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神殺し召喚  作者: ビターグラス
10 エルフの国 マギアル
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館主の肩書は飾りじゃない

「さて、試したい魔法理論あるそうなので、貴方からどうぞ」


「はい。お願いします」


 ベルとトールは魔法が使いやすい距離を取っていた。大体、フィールドを半分に割り、それぞれの面の中央辺りに立っている。トールは特に体を動かさずに魔法を使用した。詠唱もない。彼の体から見えない無数の風の刃と水の球が当たりに散らされる。その刃はデンファレの方には飛んでいかないようにしていたため、ただ突っ立っているデンファレには何の影響もない。


(なるほど。うまく混ぜないと、こうなるわけですか)


 彼は次に風の刃に水が乗るイメージをして、さらにそれが一方向に飛んでいくイメージをした。すると、先ほどとは違い、三日月形の水の刃がかなりの速度でベルへと向かっていく。ベルは向かってきた魔法を目の前で散らせた。デンファレはそんな魔法を知らなかった。そもそも、超能力でも相手の魔法を打ち消すというものは生まれるはずがないのに、それを魔法で体現するというのは中々難しいことだろう。


 だが、真相はそんな単純な話ではない。トールはベルが何をしたのか、目には捕らえられなかったが、先ほど読んだ魔導書の中に書いてあったことが証明された瞬間だった。水と火、風と土。それぞれがぶつかると打ち消しあうというものだが、どちらかの量が多ければ、打ち消しあっても爆発する。爆発しなかったということは、ベルはトールが放った魔法に込められた魔気の量を完全に把握していたのだ。トールにすら、その技術の習得にどれだけかかるかわからない。それだけ、凄い技術を持った人なのだ。


「では、次は魔法の戦術の訓練をお願いします」


「ええ、わかりました。先に手本を見せた方がよろしでしょうか」


「お願いします」


「では、まずは簡単に」


 ベルの周りにはいつの間にか、水の球が浮かんでいた。彼女も無詠唱で魔法を使っている。その水の球が、トールへ向かって飛んでいく。その球は正確性は皆無で、トールの周りに着弾して消えていく。球が消えるとすぐに、ベルの周りにそれが出現し、それが彼へと向かっていく。トールはその意味が分かった。それは単純な逃げ道を塞ぐ行為だろう。続けて、彼女の正面に半透明の緑の槍が生成された。その槍の周りには風が巻き起こっている。彼女は特に命令を出したような素振りはなかったが、槍は彼の方へと飛んでいく。それは正直に彼へと真っ直ぐ飛んでいく。トールは裏があるかもしれないと思いながら、槍を横っ飛びで躱した。横に飛んでも、水の球が飛んでくる範囲には入っていない。しかし、彼の着地とほぼ同時に、彼の足元から土の棘が飛んで来る。彼が避けようと体を動かす前に四方に土の壁が突き出た。それでも、壁に体を突っ張って土の棘に刺さらないようにしたが、それも無駄だと言わんばかりに、その土の壁でできた四角い筒の上に赤い大きな球が出現していた。それは土の壁を徐々に焼いているようだった。熱で金属が溶けるように土が燃えて溶けていく。トールはベルとの実力差を悟った。彼にその熱の塊が到達する前に、全ての魔法が解除された。


「簡単な戦術の一つ。追い込み、です。ただ、物量で押し切るような形なので、あまり美しくはないですね。ただ、戦術の基礎の一つは、相手を思い通りに移動させることですから、追い込みの戦術が使えないと、他の戦術も使えないでしょうね」


 ベルは少し得意げに解説を行う。その開設には力が入っている。それだけ魔導書が好きなのかもしれない。


「例えば」


 ベルは拳ほどの大きさの土の塊をトールへと放つ。トールはそれを飛んで避ける。何か大きな魔法が発動するかもしれないと思ったのだ。しかし、実際に発動していた魔法は足元から出ていた。それは薄い壁のようなものだ。その壁は彼の足に当たり、彼は空中で体勢を崩す。さらにその壁が彼の横っ腹にぶつかり、彼はうっ、と口から漏らす。攻撃はそれだけは無く、下から来た壁と同じような土の壁が上からも来て、彼の体を挟み込む。壁同士がくっついて、トールを拘束した。


「こういうこともできるんです。使用した魔気の量は大したものではありません。拘束することで無力化を図ることもありますから、こういう戦術も覚えておきましょう」


 壁が消失して、トールが地面に落ちる。デンファレはトールをこうも手玉に取ってしまう人がいるとは思っていなかったため、驚きを隠せない。しかし、彼の真の力は魔法でないことは理解している。あの鎧の力を使いこなし、様々なものを打倒してきたのだ。魔法で負けることくらいはあるだろう。


「素晴らしいですね。この魔法の力。自分でもこう思うとは思いませんでしたが、私との実際の戦闘を想定した模擬戦をしていただけないでしょうか。剣や盾を使っての戦闘訓練をお願いします」


「……そうですね。実践で、武器を交えて魔法が使えないのでは意味がありませんし。良いですよ、相手になります」


 ベルは少し考えていたようだが、結局は彼のお願いを聞くことにしたらしい。トールが使用する武器を聞き、ベルは訓練所から少しの間出ていった。戻ってきた彼女の手に握られていたのは、木の盾と木剣をだった。それを彼は受け取った。二人は先ほどと同じような位置について、戦闘準備を完了させた。


「では、始めましょう」


 ベルの静かな宣言を合図に、真剣な模擬戦が始まった。

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