三十六話『釣られた』
ダイジェスト続き。二日目の朝。船内の床。そんな気はしてたけれど夢だった。お腹の上に柔らかい感触。まさか…と思いつつ確認。
…そんな気はしてたけれどお腹の上にアルフさん。寝相悪いのかな?おそるおそる起こす。
「あの〜アルフさん?朝ですよぉ?」
トントンと肩を叩く。もぞもぞ動くアルフさん。目と目が合う。翡翠色で宝石のような瞳。なんか恥ずかしくなって目をそらす。
「ん。」
気怠げなアルフさん。お腹の上からコロコロと降りる。むくりと立ち上がると、てくてくと部屋から出て行った。朝弱いのかな?
「何なんだろう…」
布団を畳んで部屋を出た。
顔を洗い船のデッキに。朝の日差しが眩しい!眩しいけど暑くなくて心地良い。朝の日差しは嫌じゃないよね。大きなあくび。
大きく伸び。アルフさんに召喚されたミルフ。朝ごはんの用意を始めていた。僕に気付く。
「おっ、テイトおはようっす」
「おはよぅ〜」
「食料の中に魚があったんで、今日の朝ごはんは焼いた魚っすよー」
「えっ!そうかぁ…」
「アレ?テイトもしかして魚嫌いっすか?」
「食べない人?釣り専でした?」
「いやぁ、お魚は好きだけれど」
「自分で釣ったのを食べたかったなぁって」
「昨日の釣果を思い出しちゃった」
二人の脳裏に浮かぶワカメと長ぐつ。奇声を上げながら釣り竿を引っ張る、変なテンションのテイトの表情。ニヤけるミルフ。
「ふっ…」
「すみません、思い出したっす」
「うん、食べよかな…お魚」
ミルフが準備してくれたホクホクのお魚は、口に含むとホロホロと崩れて美味しかった。
"今日は釣ってやるぞ…!"と思いながらお魚を噛み締める。うまい!もぐもぐ。
「ごちそうさまぁ!美味しかった!」
「どうもっす」
「よ〜し!じゃあ僕も釣りに戻るか!」
お皿を片付け、鼻息荒く釣り竿の準備。慣れた手つきで釣り針にエサを取り付け水面に。
周りに誰も居ないのに、大きな声で独り言。
「結局さぁ〜釣りは忍耐力と平常心なのよね"どれだけ釣れなくてもじっと待つ"」
「"何か掛かっても焦らない"これが大事」
「まぁ…お魚釣れた事無いんだけれど」
…う〜ん、釣れない。立ち上がる。釣り糸を水面に垂らしたまま他のみんなの様子を確認に行く。それぞれ思い思いの時間の使い方。
「ミルフさ〜ん?何やってるんすかぁ〜?」
聞くとミルフは戦闘で破れたり、穴の空いた服の修繕中だそう。"ほら"と見せてくれる。
「見えます?ここにも穴空いてたんすよ」
「えっ!全然分かんないじゃん!スゴい!」
「そうっすか?へへっ」
「そっちは僕の服?」
この前サソリの魔人の毒針でぶち抜かれたTシャツ。真ん中に特大の穴。これも治るの?ミルフに"どうぞよろしく"と言い残し移動。
船内のアルフさんところへ。スススと移動。そーっと中をのぞく。布団で寝息を立てて眠るアルフさんを確認出来た。
こうして見るとただの小さい女の子なのだけれど。一体何歳なのかな?自分の事は話したがらないし、聞いても教えてくれないよな。
「おい、なんか用か?」
「!」
「いや何でもないで〜す、お邪魔しましたぁ」
あれ?寝てなかった?起こしちゃったのかな?部屋からそそくさと離れる。デッキに移動しながら考える。
…まぁ何歳でも良いよね。過去に親父と何があったのかは気になるけれど。何か言いたくない理由が有るのだろう。
それじゃあ釣りに戻ろう。垂らしておいた釣り竿に動きは無い。座り込み再び釣り竿を握る。無心の表情で遠くをじっと見つめる。
ダイジェスト終わり。…以前釣れず。
暇すぎてデッキをブラシで掃除したり、途中休憩を挟みつつ待つ。昼ごはんを食べて帰ってきたけど変化無し。こんなに釣れないの?
これだけ待っても何も釣れないと逆に面白くなってきたぞ。よし!ルールを変えよう!南の島に着くまでに何も釣れなかったらクリアにしよう!そう言う仕様に変更しよう!
クリアしたらそうだなぁ…と、その時。船がガクンと急停止。落っこちそうになる。
「うわっ何だ?!危ない!」
「なんすか?船が止まっちゃったっす!」
服の修繕中だったミルフも異変に気付く。二人で行き先を指定するデッキ中央の長方形の箱を確認。船は進んでいる事になっている?
「どう言う事なんすかね?」
「ちょっと船内を見てくるっす!」
「ねぇ!僕はどうしようか?」
「テイトはちょっと待ってて下さいっす!」
「姐さん!大変っすー!」
「分かった!よろしくねぇ!」
大丈夫かなぁ?ふと目に入った釣り竿。あっ!揺れてる!急いで駆け寄り釣り竿を掴む。いままでと違って左右に移動してる!
「うほほ〜い!何だよぉ!」
「釣れちゃったらクリア出来ないじゃん!」
「残念だなぁ!あ〜あ残念だなぁ!」
言葉とは裏腹にニヤニヤが止まらないテイト。釣り竿を握る手にも力が入る。
「よ〜し!みんな待っててねぇ!今日の夜ごはんは刺身だよぅ!」
水面に魚影。これは…大きいぞ!あれ?魚影がどんどん大きくなる。もっと大きい?えっ?マグロ?カジキ?スゴイじゃん?!
「!」
水面から背ビレが顔を出した!サメの背ビレ!大変だ!サメじゃん!どうしよう危ない?釣り竿離した方が良い?分からん!
その時船内からアルフの声。
「おい!ガキ!気を付けろ!」
「魔人が近くに居るぞ!」
「えっ?」
全身が確認出来た。本来サメに有るはずの胸ビレが無く、代わりにヒトの腕。
しまった魔人だ…。ザッパーン。波しぶきと共にデッキからテイトの姿が消えた。
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