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七十三話『突進が迫る』

「うーん、やっぱりびくともしないっすね」

「テイト、大丈夫だと良いんすけど…」


「…」


狼男の姿に成ったミルフの必殺技である【(ウルフ)鉤爪(クロー)】でも、次に呼ばれたヨロイのフルパワーのハンマーを受けても。"闇玉(やみだま)"に変化は見られない。


攻撃が当たった部分にはへこみが出来る。だが少しすると闇が集まり、元の形に戻ってしまう。雲をつかむよう。時間だけが過ぎる。


「待つしかねぇか…」


「よし、アイツを待ってる間、二人でセンター(ここ)を片付けろ」


「そうっすね、テイトは心配っすけど…」

「了解っす!よし!やるっすよ!」


「…」


普段の姿に戻ったミルフとヨロイ。二人はぐちゃぐちゃに散らかった辺りを片付け始めた。片付けている間、鎧がこすれてガチャガチャうるさい。


"うるせぇな"とは思いつつ、モリモリと一生懸命片付けてくれているヨロイの姿に、戻すのも悪いと思うアルフ。二人が片付けをしている間ヒマなので、闇玉に耳を当ててみる。何も聞こえねぇか…。


…闇玉の中ではその間も戦闘が続いている。吹き飛ばされるテイトの身体。

「オラァ!」


「ぐっ…!」

痛い。身体の奥の方にズシンとくる痛み。これで何度目だ?…忘れた。


突進が得意なバイソンの魔人と、戦闘能力は未知数のアルパカの魔人の二人組。戦闘を続けている中で分かった事もある。


この二人の技【引く(プル)】と【離す(バック)】は、どうやらどちらも技を出す本人には使えないようだ。あえてそう見せているだけかも知れないけれど。


バイソンの技は対象を自分から"遠ざける"。アルパカの技は対象を自分に"引き寄せる"。これは決定だ。それと何度も突進を受けて、攻撃にパターンがある事に気付いた。


バイソンが突進を繰り返すので、三人の立ち位置が何度も入れ替わる。"バイソンとアルパカが一箇所に固まる時"と、"バイソンとアルパカの距離が離れる時"を繰り返している。


クセなのか、あえてなのかは定かではないが、二人が一箇所に固まった時は【離す(バック)】で遠ざけられ、距離が離れた時は【引く(プル)】で引き寄せられる事が多い。いや、全てそうだった。


今は正面にバイソン、背後にアルパカ。二人が離れた距離に居る。次に突進してきた時、コイツらがやってくるのは…。予想。当たれ。


よし。さっきやったみたいにダメージ覚悟で受け止めてやる。両手を広げ腰を低く落とし、突進を待ち構えるテイト。そこに期待通り突進!バクソンの巨体が迫る!


衝突の直前プルパカが言い放つ!

「【引く(プル)】!」


よし、思った通りだ。後ろに引っ張られる。身構えるテイト。が、身体の位置はその場から変化せず。突進を食らい吹き飛ぶ。

「…がっ?!」


「プルルル!まんまと引っ掛かりましたね」

「そうです、こう言う事も出来るんですよ」


「…ふぅ」

ゆっくりと立ち上がるテイト。なるほど。技を発動すると思わせておいて、発動しない。そう言う事も出来るのか。技の選択肢が増えた。めんどうだな。マジで。


一方のバクソンとプルパカの二人も、決め手に欠けていた。…これまで二人で戦ってきた相手は俺様の自慢の突進で沈めてきた。


だかこの竜の子。戦闘が始まってから何度も突進を食らわせているが、当然のように立ち上がりやがる。…正直さっきは危なかった。


俺様の突進を正面で受け止めて、腹にパンチを打ち込んできやがった…!体毛で直撃は免れたが…。仕方ねえ、久しぶりに"アレ"をやるか。プルパカに合図を送る。合点プルパカ。


さぁ次は何をしてくる?二人が一箇所に集まっているから【離す】?でも、さっきみたいにスカして来るかもしれない。分からん。もういい、とりあえず受け止める。身構える。


再度バクソンを受け止めようと、両手を広げるテイト。その様子を見たバクソンは笑う。

「おいおい!バカの一つ覚えかよ!」

「バククク!分からねえヤツだな!」

「何回やっても結果は変わらねえ!」


そう言ってバクソンは、もう何度目かも分からない突進を再度繰り出す。来た。迫る突進。何をしてくる?ぶつかる直前にバクソンがテイトに背中を向け、しゃがみ込む形を取る。


「【離す(バック)】!」

地面に向けて放たれたその技により、使用したバクソンの身体は猛スピードで浮き上がる。突進の速度と相まってものすごい速さ。対応出来ないテイト。一撃食らう。


「【引く(プル)】!」

攻撃は続く。プルパカはバクソンに向けて技を放つ。ふらついていたテイトにバクソンの身体が接近し、もう一撃お見舞いされる。


仰向けになってしまうテイト。地面に向けて技を使うと、地面から身体が離れて浮き上がるのか…それにそうだよな。お互いにも技を繰り出せるよな。突進が迫る。


「【離す(バック)】!」


「【引く(プル)】!」


「【引く(プル)】!」


「【離す(バック)】!」


「【引く(プル)】!」


「【離す(バック)】!」

もうめちゃくちゃ。プルパカも参加して蹴るし殴るし。二人に挟まれてボッコボコにされるテイト。…危ない、意識が飛ぶとこだった。何とか耐えたがクラクラする。


次は何を?ダメだ。選択肢が多すぎてこんがらがってきた。攻撃以前に触れる事さえ出来ない…そうだ。触れられないのなら。グリにやられた"あの技"をやってみよう。


よろよろと立ち上がるテイト。突進が迫る。

お読み頂きましてありがとうございました。


笑い声「バククク!」だとバクの魔人みたいだね。


「なんか面白かったよー!」

「続きが気になった!」

と思って頂いた親愛なる読者様へ…


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