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神殺し召喚  作者: ビターグラス
11 マギアルの危機
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ベルの本気

 宙から落ちてくる巨大な岩石の塊。その魔法名を彼女は思い出していた。メテオという魔法だ。とある獣人が作り出した魔法で誰も使えないと判断された魔法。かなり昔の平和な時にできた魔法で、現代ではベルのような魔法マニアでも知っているかどうかと言った魔法だ。それを現代で使われるとは思わなかった。ベルもまさか、この魔法を目にする日が来るとは思わなかったので、驚いていた。


 しかし、すぐに我に返った彼女はその魔法の無効化しようと思ったが、相殺するのは難しいことに気が付いた。メテオを相殺するだけの魔気を操作するのは中々難しい。さらに今空にあるメテオは消費されたとは言え、人一人の魔気を消費して作られたものだ。つまりは、人一人分の魔気をこの場で使う必要があるということになる。それを用意し、コントロールするとなれば、ベルでも死ぬ可能性がある。


(さて、こんなところで死にたくはありません。しかし、あれを壊さないことにはどの道死にますね。……被害くらいは小さくできるでしょうか)


 彼女は掌を天に向けて、巨大な岩石に狙いを定める。


「風よ」


 魔法を使うために体に力が入る。いつも以上に魔気を集めるために、風の魔気に呼びかける。彼女の周りの草木が揺れ、徐々にその風が強くなっていく。その中に、体内にあった風の魔気を含めて、魔法の操作性を増す。あの隕石以外のものにはできる限り傷をつけたくない。


 彼女を中心にして、風が渦巻く、それが上昇するにつれてその輪が大きくなっていく。やがて、地上から広がる輪までが繋がり、大きな竜巻となる。その状態で、されに上へと竜巻が伸びていく。竜巻が隕石に迫り、その輪の中に隕石が入る。隕石が入ったところから竜巻と相殺して、落ちてくるところから隕石が小さくなっていく。隕石が落ちる速度より、竜巻が伸びる速度の方が早く、隕石がドンドン飲み込まれていった。


(やはり、全ては無理でしょうね。半分くらいまで削ることが出来れば、上出来と言ったところでしょうか)


 ベルは近くに倒れているローブの男をちらと見た。動きもしない、話すはずもない屍だ。


(本当、最悪の置き土産ですよ。命を犠牲にした魔法なんて、醜い魔法です)


 その醜い魔法がマギアルを終わらせようとしているのだから、全く笑えない。彼女にとって、こんな大きいだけの下品な魔法にここら一帯を台無しにされるのは我慢ならないことだった。しかし、どれだけ意地を見せても、命一つ分の魔法を消すには命一つ分と同等の魔法が必要だった。彼が魔法使いでもなければ、ベル一人でも命を掛けずとも相殺しきれただろう。しかし、そう言うわけではない。もう一人、ベルと同等の魔気量を持った人がいないと相殺しきれないだろう。




「オブストっ! 空に巨大な岩が出てきた!」


 デンファレを運び込んだ病院の扉を大きな音を立てて開き、入ってきたのは先ほど彼らと一緒に戦っていたエルフの一人だ。


「静かに入って来いよ。彼女が寝てるんだぞ」


「あ、ごめん」


 しかし、その心配は既に遅かった。デンファレがゆっくりと体を起こしたからだ。彼女はゆっくりと目を開き、辺りをキョロキョロした。そして、ようやく気絶する前のことを思いだしたのか焦ったような表情で、辺りを見回す。そこにオブストの顔を見つけた。


「ねぇ、あれはどこにいったのよっ。もう倒したの」


「ああ、あんたが倒したんだ。そのあと、気絶しちまったから、ここまで運んだんだ」


「そう。よく覚えていないのだけれど」


「ちょっといいか。それどころじゃないって。外出て空を見てくれ」


 デンファレとオブストはエルフの言う通り、病院の外に出た。それから、空を見るとそこには巨大な岩石が落ちてきていた。


「まさか、誰かがメテオの魔法を使ったのかしら」


 二人が見始めたタイミングで、隕石の下からかなり薄い緑色の竜巻が伸びてきているのが見えた。それが隕石に届き、隕石を削っているのが確認できた。


「どんな魔法だろうが、ベルがどうにかするだろ。今回だって、あの竜巻はあいつのだろうな」


 魔法に関してはほとんど知識の無い彼は、魔法の対処は全てベルに任せればいいと考えていた。しかし、エルフの中には彼女ほどではないものの、魔法に精通している者がほとんどだ。そして、今、オブストに岩石のことを伝えに来たエルフもその一人であった。だから、いくら凄腕のベルでもあの魔法を一人で相殺しきれるはずがないことを理解していた。オブストにそれを伝えたが、そんなはずはないと言って信じようとしていない。だが、デンファレには彼の言うことは理解できた。ベル一人に背負わせるには大きすぎる重荷になるだろう。あの竜巻も長く弄るのは大変で、あの岩石を相殺しきるとなれば、死を覚悟する必要があるほどだろうと予想できた。


 デンファレは自分の中に残っている信仰の力を改めて確認する。女神の力を解放すれば、隕石を壊すことは容易いことだろう。しかし、信仰の力が無くなれば、神は消滅してしまう。さらに、女神だと明かすことになる。助けてくれない最低の女神が、自分だとばれてしまえば人間の国の門でのトラブルより酷いことになるかもしれない。


「そんなこと言ってる場合じゃない、か。トール、ごめん。邪神は何とかしてほしい」


 消滅すれば、この世界を救うことなどできなしない。だが、今はトールがいる。ヴィクターも手伝ってくれるかもしれない。何にせよ、頼りになる彼ならなんとかするだろう。そう思って、彼女は消滅と引き換えに、このマギアルという国を救うと覚悟を決めた。


 オブストたちから走って離れていく。後ろからオブストの声が聞こえたが、足を止めて聞いている暇はない。彼の話を聞いている間に覚悟が揺れないとも限らないからだ。


 彼女はマギアルのはずれ、人気のないところまできた。彼女の手元には五枚のカード。五枚のうち、デンファレ自身の絵が描かれたカードに触れた。

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