六十六話『魔証石の便利な機能』
「ちょっと!ちょっとテイトさん?!」
「ストップ!ストップして下さい!」
「…」
ミシミシミシ!無言で引っ張るテイト。
「なんで止めてくれないの?!」
「ちょ…テイトさん?!」
…しまった。やってしまった。島を出る時どこで誰が見ているか分からないから、竜の力はむやみに披露しない、バレないように、と言われていたのに…。
普通の人くらいの力で引っ張るように意識していたのに。ただの人間で器具を壊せる者がどこに居るのか!マズい…。変な汗出てきた。バレちゃうかも。マズいマズい…。
職員さんと器具を前に話し合っていたホロさんが戻って来た。どうしよう…。アルフさんに相談したいけれど今は散策中だろうし…。ここはとりあえずすっとぼける事にする!
「テイトさん…」
「はい」
「あのぉ〜どうでした…?」
「急に器具からミシミシ音が聞こえましたけれど…原因分かりましたか?」
「ええ、確認したのですが」
「器具の調子が悪かったようですわ」
「えっ?」
「元々古い器具でしたし、昨日ゴリラの獣人さんが団体で当センターにいらっしゃっていたので、ダメージを受けていたようです」
「今日テイトさんが引っ張ったタイミングで、寿命が来てしまったんでしょうね」
「そっ、そうでしたか!」
「いやぁ〜びっくりしましたよ、ははは」
なんともぎこちない笑いだったが、ホロは気付かなかったようだ。良かった!バレてないみたいだ!昨日都合良くゴリラの獣人さんが団体で来てくれてて、助かった!
ありがとう!ゴリラの獣人さん!団体で来てくれて!ん?ゴリラの獣人さん?団体で?何の集まりなんだろう?…気になるし、ちょっと見たかったな…。団体のムキムキ。
「テイトさん、申し訳ありませんが」
「これから職員に壊れた器具を修理させるので、もしあれでしたらその間に、先ほどの説明の続きをしましょうか?」
「それとも他の種目から開始しますか?」
「それじゃあ…説明を聞きたいです!」
「分かりましたわ、では魔証石についての説明の続きをしましょう」
「魔証石は国境を越えるためのパスポートとして使用出来る事は説明しましたが、他にも便利な機能が有ります」
「ふむふむ」
「テイトさんは普段、お金を持ち運ばれてますか?」
「お金ですかぁ?普段はアルフさんの異空間に保管してもらってて、使いたい時、使いたい分だけ出してもらってますよ〜」
「あっ…」
「それは…便利ですね…」
「もしかしたらそんなテイトさんには必要ない機能かもしれませんが…」
ちょっと残念そうなホロ。
「魔証石と銀行の口座情報を紐付けしてデータを共有する事で、お金を持ち運ばなくても、商品が購入出来るんです!」
「ほぇ〜!そりゃ便利ですねぇ!」
楽しそうに腕をグルグル回すテイト。
「まだ対象の店舗は少ないですが、これからどんどん増えていくと思いますよ」
「本人しかお金の引き出しを行えないので、現金を持つよりも、犯罪に巻き込まれる心配が減るんじゃないかと期待されていますわ」
「なるほどねぇ〜よっしゃ!」
「魔証石をゲットしたらやってみま〜す!」
便利なもんだ!ピッタリの料金で払うために財布から小銭を探す手間がなくなる訳だな!
ピッタリで払えた時、あれはあれで嬉しいけれど。後ろのお客さんを待たせるのも悪いし。ふ〜ん、試してみたいなぁ!そのためには銀行口座も作らなくちゃいけないな!
「後は…これもテイトさんには必要ないかも知れませんが」
「魔証石に記録された持ち主の能力データは、冒険者ギルドの登録時に、登録後はギルドカード情報を魔証石に紐付け出来ます」
「"冒険者ギルド"ですって?!」
"冒険者ギルド"と聞いてテイトの目が輝く!
「あら?テイトさん」
「気のせいかしら?どこか嬉しそうですね?」
「そりゃそうですよぉ!」
「冒険者ギルドはロマンでしょ!」
「世の中には冒険者ギルドの響きだけで、ご飯三杯はイケる人も居るとか居ないとか…」
「そ、そうなんですね…」
「勉強不足でした…」
「ねぇ?皆さん?」
「?」
「あれ?今、誰かと話しました?」
「何でもないで〜す」
「そうですか…」
「えーっと…そうそう」
「冒険者ギルドの話でしたね」
「冒険者ギルドについてはどれくらいご存知ですか?」
「あんまり詳しくは…」
「"ロマンが有る"って事だけしか…」
「うふふ、間違いではないですね」
「最近は未探索のダンジョンや、凶悪な魔物の数が減ったので、それに伴って冒険者ギルドの数も少なくはなってきていますが、ギルド自体はまだまだ各地で活動しています」
「おぉ!」
ガッツポーズ!なんか嬉しい!
「そしてこれからテイトさんが行う、魔証石の能力測定項目は、冒険者ギルドの入会テスト項目を参考にしているのでとても似ています」
「ほう」
「本来ギルドへの加入希望者は、入会テストを合格する必要があるのですが、魔証石を持っていると、そのテストが免除されます」
「普通よりも速く冒険者になれる、と」
「そうです」
「加入したいギルドによって条件は異なりますが、よくあるのが"魔証石の色が黄色以上"の希望者ですね」
「あっ!その"魔証石の色"って言うの、詳しく知りたいです!」
ホロが器具を修理している職員の様子を確認する。もう少し時間が掛かりそう。
「テイトさん」
「説明ばかりで疲れていませんか?」
「全然!ワクワクする話ばっかりで、楽しいです!」
「うふふ、そうですか?私もテイトさんが楽しそうに聞いてくれるので、話し甲斐がありますわ」
「では、もう少しお話ししましょうね」
…もう少しお話しが続くってよ!
お読み頂きましてありがとうございました。
もう少しだけ、説明にお付き合い願います。
(両手を合わせ、すりすり。)
「なんか面白かったよー!」
「続きが気になった!」
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