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神殺し召喚  作者: ビターグラス
13 黒い城の地下へ
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復活

 デンファレはトールが戦っている姿を後ろから見ていた。体はなぜか動かない。しかし、既に消滅の危機感などはない。体は動かないのに、消滅する気がしない。この暖かさを例えようとしても、彼女にこの心を体感したことがないから例えようがなかった。ただ、これまで会ってきた人たちが持っている心がこんな感じなのかもしれないと思った。


 トールと王の戦いは続く。しかし、徐々にトールが押されている。消耗しているのだから、当然だ。デンファレは彼を助けたくて、体に力を入れようとすると、指先がピクリと動いた。その暖かな心が体に満ちる感覚があった。彼女は血が流れるというの感覚なのかもしれないと思った。ジワリと温かさが広がる部分が次々と動くようになる。信仰の力はもうないはずなのに、彼女は息を吹き返した。倒れているだけの彼女が立ち上がる。体に傷はない。足も手も振るえていない。全てが元通りだ。


「私、立ってる」


 手を見て、握ったり開いたりして、自身の体が動くのを確かめる。思い通りに動くそれが自分の体だった。信仰の力は感じない。だが、動ける。今の彼女にはそれだけで十分だった。足元に落ちている透明な剣身を持つ剣を拾う。左右に振って、剣の重みを感じるが、それは最初と変わらなかった。彼女は剣を構えず、とにかくトールの加勢に向かう。走ると体が軽かった。


 彼女はようやく、トールの隣に並ぶことが出来た。彼を見れば、見たことないほどに疲れた顔をしていた。そして、デンファレを見て、目を丸くしていた。驚いた顔も新鮮だ。そんな彼の顔を見れたことが嬉しかった。もう消えてしまうと思ったのに、今は彼の隣にいる。


「デンファレ。大丈夫なんですか。無理は、しない方が良いと思います」


「それがね、大丈夫なのよ。それどころか、前より体が軽いの。それに何といえばいいのか、とにかくもう元気なの。心配しなくても大丈夫」


 デンファレの表情に無理をしている様子はなく、それどころかその顔に負けるかもしれないと言った不安もなさそうだった。トールはその顔を見て、本当に大丈夫そうだと思った。


 相手は信仰の力を感じない神がなぜ消滅していないのかわからないと言った様子だが、そこに怒りや恨みなどはない。簡単な話だ。起き上がるなら、倒せばいいだけだから。彼は地面に剣先を突き刺していた剣を引き抜き、剣先をデンファレに向ける。殺意が籠った視線がデンファレに向けられていたが、彼女が恐怖している様子はない。心なしか、張り切っているようにも見える。彼女も見たことない表情だ。不安ではなく、自分が勝つということに期待している。そんな心がみえるような気がした。


 相手はデンファレを一撃で落とした技を再び使った。一瞬で彼女に詰め寄り、それとほぼ同時に剣が彼女の胴に迫る。彼女はその剣に当たらないように身を躱す。その動きに重さがない。蝶が羽を動かすような身軽さがあった。しかし、相手の攻撃はそれだけでは終わらない。ごつごつの剣が横に振られ、再び彼女を襲う。デンファレは、その攻撃を剣で受けたかと思ったが、剣の側面を滑らせて、後ろへと流す。勢いの消えない剣につられて、相手は回転しそうになるが、力で剣の勢いを抑えた。その動作の間に、彼女の剣が相手の胴を突こうとするが、相手も軽くその剣を躱した。今の彼女の剣でも、相手にとっては遅い剣だった。うかつに相手に近づいた彼女に相手の拳が向かってくる。ボディの辺りを狙ったパンチだったが、それは当たらない。相手は微妙なその距離でも蹴りを入れようとしたが、すぐに足を引っ込める。相手の足の軌道を先には剣が構えられていた。足を戻した一瞬の攻撃しない時間。それは攻守が入れ替わるのに十分な時間だ。


 デンファレは剣を振り上げ、刃を当てようとした。相手はそれを躱すために、後ろに下がる。しかし、次の瞬間にはデンファレの剣が相手の胴に突き刺さっていた。相手からすれば、剣を振り上げた次の瞬間には届かないはずの自分に剣が突き刺さっていたように見えただろう。実際、デンファレは剣を振り上げていない。相手の大きな剣に隠れるように腕だけで振り上げる動作をしただけだ。そこから相手の胴を狙うのは難しいことではない。


「くっ」


 相手の口からそんなような音が漏れ出たが、彼女は容赦などしない。彼女は突き刺さった剣を下に力を掛けて、真下に切り抜ける。そこから斜めに振り上げて、左足の付け根を斬る。その剣の軌道上にある手首の辺りも剣が駆ける。相手は左半身がボロボロだ。傷口から黒い煙が大量に出ている。信仰の力が削れている証拠だった。


 それでも信仰の力は尽きず、彼の体は修復してしまう。その修復中の彼に斧が飛んできた。それは肩の辺りに突き刺さり、胴と肩の間をぱっくりと割った。煙の量が多くなる。


「そろそろかな。しゅがお目覚めになるには十分な量のはず」


 相手の呟きの意味が分からない。しかし、相手が動かない間に消滅させるべきだと、デンファレは連撃を与える。血の代わりに出る煙が彼女の視界を奪うほど噴き出す。それでも相手は攻撃してこない。


(何……? もしかして、罠?)


 デンファレもトールもそう考えたが、もう遅い。薄暗くてよく見えていなかったが、黒い煙はその場に停滞しているわけではなかった。それが向かっている先は相手の後ろにあった黒い石。黒い石が煙を吸い込んでいるように、吸い込まれていく。


 やがて、石にひびが入る。徐々にひびが石を伝って大きくなっていく。

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