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十一話『狼男』

アルフが言う。

「オオカミ!獣化だ」


「はいっす!あっ、ちょっとその前に」


何をするつもりなのだろうか?ミルフは自身の着ていた上着を脱ぎ、丁寧に畳んだ。靴も脱ぎ、丁寧に揃えた。腕をダランと下に下げ、前屈みになった。すーはーすーはーと深呼吸。


「お待たせしたっす、行くっすよ」

低いうなり声を上げる。髪の毛、尻尾の毛が逆立つ。手足のツメが鋭く変化した。敵を見つめる赤い瞳。自宅の周囲を囲む影人形に向け駆け出す。赤い残像が暗闇に残る。


獣化したミルフはその鋭いツメで影人形を切り裂く。泡のようにはじける影人形。間髪入れず次々に影人形を切り裂いていくミルフ。


その光景を見るクロウとヒヒ。冷静に話す。

「彼も報告に有りました。"狼男ライカン"ミルフ」

「どうやら朝でも、満月で無くても、完全な狼に変身出来る特異体質だとか」


「ヒヒヒ、それは珍しい!」

「ぜひとも我々の"コレクション"に加えたいところですな、まぁ生きていればですがね」


沢山居た影人形をあらかた片付けたミルフのツメが、ヒヒの首元に迫る!(もらったっす!)


「おい!バカオオカミ!」


「ふん!」

ヒヒが額で手印を結び力を込める。首元まで迫っていたミルフの右腕にボッと炎が点く。動揺するミルフ。急いでUターンし、テイト達が居る方へ帰ってくる。


「熱っ!?トル爺!水!水ー!」


「ほれ、【青雨ブルーレイン】」

ミルフの上空に雨雲が浮かぶ。降り注ぐ雨。右腕に点いていた炎が鎮火し、プスプスと音を立てて白い煙が立ち昇る。


「大丈夫ぅ?ミルフさん?」


「テメェ!今まで何見てたんだ!あぁ?」


「うぅ、申し訳ないっす…」

さっきまでの勢いは何処へやら。耳を倒し、尻尾を丸め、肩を落とす。あからさまに落ち込んでいるミルフ。不憫に思ったテイトがミルフに声を掛ける。


「でも、凄かったよぉミルフさん!」

「目にも止まらぬスピードで、次々に影人形を倒していってたもんねぇ!」


「…そうっすか?まぁ、普通っすけど?」

ちょっと元気になり、少し自慢げなミルフ。


「だけど、影人形って普通の攻撃だと何回でも復活するんじゃ…?」


「その点は大丈夫っす!オレの首輪に、姐さんが光魔法を付与してくれてるんす」


ミルフが見せてくれた首元に、ワンちゃんに付けるような赤い首輪。待って、ネームプレート…。ちゃんと"ミルフ"って書いてある…。面白っ。元気になり尻尾を振るミルフ。


「姐さんの光魔法は強力で、影人形もツメで切り裂くだけで、復活できなくなるんすよ」

「まぁ、姐さんから離れ過ぎると、付与してもらった魔法の効果を失うんすけど」


テイト達の会話中、クロウとヒヒも新しい影人形を闇から補充しながら会話していた。


「あの青い亀、報告には有りませんでした」

「あの亀が降らせた雨、ただの雨では無く魔力を含んでいる様子」

「通常の水を掛けても消えないヒヒ殿の炎も、簡単に消されてしまい厄介ですな」


「いえ、問題無いでしょう、ヒヒヒ」

何か奥の手がありそうな表情でニヤリ。


「おい!テメェら、いつまで喋ってんだ!」

「見ろ、振り出しに戻ってんじゃねえか」

アルフに言われ、クロとヒヒの方を向くテイトとミルフ。影人形が元通り。むしろ増えてない?しょぼんとする二人。


「しまったっす…」


「すみませぇん…」


「まぁまぁ、そう怒らんでも良いじゃろ」


「テメェら、終わってから千切るからな!」

「はぁ〜あ、ほら来るぞ」


クロウが連続して弓を放つ。テイト達の方に向かって飛んでくる矢。ミルフが前に出る。

「オレに任せるっす、さっきより数が増えただけっすから通用しないっすよ!」


飛んでくる矢を一本、また一本と掴むミルフ。最後の一本が飛んでくる。自慢げなミルフは手を伸ばす。


「どんなもんっすか!最後っす!」

「はっ!ぐあっ?!」


最後の矢は軌道を曲げ、先と同様に掴もうと伸ばしたミルフの腕に刺さった。腕に滲む血。

「カッカッ、【曲矢カーブアロー】です」

「気に入って頂けましたかな?」


「痛い!痛いっす!」

腕に刺さった矢を引き抜く。腕にグッと力を込め、目を閉じる。しばらくの無言。大丈夫?テイトが声を掛けようとしたところ。


「ふぅ、治ったっすー!」

えっ?本当だ!傷が塞がってる!そう言えば、さっき腕が燃えてたのに、火傷になってないし、なんで?なんで?


「オレ、身体が丈夫なんすよ」


「ミルフさん、身体が丈夫なんだぁ」

…うん。詳しいことはまた今度教えてもらおう。"獣化"についても気になるし。まずは、この二人をどうするか、いや僕は何も出来ないのだけれど…。


「あのサルは"着火"で、あのカラスは自分の羽根から"矢の生成"と"軌道操作"ってとこか」

「意外と厄介な組み合わせかもな」

アルフはそう言いながらもニヤリと笑った。


遠くの敵には火の点いた矢で攻撃。近づいて来た敵には直接火を点ける。この二人強い!アルフさん達はどうするつもりなんだろう?


「オオカミ!獣化度を上げろ、カメ!オオカミに【強化呪文バフ】を掛けろ」


「はいっす!」


「了解じゃ」


ミルフが集中力を高める。全身から狼の体毛が。身体はより筋肉質になり、顔と脚が狼のようになった。昔、本で読んだ"狼男"の姿とピッタリ合致した。カッコいい!


トルトスさんが何かブツブツ唱える。直後、魔法陣に囲まれるミルフの身体。よく分かんないけど、強化されたみたい!カッコいい!


ミルフの遠吠えが辺りに響く。


「オオカミのあの姿は長くは続かねえ」

「次の一撃で決めてこい」


「がんばるっす」

あっ、喋れるんだ…。何となく喋れなくなるもんだと思った。うん!頑張れミルフさん!

お読み頂きましてありがとうございました。


安心して下さい。ミルフは半ズボンを履いています。


「なんか面白かったよー!」

「続きが気になった!」

と思って頂いた親愛なる読者様へ…


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