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神殺し召喚  作者: ビターグラス
10 エルフの国 マギアル
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真剣な模擬戦

 先に動いたのはトール。盾をベルに向けて、剣を構えて、彼女の方へと向かっていく。ベルも大人しく彼の接近を許すはずもなく、彼女はトールの周りにいくつかの風の刃が出現し、それらは彼の周りを回る。その魔法がいつ、彼に向かって飛んでいくのか、彼にはわかるはずもなく、常に警戒しなくてはいけなくなった。ベルの動きに集中したいのに、風の刃が意識を分散させている。トールは集中できないことが相手の思惑通りになっていることはしていても、意識を分散せざるを得ない。ベルが魔法の手練れであるのだから、この風の刃に当たっても、当たらなくても、そこからの戦術を既に立てているだろう。ならば、できる限りダメージを受けないことを優先するべきだろう。


 トールは走るのをやめて、ゆっくりとベルへと近づいていく。その様子をベルは見て、自分へと近づく道を彼の周りを周回する刃が阻むように動かす。トールはその魔法を回避しないとどれだけのダメージを受けるかわからないので、躱すしかない。そのせいで、うまく彼女には近づけない。トールは風の刃を三度ほど躱した後、自身の足元から細い土の柱を生えさせた。その先に足を乗せて、軽く飛んだ。トールは上ではなく、斜め右前に移動する。風の刃の包囲から抜け出し、彼は土の塊を作り出して、ベルへと飛ばそうとした。しかし、その魔法は発射した瞬間に消失した。


 ベル以外には認識できなかったが、トールが魔法をはなった瞬間に、ベルが風の魔法を土の塊の前に出現させた。その結果、相殺したというわけだ。トールですらその技術を認識できない。彼がいくら強くても、この世界の魔法に慣れていないというのはあるが、それでも今までこの世界での戦いで、トールが認識できないものはなかった。さらに、トールはベルの魔法の実力がヴィクターに負けず劣らずである可能性すら考えた。しかし、彼にはそんなことを考え続ける余裕など無い。


 ベルはトールの動きを観察し続けていた。そうしながら、次の行動パターンをいくつか想像して、それに合うように魔法を準備している。だから、魔法の出が早く、先手を取っているのだ。そして、それを可能とするのは膨大な魔法の知識と、戦闘経験であった。子供のような見た目でも積み上げてきたものは本物だ。トールもかなりの戦闘経験を積んではいるが、ベルのそれは彼を遥かに凌駕していた。トールはこのままでは勝てないと判断した。しかし、このまま負けを宣言するのはプライドが許さなかった。


「ベルさん。超能力を使って戦ってもいいでしょうか。私は実践では超能力を使っていまして、よろしければ許可していただきたいのです」


「構いませんよ。私の訓練にもなりますでしょうし」


 ベルは考えることも無く、簡単に頷いた。彼はその場でローブの五つ葉のクローバーに触れ、手足の鎧を呼び出し、装着した。武器は木剣と木の盾のままだ。武器には身体能力の変化をもたらす効果はないため、木剣でも十分に超能力の効果は出る。


「綺麗な鎧ですね。神々しいです」


 ベルは彼の鎧を見て、驚くこともなく余裕そうにそう言った。トールは鎧をつけて、再びベルへと向かっていく。先ほどとは段違いの速度だ。走るというより、一歩一歩は低くジャンプしているような状態。すぐにベルの元に行けると思ったが、超能力を使ったところで簡単には近づけなかった。


 ベルは細い棒状の土の柱を彼の進行方向に生えさせた。トールはそれが邪魔でうまく前には進めない。壊そうと思ったものの、壊した時に何か起きるかもしれないと思うと、簡単には手出しできない。それどころか、ベルがさほどより実力を発揮しているのか、トールは後ろに下がらされていた。とにかく、ジャンプ寸前の進行方向に魔法が設置され、着地寸前の着地位置に魔法が出現する。鎧が無ければ、確実に直撃する位置に魔法が置かれ、攻撃するどころか対処が後手に回って、ベルとのよりは開けさせられ続けていた。トールは鎧を着ても全く歯が立たない。彼女の真の実力も知ることは出来なさそうだ。そうなると、彼女にダメージを与えられずとも、彼女に触れるだけでもしてやりたい。珍しくトールの心に火が付いた。


 トールは魔法を設置された移動先に、ジャンプした。そのまま突っ込めば、魔法に当たるが、彼は魔法の手前で空気の塊を足元に出した。それを足掛かりにして、空中でジャンプ。接地された魔法を回避して、ベルに少しだけ近づく。次の道も同じように攻略する。先ほどと同じくらいベルに近づく。トールの心に期待が沸いた。彼は再びジャンプした。もう、ベルの方に飛べば、手が届くという距離。


「中々、意地があるみたいですね。魔法の使い手としては大事なことです」


 彼女の言葉がトールの耳を打つ。そして、トールは自身の負けを悟る。目の前に、黄色に輝く槍が迫っていた。それは一瞬で、彼の体を貫いた。

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