れられている生物だと聞いていたし。
でも話を聞いたハラダさん達は、僕ののんきな性格を知っているので、竜の怖さが霞んで見えると言ってくれた。のんき?これって褒められてるんだよね?
「まぁそれは置いておいて、ハラダさん」
「次の階が最後の階層ですけど、今のボクたちじゃ…」
「今回の討伐依頼は一旦ここで終了しましょう」
「僕も賛成でぇす、ねぇアルフさん?ヒイラさん?」
「…あぁ」
「そうですね、わたしもそう思います」
「そうだな…一旦戻り態勢を整えよう」
「荷物を回収して地上に帰る」
「あっ!じゃあ荷物は僕が!」
「テイトさん、ボクも手伝うよ」
二人でちょっと離れた場所に置いてある荷物を取りに向かう。ケンジにお礼を言われる。
「ありがとうねテイトさん」
「えっ?」
「ハラダさんやボクや、それにヒイラさんも」
「みんなを助けてくれてありがとう」
「ハラダさんが潰されそうなあの時、ボクは何も出来なかったよ、ははは」
落ち込んでいる様子のケンジ。
「そんな事無いですよぉ」
「僕はいつも竜化するのに時間が掛かるんですけどぉ」
「多分今日は、ケンジさんの"ハラダさんを助けたいって気持ち"が有ったから、直ぐに竜化出来たんです」
「ケンジさんのおかげでハラダさんを助けられたんです」
「!」
「ははは…そうなんだね」
「テイトさんは優しいな」
「えっ?そうですかぁ?」
「…実はボクも一つ秘密があってさ」
「へぇ〜何ですかぁ?」
荷物を回収して、みんなの所に戻ろうと振り向いたテイトとケンジ。その時。
お読み頂きましてありがとうございました。
スパッ
「なんか面白かったよー!」
「続きが気になった!」
と思って頂いた親愛なる読者様へ…
画面下部の☆☆☆☆☆から
作品への応援お願いいたします。
面白ければ星5つ、つまらなければ星1つ
評価頂けますとうれしいです!
ブックマークもしてもらえると喜びます。
どうぞよろしくお願いします。




