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神殺し召喚  作者: ビターグラス
侵入した魔獣
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頑張り

 デンファレの爆発魔法によって、ほとんどのバッドビッグが倒れた。だが、その爆発から逃れたのが三匹。女神と言えど、既に信仰の力がほとんどなく、状態は人間に近い。そんな彼女が影響の強い魔法を使ったのだ。次に何かをする体力や魔気はその体を維持する程度のものしか残っていない。魔獣ももろに爆発を受けなかっただけで、爆発のダメージ自体は受けていた。そのため、魔獣の体はボロボロだ。そんな状態でも噛み付くことはできる。


 デンファレは膝を付いて、息を切らせていた。魔法は使えない。剣を振るう体力も残っていない。それでも、彼女は剣のグリップ部分に手を掛けて、剣をゆっくりと抜こうとしていた。魔獣の動きも鈍く、剣を抜く時間はまだある。


(剣を抜いても振るえないかもしれない。それでも、やるのよ)


 剣を抜き終わり、構えようとしても、その剣先は地面にぶつかっている。彼女はその剣を振るうときに持ち上げて、あとは重力に任せて振り下ろそうと考えている。弱っている魔獣ならそれでも倒せるかもしれない。彼女は生きるために、守るために全力で抵抗する。


 魔獣が彼女の近くまで来た。彼女は剣を持ち上げようと力を入れる。剣がゆっくりと持ち上がる。魔獣がその剣のリーチに入り、彼女は剣を持ち上げる力を抜いて、剣を振り下ろした。剣は見事魔獣に当たり、魔獣は何歩か歩いた後、その場に倒れた。


(残り、二匹。あと二回今のをやるだけ)


 視界の一部が滲み、景色が二重に見える瞬間ができた。また魔獣が近づいてくる。手に力を入れるも、先ほどより剣が重く感じられた。剣に苦戦している間にも、魔獣はゆっくりと近づいてきていた。


(ま、まずい、かもしれない。手に、力が)


 彼女が苦戦している間に、魔獣が何かに吹き飛ばされた。滲んだ視界の中、魔獣を吹き飛ばした人影がやけにくっきりと見えた。小さい体でも、しっかりとその場に立っている。ロトは拳を最後の魔獣に向けていた。彼は走り出し、最後の魔獣に拳を叩き込んだ。衝撃を感じ、最後の魔獣が吹っ飛んでいくのが見えた。


 そうしてついに、二人はカロタンとキャルを守り切ったのだった。




「デンファレ。今日は中々、頑張ったのではないですか」


 戦闘が終わった後、トールが四人と合流した。その時、トールはまさか、全ての魔獣が倒れているとは思わず、驚いていた。カウホンを倒した後、もう一仕事待っていると思っていたのだが、そんな仕事は残っていなかったのだ。


「そうでしょ。ロトと二人で何とか勝てたんだけど」


「そうですか。しかし、カロタンとキャル、そして、ロトも守ったのですから少しは見直してみてもいいかもしれなませんね」


 トールが冗談のように、そう言った。デンファレもその言葉を本気にはしていない。依然として、トールには好かれていないだろうと思っている。トールも同様にデンファレに好かれているとは思っていない。それでも、デンファレは褒められて悪い気はしなかった。


「私、少しは強くなったでしょ。……まぁ、油断はできないけどね」


 トールはその言葉に返事をしなかった。また調子に乗ったのかと思ったが、彼女は彼女なりに自身の実力を理解しているのだ。それだけで彼女の成長だろう。始めは自身だけで実力もなかったのだから。


「その、トールは大丈夫なの? 怪我とか、そういうの」


「ええ、大丈夫です。大したことは傷はありませんよ」


「そう。それはよかった。一人で旅はできないものね」


 デンファレの言葉には嘘はない。彼を頼らないと、勧めない場所や解決しない問題も多く出てくるだろう。デンファレはできるだけ自分で解決したいと思っているが、いつも自分でできるわけではない。トールに頼らないとまだ、一人でなんでもできるというわけではないのだ。


 トールは自身の力が必要だというのは理解できているので、彼女がそう言うのを聞き流す。


 その後、二人はカロタンの家に招待されて、この前と同じようにカロタンの作った夕食を食べることになった。存分に戦った後に、美味しいご飯を食べるとよりおいしくなるというのは本当だと、二人は身をもって経験した。


 そして、カロタンの家で食後に少し休憩した後、二人は宿へと戻る。特に言葉を交わすことなく、それぞれの部屋に入った。


 デンファレは部屋に入ってすぐにベッドで眠りについた。体もボロボロだったが、何よりトールに頼らずにカロタン、キャル、ロトを守らなければいけないというプレッシャーに、自分の死がすぐそこにあるという状況。それが精神的に負荷だった。それから解放されたために、疲れがどっと出てきていた。さらに、部屋に戻ってきたことで、疲れを我慢できなくなったのだ。


 トールは窓の外を見る。魔獣が襲ってきた爪痕が痛々しく残っている。被害が無いというわけではない。あの魔獣に咬まれた人はいるだろうし、死者も出ているだろう。街を見れば、泣いている人がいるのだから、そういったことはあると考えられた。


(頑張っても、頑張っても、全部は守れない、か)


 彼は窓から離れて、ベッドに寝転がり、目を瞑った。


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