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四十五話『ぬいぐるみ』

目覚める。あれ?ここはどこだっけ?僕は何をしてたんだっけ?真っ白な狭い空間に一人。とりあえず立ち上がって歩く。


ここが壁に囲まれた丸い空間だと分かった。どこかに出口はないかな?壁を触りつつ出口を探して歩いていると、頭上から何か落ちてきた。何だ?落ちてきた物を拾い上げる。


「…?」

サメのぬいぐるみ?突然不気味に笑い出す。驚いてその場に落としてしまう。地面に落下したぬいぐるみ。


「ぐぎゃあ…」

落下の瞬間ぬいぐるみはうめき声とも取れる声を上げ、簡単にぐしゃりと潰れる。中から血液なのかそれ以外なのか分からない赤い液体が溢れ、水溜まりのように広がった。


潰れたぬいぐるみも地面に吸い込まれるように消えてしまった。白かった床が赤く染まる。ゾッとする。…また何か落ちてきた。


ボトッ。サソリのぬいぐるみ。ボトッ。カラスのぬいぐるみ。ボトッ。ヒヒのぬいぐるみ。ボトッ。タコのぬいぐるみ。不気味な笑い声が辺りに響く。ぬいぐるみは尚も落下し続け、増え続けている。ボトッ。ボトッ。


「アハハハ!アハハハ!」

部屋中から笑い声が響く。意味の分からない現状。怖くなり、振り向いて走り出す。が、狭い空間。逃げ場は無い。足元がぬいぐるみで覆われた。足の踏み場が無くなる。


増え続けるぬいぐるみに足を取られ、転びそうになる。転ばないように足を前に出すと、ぬいぐるみを踏んでしまう。何かが潰れる感覚が足から伝わる。"ぐぎゃあ"声を上げるぬいぐるみ。床が赤く染まる。


反射的に足を離す。バランスを崩してお尻から転倒し手をつく。うめき声。手から伝わる何かが潰れる感覚。赤く染まる床。


呼吸が荒くなる。恐怖し、パニックになったテイト。いつの間にやら腰くらいの高さまで増えたぬいぐるみ。その中からもがき、抜け出そうとする。


その動きに連動して、次々と潰れるぬいぐるみ。辺り一面が真っ赤に染まる。自身の身体中も真っ赤に染まる。天を仰ぎ手を伸ばす。


ふと気付く。ここは…試験管の中?こちらを見つめる人物。誰かが頭上からぬいぐるみを入れている。その人物は…自分だった。ぬいぐるみの笑い声だと思っていたのは、試験管の外に居る自分の笑い声だった。


首の高さまで液体は増え、尚も増え続ける。笑い声も止むことは無く、響き続けている。

外の自分が試験管を左右に揺らす。液体が激しく押し寄せ、打ち付けられる。口と鼻、目からも液体が入り、溺れた時のように苦しい。


揺れ続ける試験管。苦しい…苦しい…。

「おーいテイト?大丈夫っすか?」


仰向けで眠るテイトの肩を左右に揺らすミルフ。顔もペチペチ叩く。

「うぅん…はっ!」

「良かった…夢かぁ…」


「おっ、起きたっすね」

「大丈夫っすかテイト?」

「だいぶうなされてたっすけど」


広場のベンチで眠っていたようだ。…嫌な夢だったな。背中が寝汗でびっしょり。

「そうか…ミルフが起こしてくれたんだ」

「ありがとねぇ」


「そんなそんな、あっ!そうだ!」

「姐さん!フォスさん!」

「テイトが起きたっすよー!」


アルフとフォスが呼ばれて来た。

「起きましたね」

「ご気分はいかがですか?」


「え〜っと、あんまり良くないです…」


「そうですか」

「そんな中で恐縮なのですが」

「先ほどアルフさんに説明した内容を、テイト君にもお話しして大丈夫でしょうか?」


「説明?ですか?」


「はい、貴方の事でいくつか分かった事がありましたので」


「分かりました…」

「お願いします…」

今まで見てた夢の事が気になってあまり気分は乗らないけれど。話は聞きたいな。


「アルフさんもおさらいだと思って聞いていて下さい」


「あぁ」


「オレも聞いてていいっすか?」


「ええ、構いませんよ」

「構いませんよね?」


「好きにしろ」


ベンチに横並びに腰掛けて話を聞く。

「まずはじめに」

「テイト君が"竜に成る"条件についてです」

「条件は二つあります」


「二つ?」


「一つ目に"魔素"」

「貴方は空気中の魔素を取り込んで、変身するための材料にしているようです」


「魔素?ですか?」


「空気中の魔素が少ないと、そもそも変身が出来ません」

「逆に空気中の魔素が多過ぎる環境、例えば魔王が持っている"闇"の近くや、皆さんが行こうとしている魔界などですかね」


「はい」


「魔素を取り込み過ぎると貴方は理性を失い、力が暴走するようです」


ふむ。じゃあ魔人との戦闘中の記憶が無かったのは魔素が多過ぎる環境で理性を失い、一緒に意識も失ったせいだったのかな?


「二つ目の条件は"強いストレス"です」


「ストレス…?」


「ストレス、圧力や負担の事ですね」

「ストレスの種類は身体的でも精神的でも構いません」

「とにかく大きなストレスを受ける必要があるようです」

「貴方に突然竜の力が覚醒めざめたキッカケは、"ルイボルさんの死"による精神的ストレスが大きかったのでしょう」


「確かに…」

…オクトとの戦闘。初めて竜に成ったあの日。親父が死んだ。クエラがさらわれた。僕も吹き飛ばされて。あの時が今までで一番悲しかった。一番悔しかった。一番怒った。


…他の魔人との戦闘の時も、刺されたり貫かれたり。怒っていたり。ストレスを感じてから竜に成っていた。うっ、その時の事を思い出すと気持ちが落ち込んできた…。

「テイト君大丈夫ですか?」


「えっ?」


「ここまでついて来れていますか?」

「そうですね、少し休憩しましょう」

お読み頂きましてありがとうございました。


今回ちょっぴりホラーっぽくしてみましたよ

怖さが伝わっていましたら嬉し


「なんか面白かったよー!」

「続きが気になった!」

と思って頂いた親愛なる読者様へ…


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