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神殺し召喚  作者: ビターグラス
7 こんな時でも小悪党は来る
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暗い心で

「は、そんな、脅しに私が退くと思ってるのかい?」


 女盗賊は微かな存在感を持ったデンファレが怖くなり、そんな強がりを言っていた。彼女には退くという発想はない。手を出してしまった以上、何かは持ち帰らないといけない。そんな使命感のようなものを持っていた。


 デンファレはゆっくりと、女に近づいてく。ゆらりと左右に体を揺らして、近づいていく。剣先が地面に擦れて、微かな金属音を出している。女は怖くなって、短剣ではなく、鞭を彼女に向かって振るった。しなる鞭はかなりの速度でデンファレの顔へと向かっていく。彼女はそれを認識していた。鞭を剣の面で弾き、鞭が剣に絡まらないように剣を丸く動かし鞭を地面に叩きつけた。そして、その鞭を振るった女へと暗い視線を向けた。女は自分を人として見ていないことを理解した。魔獣が人間を殺すときより躊躇いなく気安い意志だ。女の背に何かが這い寄ってきていた。無意識の内に目の前の綺麗な女性が魔獣よりも人間よりも残酷なものであると理解しても、彼女は盗賊であり、強がりな彼女はそれを無視した。




 トールはデンファレが剣を抜いて、女盗賊に近づいているのを見た。


(剣を抜くことが出来ていますね。しかし、様子がおかしい……?)


「おい、よそ見すんなよっ」


 男の盗賊が振るう斧は彼には全く当たらないが、トールもまた、彼の粘着質な斧から逃げられない。二本の斧の内、どちらかが彼の蹴りや拳を受け止めてしまい、彼の攻撃は相手に対したダメージにならない。これを続けていれば、先に動けなくなるのは盗賊の方だろう。だが、それはすぐに決着がつくわけではない。何とかして、デンファレを助けないといけないのに、それが出来ない。いっそのこと、超能力を使って殺してしまおうかと思ったが、それでデンファレが納得しないことが簡単にわかる。一人でも殺してしまえば、きっと彼女はこの世界を救う前に消滅することを選んでしまう気がするのだ。


(デンファレ)




 デンファレは女の前にいた。何度か鞭を捌いて、ゆっくりと近づいて、今、女の目の前にいる。剣がゆっくりと持ち上げられる。頂点まで持ってきたところで、剣を加速させて、相手に振り下ろした。女盗賊はその剣を短剣で受け止め、弾く。デンファレが剣を再び震える位置にする前に、女の方が短剣を突き出した。デンファレはそれを後ろの飛んで避けた。その反動を利用して、剣を前に持ってくる。相手に剣の面が見えるような構えになり、その構えのまま、前に突っ込んでいく。先ほどまでのゆったりとした動作ではなく、確実に走って近づいていく。相手が反応する前に、剣の面が相手の胴にぶつかる。女は口から漏れる空気で、喉から音が出たが、それよりもその衝撃が地味に痛みを持続させている。斬られるより、打たれた方がその痛みが残る。


「あんた。何なの。怖いんじゃないの。もう戦えないんじゃないのっ?」


 デンファレへの言葉は届かない。相手が言葉は意味を持たず、デンファレは剣を相手の腹に向けて突き出した。さすがにそんな見え見えの攻撃には当たらない。デンファレはそのまま、一歩踏み出し、剣を引く。そして、剣を横に構えて、剣を横に振るう。剣の速さは先ほどよりも速くなっていく。それでも、まだ女盗賊が躱せない程ではない。そもそも、一振りだけであれば、回避するのはむずかしいことではないだろう。


 女盗賊はやれたままではいられないと、鞭と短剣を構えなおした。ようやく今になって、女の戦う準備が出来たというところだろう。今までは、虐めてやるという心持ちだったのが、そうもいかなくなった。いたぶって勝てる相手ではないかもしれない。相手の技量がわからなくなった以上、手加減はできないのだ。


 デンファレは一度剣先を地面にぶつけた。剣と地面にたまたま落ちていた石がぶつかって、金属音を響かせる。それが開戦の合図であるかのように、女は鞭を振るい、デンファレは剣を持って距離を詰める。今までの動きとは全く違う動きだ。それを見ても、女盗賊は怯むことはない。近づいてくるデンファレを見て、短剣を構える。鞭も短く振るうような持ち方をして、近づいてくるデンファレに備えている。


 先手はデンファレの突きだ。相手は体を逸らして躱すが、剣はそのまま女の体に吸い込まれるように、華麗に刃が近づいていく。女は短剣でそれを抑える。デンファレの武器はその剣一本だ。対して、相手の武器は短剣だけではなく、鞭もある。女は鞭を短く振るい、デンファレの顔に当たる軌道で振り回す。デンファレはそれを器用に体を捻り、剣を相手の短剣から少し離す。その剣が相手の短剣をするりと避けるように滑り、短剣の内側に入った。剣は相手の胸の辺りに入ったが、デンファレの体勢も悪いせいで、深い切り傷にはならなかった。しかし、それでもデンファレとは思えない剣術。相手の攻撃を誘い、攻撃させて、そこにカウンターを入れる。最初に教えてもらったカウンターの応用なのかもしれない。さらに、本当の最初の頃よりは戦闘経験も増えている。何より、今は世界がどうでもよくなっていて、相手を気遣う必要が無いのだ。それが枷の無い今のデンファレの剣の実力なのだろう。

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