六十五話『フォークとナイフ』
魔界。暗くて広い部屋。誰かと誰かの会話。
「で!どうだった?」
「いやぁ正直、疲れました」
一方の質問に、もう一方が髪をわしゃわしゃしながら答える。
「○○さまから"竜の子の途中経過を確認する様に"とご命令を頂いておりましたが」
「はじめ彼と対峙した時、彼から竜の気配と言うか威圧感と言うか、それらを一切感じませんでした」
「なので探している竜の子では無く、ただの竜人かも知れないと考えまして」
「うん」
「実際に戦った感じも、普通の竜人の域を出なかったので、見込みは無いと思いました」
「速いとこ殺してさっさと冬眠…ゴホンッ!ご報告に伺おうかと思っていたのですが」
「そっかあ…」
「しかし戦闘の途中で、はじめ彼から受けた印象は大きく変わりました」
「ボクと戦闘している間に、彼のスピード・パワーがどんどんと上がっていくのです」
「それでそれで?!」
「機転も効くようで、ボクに合わせて戦闘スタイルを瞬時に変えながら戦っていました」
「ボクも何発か顔面にくらってしまいましたし」
「ほお〜君に?やるねぇ」
「治癒力も常人のそれとは違い異常な速度でした」
「途中で邪魔が入りましたが、ボクの見立てですと彼は…」
「十中八九、◯◯さまが探している竜の子だと思います」
一方の声が大きくなる。嬉しそうな声。
「そうかっ!!やっと見つかった!!」
「でもまだ…"本気の君"には勝てないよね?」
髪を掻き上げながら答える。
「はい、まだですね」
「よし!分かった!ご苦労さま!」
「報告ありがとうね!」
「はは、もったいないお言葉です」
"ではボクはこれで"一方があくびをしながら部屋を出る。もう一方が別の部屋に移動。さっきまでの暗い部屋とは打って変わって、明るい部屋。
フリルやレースのカーテン・クッションなどかわいい物であふれた、お姫様の部屋みたいな。そこに女の子が一人。話しかける。
「クエラちゃん、元気?」
「…」
「あれ?今日も食べてないね」
「人って何日間も何にも食べなくて、大丈夫だったっけ?」
「…」
「食べたく無いならいいけれど」
「あっ、それと」
「君のお兄ちゃん、頑張ってるみたいだよ」
「次々に魔人を殺して、どんどん強くなってるって」
「!」
「"◯◯さまが探してる竜の子じゃないか"って確認に向かわせた部下が言ってた」
「君を助けるためにここまで来れるかな?」
「どう思う?」
「…」
「釣れないな〜」
「そうだ!もしも君を助ける一心で、ここまで君のお兄ちゃんが来てさ」
「もしも目の前で大事な大事な君を殺されちゃったら君のお兄ちゃん…」
「どうなると思う?」
「…」
「まあ、そんな事しないけどね〜」
「会えるのが楽しみだな〜」
「じゃ〜ね!クエラちゃん!」
「また明日も来るね!」
先程まで背筋を伸ばし、無言で座っていたクエラ。◯◯さまが居なくなった部屋に一人。緊張が解ける。さっきの話が本当なら…お兄ちゃんが生きてる…。良かった。安堵。
魔人を殺したって?あの優しいお兄ちゃんが?兄ちゃんも竜に成ったの?でも…本当は…"私の事はあきらめてっ!来ないでっ!"って言いたい。けどここを出られない。
窓とドアに結界みたいなのが施されててびくともしない。…自殺を考えた時もあった。食事と一緒に来た食器。フォークとナイフをノドに突き立てようとした。けどそれも結界で防がれた。
だからこれまで、せめてもの反抗で出された食事に手を付けないようにしてた。あの人…お兄ちゃんが頑張ってるって言ってた。私を助けるために?
クエラは用意されていたフォークとナイフを両手に持ち、しばらく見つめていた。その後何かを決心したような表情に変わる。
…よし!お兄ちゃんが諦めてないんだ!私も諦めないぞ!お兄ちゃんが来てくれるまで、死んでたまるか!
クエラは生クリームとアイスが添えられ、キャラメルソース・チョコレートソースが贅沢に両方かけられた、プリン液がしみしみのフレンチトーストをわき目も振らずに頬張った。
「…美味しっ」
魔界の様子終わり。魔証石センターに戻る。
「テイト君、こちらです」
センターの中には窓口が二つある。"魔証石情報更新"と"魔証石新規製作"の二つ。僕は新しく魔証石を作るので、新規製作の入り口に案内してもらった。
僕が魔証石を使っている間、二人はアバルキの街中を散策して来るとの事で、二人とはここで別れる。いいなぁ!散策!楽しそうじゃん?!
「テイトさん、始めますよ?」
「あっ!すみません!お願いします!」
いかんいかん!まずは測定をしなくちゃ!その後に街を散策だ!楽しみだ!
「じゃあまずは…筋力を測定しましょう」
「こちらを両手で持って思いっきり引っ張って下さい」
「はぁい!」
筋力の測定器具。壁に固定されている大きな古時計のような形状のふっとい柱。ちょうど時計板がある部分に筋力が表示されるようになっている。柱の真ん中あたりから鎖がのびていて、先がハンドルのような持ち手になっている。持ち手を持ちながら考える。
島でフォス先生、アルフさんと話した。僕は竜化してない状態だとツノがほぼ見えなくなるが、同時に能力も制限される。ほとんど普通の人と変わらないくらいになってるって。
今は竜化していないし、本気で引っ張っても大丈夫だよね?よぉ〜し!いきますよぉ〜!
「おりゃ〜!」
ミシミシミシッ!!!壁と器具が悲鳴を上げた。ホロも"ひゃ"っと、小さく悲鳴を上げた。
「テイトさん?!」
「ちょ、ちょっと待って下さい?!」
すっとんきょうな表情と声のテイト。
「へっ?」
お読み頂きましてありがとうございました。
フレンチトーストに生クリームとアイス?!その上からキャラメルとチョコレートソース?!まぁ!なんて贅沢なんでしょう!
「なんか面白かったよー!」
「続きが気になった!」
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