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神殺し召喚  作者: ビターグラス
12 準備はできていないけれど
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いざ、城へ

「まあ、待て。少し落ち着け。とりあえず、上から奇襲をかけることにする。城の頂上か、地下の最下層にボスがいるというのが、一般的なだからな。まずは一番上に邪神がいないか確認する。そこにいなければ、最下層にいるだろうからな」


「わかったわ。……そう言えば、ヴィクターは来てくれないの?」


「俺は女神の使いとして、三国を邪神軍から守るから無理だな」


 ヴィクターはわざと彼女にもすぐにわかるように説明口調で話している。彼のその言葉を聞いて、感動しているのか、デンファレは瞳が潤んでいた。それでも、まだ、何も守れていないので、お礼は言わない。ヴィクターの全てを理解しているわけではないが、きっと彼なら終わってから礼を言えと言いそうだと思ったからだ。


「あと、神に効くかわからんけど、一応持っておけ」


 ヴィクターがデンファレの首に人型の人形が付いたネックレスを首からかけた。それは着用者の傷を人形に移す効果のあるネックレスだ。生物が即死するような傷は人形には移せない。しかし、神の場合は即死することはない。しかし、神は生き物という分類ではない。厳密には死ぬわけではなく、消えるというのが正しいのだ。だから、その人形が効力を発揮するのかはわからない。ヴィクターはお守りのような役割だと思っていた。


「あと、もう一本の剣。これは神にしか効かないやつだ。自分を斬らないようにな」


 彼から渡された剣は最初にデンファレ自身を傷つけた短剣と同じ種類の刃だ。剣を鞘から抜いて剣身を確認する。形としては、最初にヴィクターにもらった剣と同じ形状をしているため、その剣を扱うのに苦労はしなさそうだと思った。


「よし。じゃ、行ってくるわね」


「そのまま落ちたら、城が崩壊するからな。ゆっくり降りる方法ないか?」


「それなら、私が運びましょう。超能力を使えば、簡単なことですから」


 ヴィクターがトールの申し出を意外に感じていた。それはそうだろう。最初はあれだけ嫌っている様子だったのに、今では面倒を見ているのだ。それだけの旅をしてきたのかもしれないとヴィクターは思った。彼自身もトールと最初から仲が良かったわけではないのだ。


「それでは、今度こそ行きましょう」


 トールが両足の鎧を召喚して、彼女を横抱きで抱き上げる。二人はヴィクターと一度、顔を合わせた。作戦らしい作戦もない。デンファレだって、未熟そのものでその自覚すらある。それでも、やるしかないのだ。デンファレと抱えたトールがヴィクターが地面に作った穴に飛び込んだ。それをヴィクターは見送り、そのあと、自身の行動を開始した。




 黒いだけの城が徐々に近づいてくる。トールは城の天辺目掛けて、どうにか降りていく。姿勢のバランスが悪いのか、空中では思うようには動けない。地面が近づくにつれて、落下速度を落としていった。


 二人が下りることが出来たのは城の天辺。屋上と言えるような場所でおそらく、彼らの立っている場所の下が城の一番上にある部屋だろう。人が使う城なら、大抵王様がいる部屋だ。若しかすると、この城の下に邪神がいるかもしれない。


 とりあえず、デンファレをその場に降ろして、屋上から一つ下の段を音を立てないように覗く。覗いた場所には兵士はいなかった。それ以外の場所を見ると、部屋に入るための扉が付いている場所を見つけた。扉の前には黒い石でできた人形が置いてあった。その人形からは魔気の気配がしている。


「多分、ゴーレムよね。あれ」


 石や金属を利用して人型を作り、魔気を込めたコアを埋め込むと動かすことが出来る。一度動かせば、何千年と動かすことが出来る道具だ。何かを守るためのタフさがあるが、コアを壊せば簡単に倒せることから、防衛力が無いことがばれて、それ以来ゴーレムを使う者はいなくなったはずだ。しかし、何故かそれがここにいるのが不思議だった。


「トール。あれの胸の辺りにガラス玉みたいなのあるでしょ。あれを突けば倒せるわ」


 トールは一つ頷くと辺りを警戒しつつ、ゴーレムの前に降り立つ。その二体の石像が彼に気が付いて動き出す前に、胸にあるガラス玉を拳で砕いた。それを確認してデンファレも一つ下の段に降りる。目の前にある扉は黒いだけでそこに重厚感などはない。黒一色で装飾品もない。王様のいる部屋と言うには、貧乏くさい扉だった。それでも、警戒しながら扉をゆっくりと開いていく。扉を開いて中を覗く。その空間には一人の兵士がいた。黒いのは髪だけで、赤いローブを着ている。デンファレはどこかで見たことあると思ったが、それはトールが着用しているものと似ているのだときがついた。トールと違うのは槍を持っているということだろうか。


「来たか。思ったより遅いな」


 男が声を出す。その声はデンファレに変えたわけではなく、その横にいたトールに掛けたようだった。


「あなたは、まだ邪神側にいるんですか。いい加減、騎士団に戻りなさい」


「指図するな。お前が死なないなら騎士団には戻らない。だから、ここで決着をつけてくれ」


 赤いローブの人間は操られているわけではないようだ。それなのに、トールに持っていた槍を向ける。デンファレは全く持ってどういう状況なのかわからない。二人が敵同士なのかもわからない。トールからは彼を心配しているような雰囲気があるが、相手は敵意むき出しだ。そんなこんなでデンファレが戸惑っていると、トールが彼女の様子に気が付いた。


「どうやら、ここには邪神はいないみたいです。最下層の方にいるようですので、先に下に降りていてください。さっさと片をつけて追いつきますから」


 トールはデンファレから目を離して、相手を見ていた。


「すみませんね。前の世界のいざこざです。見ていても意味が分からないでしょうから。本当に先に進んでいてください」


 トールに限っては負けることはないだろうが、苦戦することはあるかもしれない。しかし、彼が先に進んでいてほしいといったということは、ここにいられたくないのだろう。デンファレは少し迷ったものの、その部屋の下の階層へと続く階段を見つけ、そこから降りていく。赤いローブの男の目的はトールだけのようで、彼女のことは放置であった。

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