表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺し召喚  作者: ビターグラス
草原にて
24/72

子供だし

 子供の振るったナイフが眼前に迫ってようやく、そのナイフが自分を切り付けようとしていることに気が付いた。だが、それが理解できたところで全く意味がない。回避しようと思える時間もないのだ。目を瞑るのが精一杯の抵抗だ。その瞬間、後ろに引っ張られた。


「うっ」


 デンファレがしりもちをついて、肺から押し出された空気が口から出た。デンファレはまだ目を瞑っている。


「不意打ちとは卑怯な子供ですね」


 トールはデンファレより先に、相手の殺意の気配に気が付いて、とっさに彼女の服の襟を後ろに引っ張ったのだ。そして、今彼は既にデンファレの前に立っていた。超能力で武器を取り出しているわけではないが、子供たちは彼と戦うこともできないだろう。二人は既に威圧された恐怖で動けない。逃げることすらできないのだ。


「と、トール。待って」


 デンファレがようやく事態に気が付いて、目を開けていた。目の前に立つトールが今にも子供たちを殺そうとしているような気がして、とっさに止めようと声を出してしまった。しかし、今、自分が傷付けられるところだったことを思い出す。


 トールはデンファレの言葉に取り合おうとしていない。耳には入っているが、それを戯言だと切り捨てている。今までのデンファレの行動から確実に二人を許そうとするだろう。それは甘いのだ。他人を殺そうとした時点でそこに年齢は関係ない。殺意を持った時点で、トールにとっては子供でも女でも老人でも関係ない。等しく、殺すべき相手になるのだ。


 トールはローブのクローバに触れる。右腕の鎧と剣が出現した。トールは剣先を二人に向けた。二人は手を握って、最期の時待っているかのようだった。トールはその様子が気に食わない。まるで、殺したら殺してくれると言ったような様子。死ぬために殺そうとしたというのが気に食わないのだ。トールは剣と鎧をクローバに戻す。そして、子供たちを何も言わないまま睨んでいた。


「どうして、殺さない? 俺たちは、その人を殺そうとしたんだ。殺されて当然だ」


「私たちはそれを受け入れます。殺してください。殺そうとした罪を償います」


 先に話した方が、男子。あとに話しているのが女子だった。男子の方はトールを睨んでいるが、女子の方は既に覚悟が決まっているかのような穏やかな顔をしている。どちらにしても、子供がするような表情ではなかった。


 デンファレがようやく立ち上がり、子供たちに再び近づいた。彼女はまた攻撃されることを警戒していない。二人がもう一度攻撃すると思っていないのだ。


 デンファレはそのままトールの前に立つ。トールを後ろに押して、子供たちと目線を合わせるためにしゃがむスペースを確保した。そのままかがんで目を合わせる。彼女は子供たちの目を見つめる。そこに光はなかった。とても子供にさせてはいけない瞳だ。


「二人とも。大丈夫? 怖いお兄さんは私が抑えてるから」


 子供たちはただでさえ大きい瞳をさらに大きくして、彼女の行動に驚いていた。傷つけようとした相手が目の前で笑顔で声をかけてきている。優しいとかそういう話で片付けられない。子供たちの目に涙が浮かぶ。声を上げることこそないが、二人の瞳から涙がとめどなく流れる。二人ともそれを拭って、デンファレの顔をよく見ようとしても、涙はいつまでも止まらない。


 デンファレはそんな様子の二人の頭にポンと手を置いて、優しく撫でた。それをきっかけに、子供たちは涙だけでなく、声を上げて泣いた。そして、デンファレが二人を抱きしめると、二人も彼女を抱きしめた。背中を撫でて、落ち着くまで待つ。


「お姉ちゃん。ごめんなさい」


 ようやく落ち着いた二人が最初に言った言葉は彼女への謝罪だった。デンファレは二人をぎゅっと抱きしめた。


「大丈夫。私はどこも痛くないもの。もう気にしなくていいのよ」


「うん。ありがとうお姉ちゃん」


「デンファレ。もういいか」


 彼女の後ろから怖い顔をしたトールがデンファレに声をかけた。彼女はまだ、二人を殺すと言い出すのかと思ったがそう言う雰囲気ではない。彼は既に、二人に殺意を向けていない。実際、トールはデンファレが許したのなら、それ以上何かしようとは思っていない。彼の既に二人のことはデンファレに任せているのだ。


「二人の声に、寄ってきたみたいですよ」


 四人がいる場所は家の中でも、国の中でもない。そこは平原だ。彼女たちを守る壁も塀もない。そんな場所で目立つような、子供の泣き声が響き渡れば、魔獣が寄ってくるのは、誰もが予想できたことだろう。ただ、デンファレはそれがわかっても後悔はしていない。助けたいと思ったのだから、どうしようもないのだ。


(あとはこの子たちを守るだけよ)


「二人とも私たちから離れないで。できれば、怖いお兄さんの近くにいた方が守ってもらえると思うけど」


 二人にそう言ってみるが、同じタイミングで首を振った。


「そうよね。私が守らないと」


 二人を守ることを決意して、剣を抜いた。トールも右腕の鎧と剣を出現させ、姿は見えないが、近づいてくる気配に備える。


 地面が揺れる音が聞こえる。自分たちの二倍以上の大きさを持つ大型の魔獣の影が四人の瞳に映る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ