四十七話『現実か空想か』
これまでの十七年間、特に運動して来なかった僕。本格的な修行の前にプニプニのたるんだ身体を鍛える事から始める!何をするにも筋肉は必要だそうだ!
と言う訳で、初心者の僕の修行はジョギングからスタート。あれ?まだ走り出したばかりなのに息が切れ、もうすでに脇腹が痛いのだけれど?はぁはぁ。これまでの怠惰な生活が悔やまれる…。
フォスさんから"人間の姿から他の姿に変身して戦う人の話がいくつか残っている"と聞いた。そしてその人達の変身条件を学んで知っておく事で、僕の変身のヒントになるかも知れないとも聞いた。
そう言った知識を学ぶ事を"座学"と言い、今後修行の中で座学の時間を設けてくれる予定だそうだ。本来ならそう言う座学は、座って行うらしいのだけれど時間が惜しい。
さらわれたクエラの生死は分からないが、生きていると信じている僕。一刻も早く修行を終えて魔界に向かわなくちゃいけない。
その事を伝えるとジョギングしながら座学を教えて貰える事になった。僕の横で並走するフォスさん。僕と同じだけ走っているはずなのに、顔色ひとつ変えず息も上がっていない。いつもの調子で座学がスタートした。
「では座学を始めましょうか」
「一つ目は"変身能力者とその変身条件について"です」
「はぁはぁ…お願いしますぅ」
「ある国の物理学者の男性は、緑の大男に変身します」
「大男に?!はぁはぁ、なぜ緑…?」
「その男性の変身条件は"怒りや憎しみ"ですね」
「はぁはぁ、つまり"精神的ストレス"を受ける事なんですかね」
「ちょっと僕に似てるのかなぁ?」
「またある国の兵士は、十五メートル程の巨人に変身します」
「巨人に?!しかも十五メートルって!」
「大抵の相手なら余裕で勝てちゃうんじゃ…戦う相手も巨人とかならまだしも…はぁはぁ」
「その兵士は自身の手を噛んで変身します」
「手を噛む…"身体的ストレス"になるのかな…でも変身の度に痛いのはちょっと嫌だなぁ」
「ある国の自動二輪車のレーサーは、バッタを模した改造人間に変身します」
「バッタってあの昆虫の?人間サイズのバッタかぁ〜ちょっと怖いかもですねぇ」
「そのレーサーは自動二輪車に乗って、受ける風圧を利用し変身します」
「はぁはぁ、風圧で変身…試してみる価値は有るかも?あ、二輪車の免許持ってないや」
「またある国の新聞記者は、何でも出来る超人に変身します」
「何でも?!それは何と言うか…スーパーな人ですね、はぁはぁはぁ」
「"何でも"か…空を飛んだり?目からレーザーを出したりするのかな?はは、それはやり過ぎか」
「"変身"と言いましたが実は彼は宇宙人で、そのままでも強いです」
「戦闘時は中に着込んだコスチュームに着替えます」
「宇宙人だったの?!中にコスチュームを着ているんですか?!仕事中バレちゃいそうだけれど…僕は別にもうバレてるし、コスチュームは要らないかな?」
自身がコスチュームを着て戦う姿を想像してみるテイト。
「はぁはぁはぁ、でもちょっとカッコいいかもなコスチューム…はぁはぁ、ミルフに作って貰おうかな?ふふ」
「ざっとこんな感じですかね」
「ふぅ〜ん、なんかみんな小説とかマンガの中みたいな話ですねぇ、はぁはぁ」
「今教えて貰ったのって、僕たちが住むカナタで実在する人物の話なんですか?」
「さぁどうでしょうか」
「今話した内容は、ワタシが昔読んだ書物に載っていた物で出所は分かりません」
「現実かも知れませんし、誰かの空想なのかも知れません」
「ふぅ〜んそうなんですねぇ、はぁはぁ」
「しかしワタシ達が住むこの星には魔力が有りますし、魔人も【戒忌日蝕】で変身します」
「現にテイト君も竜に成った訳ですから、あながち全てが空想だとは言い切れませんね」
確かにそうかも…この世界には魔人が居て、変身して人間とは異なる姿に変身する。これまで何度も見てきた。あっそうだ!ミルフも獣人だし、狼男に変身出来るんだった!
それにトル爺は見た目カメさんだけれど、立って喋ってるし、アルフさんの異空間にはコロポックルも居るし。今まで想像して無かった事が起こってる。そう思うと変身もあり得ない話では無いのか…。
「今ふと思ったんですけれどぉ〜」
「はぁはぁ、逆に僕達の住むこの世界が誰かの空想で、今の僕達の生活も小説とかの内容だったら面白く無いですかぁ?」
「ほう、それは考えた事が有りませんでした、確かにそうならば面白いですね」
「想像した好きな事を自由に出来ると」
「テイト君なら何をしますか?」
「え〜迷っちゃうなぁ〜!」
「はぁはぁ、僕だったらぁ…」
座学は途中から雑談に変わっていた。二人であれこれ話しながらジョギングを続けた。
島を一周して今日のジョギングは終了。はは、膝が笑ってらぁ!汗もビショビショだけれどこのまま次の修行に向かう!
その前に魔素水で水分補給。ゴクゴク。ここでミルフと合流。はい次はシンプルに筋トレだ!腕立て伏せ、腹筋、スクワットをひたすら繰り返すぞ!
先生が交代。フォスさんからアルフさんへ!僕が筋トレをしている間、フォスさんはミルフと別のトレーニングをするらしい。
「おい!止まるんじゃねぇ!」
「オメェの覚悟はそんなもんか!」
「もっと気張れ!根性見せてみろ!」
「腰を反るな!真っ直ぐに!」
「おい!何回言ったら分かんだよ!」
この鬼教官、全然休ませてくれない!プルプルしてる腕、腹筋、脚にむち打ち、今出せる己の限界まで筋肉をいじめ抜く!
「ふんうぬあぁぁぁ!」
テイトの叫び!島に響く響く!
お読み頂きましてありがとうございました。
このお話で目標だった10万文字を超えました!ここまで続けてこられたのは、ひとえに読んで下さる皆様のおかげです。ありがとうございます!お話はまだまだ続きます。今後ともお付き合いの程、どうぞよろしくお願い致します!
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