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神殺し召喚  作者: ビターグラス
7 こんな時でも小悪党は来る
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小悪党でも弱くない

 盗賊たちが武器を構えても、トールは武器を出そうとはしていない。盗賊たちはそれを見て、彼が武闘家だと理解した。トールにとっては一番力を抑制出来るため、拳を使っているだけなのだが、それでも盗賊たちを倒してしまったのだから、彼を武闘家と勘違いしてもおかしなことではないだろう。


 トールは二人のことを見ても、特に拳を構えることはなかった。盗賊たちは自分たちが甘く見られていることに苛立ちを覚えた。女はそれを抑えることはできたが、男はそれを抑えることはできなかったようだ。男はその場から飛び出して、トールへと向かっていく。彼の持っている斧はトールが使うような戦斧ではない。木こりが使うような斧で、柄は木製であり、頭の部分も刃が欠けている部分がある。ただ、斬るというよりは叩き壊すための武器と言った方が納得できるような作りの武器だ。その貧相な斧は戦斧よりも軽い。そのため、二本持っていても走ることが出来るのだ。


 男は斧を振りかぶっていた。トールとの距離はまだ、斧の攻撃範囲にはいない。そして、男は腕を思いっきり振り下ろし、その途中で斧から手を離した。斧はかなりの速度で、トールへと向かっていく。トールはその斧を見つめているだけで回避する様子はない。そして、トールは斧が目の前に来ると、その柄を掴んでその勢いを利用して腕を回して、斧を投げ返す。まさか、返ってくると思っていなかった男は斧をギリギリで躱した。斧は彼の後ろに突き刺さる。彼は落ちた斧を拾いに移動する。それは相手に背を向けた形になる。トールは走り出し、跳んだ。空中で足を相手の方に向けて、斜めに落下していく。その蹴りは男の背中に当たる軌道を取っていた。


 しかし、蹴りを出した足は鞭によって絡めとられ、投げ飛ばされた。トールは空中で体勢を変えて、足から着地する。


「何やってんだい。馬鹿じゃないの」


「うっせぇ。仲間をやられたんだぞ。黙っていられるかってんだ!」


 女は再び馬鹿だねぇと呟いていたが、その目には愛おしさが含まれていた。仲間のためにすぐに怒り、馬鹿みたいに突っ込んでいく。それは彼女にはできないことだった。その愚直さに憧れて、一緒にいるようなものだ。


「あんた。協力してやるよ」


「ああ、二人でやってやろうぜっ」


 勢いのある大声で、二人は互いに鼓舞しあう。それを見てもトールは少しもどんな構えもしない。それどころか、長い溜息を、相手に聞こえるほどの声で、吐いた。相手の二人は自分たちの真の実力を甘く見ていると考えていた。二人のコンビネーションを知らないからそう言う態度でいられるのだ。二人は同じことを思っていた。


 盗賊二人は一斉にトールに向かっていく。女は男の後ろについて、短剣を投擲した。トールは簡単にそれを掴んで、返す。その速さは女の投げた短剣よりも速い。その短剣を受けるわけにはいかず、女はそれを回避した。短剣を拾わずに、鞭をしならせて、宙を叩く。男はそれに鼓舞されたかのように、荒い叫び声を上げながら、トールに飛び掛かった。斧を振りかぶり、トールに振り下ろす。トールはそれを簡単に紙一重で躱す。ローブが翻り、相手の視界が遮った。トールは回避の動作と連動するような動きで、相手の胴に蹴りを入れる。確実に当たったはずなのに、蹴りに手ごたえがない。


「いってぇなっ」


 蹴りを入れ、姿勢が不安定なトールの胴を狙って、斧が脇腹に迫る。飛んで回避るするのは不可能で、体を逸らしても直撃する軌道だ。彼は片足で少しだけ跳んで、体を地面に近づけるように体勢を変えた。そして、斧が胴のあった場所を通りすぎたところで、右肩のあたりが地面に着いた。左手で体を地面から浮かせて、その勢いを足へまで伝える。足が胴より上に来た。ちょうど彼の足がある高さに、盗賊の男の顔が来る。トールは上がった足を相手の顔面に向けて、下から上へ向けて、踵を当てるように動かす。男は靴が顔に掠ったが、大したダメージにはならない。トールは蹴りの勢いを利用して、相手から離れた。男も追撃はせず、女が隣に並ぶ。一度仕切り直しだ。


 トールは相手が思ったよりも実力があったと思ったが、全く負ける気はしていない。今度は女が鞭を鳴らして、いつの間にか回収していた短剣を再び、投げてきた。先ほどと同じように短剣を返すが、今度はその短剣が斧によって弾かれ、女の足元に短剣が落ちる。女が拾っている間に、また男が近づいてくる。今度はトールも相手に向かって走っていく。男を倒せば、中距離でしか戦えなさそうな女は簡単に片が付くだろうとトールは考えている。


 男は女にトールを寄せ付けないようにトールの行く手を阻む。相手は右手の斧を振り下ろす。トールはまたそれを避けるが、その先にも既に斧が向かってきているのが見えた。相手と距離を空けることで、斧の攻撃を避ける。地面を蹴り、相手との距離を再び詰めた。その勢いを使って、相手に正拳突きを出したが、斧で受け止められた。


(案外、斧の二刀流と言うのは厄介ですね)

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