五十七話『最後にこれだけ』
「はははっ!相変わらずですねフォスさん」
「じゃあ改めて…行きます」
「…!」
ダァン!一瞬の出来事。一気に距離を詰め、テイト目掛けて殴りかかって来たグリ。グリの攻撃にいち早く反応したフォス。体勢を低くし、攻撃を受け流す。そのまま滑らかにカウンターを叩き込んだ。グリが距離を取る。
「はっ…?!」
気付いた時にはグリの拳が眼前まで迫っていた。フォスさんが対応してくれなかったらいまごろ…全く反応できなかった。
「大丈夫ですか、テイト君?」
「はい…すみません、助かりました」
額に汗が流れる。呼吸が速くなる。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
距離をもっと取る?それとも鎧さんとの修行の時みたいに、こっちから仕掛ける?何をすれば?どうする?どうする?どうする…。
「来ますよ」
「テイト君…テイト君?」
「はっ?!すみません!」
いけない!ぼ〜っとしてた!グリは?!こちらに走り込んできている!どうする!
「テイト君、ちょっと離れていて下さい」
「?!」
「フォスさん!でも…僕も!」
「大丈夫、ワタシに任せて下さい」
テイトに向け、ほほえむフォスさん。真剣な表情に変わり、グリの方を向き直す。迫る攻撃に備え、構えを取った。
そんなフォスさんから受けた指示通り、その場から急いで離れるため後ろを振り向く。と、直ぐに。ダァン!後ろから衝撃音!戦闘が始まった!急いで走って逃げる!
フォスとグリの戦闘。入れ代わり立ち代わり、絶え間なく繰り広げられる攻防。お互いの力は拮抗しているようだ。
スゴい…!息つく間の無い戦い!しばらく続いた攻防の後、二人が距離を取る。グリが口を開いた。ゆったりとした口調。
「はははっ、困りました」
「…やはり一筋縄ではいきませんか」
「フォスさん、全然衰えて無いですね」
「そうですか?嬉しいですね」
「しかし、そう言うグリさんの方こそ」
「出して無いですよね?…本気」
さっきまでほほえんでいたグリ。口元はほほえんだままだが、瞳が鋭く光る。髪をわしゃわしゃしながら。
「いやぁ、実は今日この島に来る時」
「本気を出さないでも大丈夫だと思ってたんですけど、フォスさん強いしな…このままだとらちが明かないですもんね」
「ちょっと眠くなってきたけど…」
あくび。髪を掻き上げる。何かを察知したフォス。身構える。
「ちょっとなら…いいかな?」
「【戒忌日蝕】グリズリグリ」
吹き飛ばされるフォスの身体。砂ぼこりで見えないが、岩壁に叩きつけられた?!何が起こったのか理解出来ないテイト。フォスが立っていた場所に拳を突き出したグリが居た。
上半身が髪と同じ茶色い体毛に覆われ、両腕が大きく筋肉質に変化している。鋭い爪も生えて、熊のような見た目。あぁ…。
「フォ…フォスさん?」
「…フォスさ〜ん!!!!」
「はははっ!」
「…やっぱり強いなフォスさん!」
「ここから第二ラウンドって感じかな?」
「えっ?」
突然笑い出したグリ。吹き飛ばされたフォスさんを改めて確認する。あっ!グリと同じようにフォスさんの身体も変化している!壁に叩きつけられてはおらず、無傷。片手で岩壁に張り付いているようだ。
「本当は…テイト君の竜化の修行の時に初披露したかったんですが」
「そんな事も言ってられませんので」
フォスのこめかみに生えていたツノが、普段よりも大きく変化。肘から指先、膝から足先に緑色のウロコ、ツメが。瞳は淡い緑色に輝いている。フォスは竜に成った。
テイトが驚いていると、岩壁を蹴り出したフォスが、グリにツメを立て飛び掛かる!テイトには速すぎて見えない!グリがフォスの身体を地面に叩きつけたり、グリの顔面目掛けてフォスが蹴りを繰り出したり、その足をグリが掴んだりと、攻防が続く。グリが言う。
「うーん、これでも決まりませんか」
「本当に同じくらいの戦力なんですね」
「でも…今のボクとフォスさん」
「一つだけ違う事がありますよね?」
「!」
「テイト君!」
グリが拾って持っていた小石を、テイト目掛けて投げてきた。フルパワーで。…ただの拾った小石だが、魔人グリのフルパワーで投げられた小石。生えている木くらいなら易々《やすやす》と貫通する威力。
テイトを狙った投擲に気付いたフォス。が、今からではテイトを抱えたままその場からの移動は困難だと判断する。自身の背中でかばう事にした。ドスッ!ドスッ!ドスッ!鈍い音。小石は貫通しなかったが、フォスの口から流血。
「ゴホッ!…すみません油断しました」
「フォスさん?」
「!」
「…あぁ!血が!そんな…僕のせいでっ!」
どうしよう?!どうする?!どうすれば良い?!焦るテイト。そんな彼に向け優しい声で話し出すフォス。
「テイト君」
「こんな時に言う事では無いかも知れませんが」
「テイト君やアルフさん達との修行、楽しかったです」
「えっ?」
再びフォスの背中目掛けて投擲される小石。ドスッ!ドスッ!ドスッ!鈍い音。
「グフッ…」
「…ワタシがこの島で一人の生活を始めてから長い月日が経ち、変わり映えのしない日々が続いていました」
「最初はテイト君達の話を聞いた時、面倒臭いと思っていたのですが、修行が始まり、どんどん成長していくテイト君の姿を見ているのが楽しくなっていました」
「フォスさん!もういいから!逃げてっ!」
三回目。フォスの背中目掛けて投擲される小石。ドスッ!ドスッ!ドスッ!鈍い音。
「グッ…」
「…みんなで温泉に入ったのも、みんなで鍋を囲んだのも久しぶりで、楽しかったです」
「フォスさん…」
テイトの頬に涙がつたう。
「うーん、しぶといですね」
四回目の投擲。ドスッ!ドスッ!ドスッ!
「ガッ…ハァハァ…」
「…まだまだ教えたい事が沢山あったのですが、最後にこれだけ言わせて下さい」
「フォスさん!」
「最後だなんて…そんな事言わないでよっ!」
ポロポロと大粒の涙が流れる。
ゆっくりと迫るグリ。フォスの話は続く。
「テイト君、自信を持って下さい」
「大丈夫です、アナタはアナタが思っている以上に強くなりました」
「それにアナタは…ワタシの数少ない友人の自慢の息子なんですから」
ほほえむフォス。背後にグリ。横から来たグリの拳。拳を受けるフォスの顔面。吹き飛ばされゴロゴロと転がるフォスの身体。
テイトの叫びが島に響く響く。
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